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太陽と星  作者: そーゆ
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秩序と予言

アメリカ連邦共和国の政府は、騎士団国の脅威が現実味を帯びる中、抜本的な対策に乗り出した。2025年5月、連邦議会は冷戦期にレジスタンス弾圧に用いられた「連邦秩序法」を全会一致で復活させた。この法律は、憲兵に広範な捜査権と逮捕権を与え、スパイや反政府活動家の取り締まりを強化するものだった。シアトルの街には制服姿の憲兵が溢れ、夜間外出禁止令が敷かれた。スパイ摘発が加速する一方、私怨による密告や冤罪も増え、市民の間に不信感が広がり始めた。


桜ヶ丘学園でも、緊張感が高まっていた。給食センターの調査で、毒物混入の証拠が見つかり、関係者数名が憲兵に連行された。生徒たちは「次はお前が密告されるかも」と囁き合い、互いを疑う空気が漂った。そんな中、学園の美人として知られ、悠斗の幼馴染である中村朱莉が動き出した。朱莉は歴史と政治に詳しく、騎士団国の動向を独自に分析していた。彼女は長い黒髪をかき上げ、図書室で悠斗に切り出した。


「悠斗、ちょっと聞いて。騎士団国、近いうちに『聖戦』を起こすよ」

「聖戦?」悠斗は目を丸くした。

「そう。彼らのプロパガンダ読んでみたんだけど、ここ数年『聖なるアメリカの浄化』とか『劣等人種の殲滅』って言葉が頻出してる。連邦政府がつかんだ『オペレーション・ヴァルハラ』ってのも、そのための準備だと思う。連邦や周辺国との全面戦争を仕掛けるつもりじゃないかな」


悠斗は息を呑んだ。朱莉は幼い頃から聡明で、彼女の勘はよく当たった。彼女が悠斗を見つめる瞳には、ただの友情以上の何かがあったが、今はそれどころではなかった。「それって……連邦も危ないってこと?」

「うん。日本帝国連邦の支援があっても、騎士団国が本気になれば、内乱から始まるかもしれない。スパイがこんなに跋扈してる時点で、ヤバいよ」朱莉の声は冷静だったが、どこか切迫していた。


その夜、悠斗は寮の窓からシアトルの街を見下ろした。憲兵のサイレンが遠くで鳴り響き、街灯の光が不気味に揺れていた。「連邦が危機に迫ってる……ヘルガや茉由、みんなを守れるのか?」彼は拳を握り潰し、自分の無力感に苛まれた。朱莉の予言が頭から離れず、騎士団国の「聖戦」が現実になれば、学園も、布哇のヘルガも、誰も逃れられないかもしれないと悟った。


一方、街では憲兵が私邸を急襲し、「スパイ()()」で無実の市民が連行される事件が続発。秩序法の復活は、スパイを抑えるどころか、新たな混乱を生んでいた。悠斗の心に決意が芽生え始めた。「俺にできることを探さないと……」

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