表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
太陽と星  作者: そーゆ
4/10

ヴァルハラの号令

ロッキー山脈の東に広がるアメリカ騎士団国は、冷たい風が吹き荒れる荒涼とした大地にそびえていた。首都「ニューアーリア(オーランド)」の政府庁舎では、ハーケンクロイツの旗がはためき、鉄の意志を持つ指導者たちが集結していた。2025年春、騎士団国の最高指導者ルートヴィヒ・クロイツは、演壇に立ち、冷酷な声で宣言した。「北米は我々の聖なる疆土だ。北のアメリカ帝国(僭称者ども)も西のテキサス人民国(コミーの手先)も、いずれ膝を屈する。統一は我々の運命だ!」


この日、騎士団政府は周辺国への圧力を強める新戦略を打ち出した。北部のアメリカ帝国には経済制裁と国境での軍事挑発を、南部のテキサス人民国にはスパイ工作とプロパガンダを展開。だが、クロイツの眼差しはさらに遠く、西海岸の「アメリカ連邦共和国」へと向けられていた。「西に逃げた劣等人種と売国奴どもが、我々の神聖な血を汚している。ユダヤ人、黒人、そして対日協力者……彼らに裁きを下す時が来た!」と彼は叫び、聴衆の将校たちが拳を振り上げて応えた。


庁舎の地下では、秘密会議が開かれていた。騎士団情報部長、ハインリヒ・ヴォルフが地図を広げ、作戦を説明した。「我々は『オペレーション・ヴァルハラ』を始動する。目的は連邦に潜伏する亡命者と協力者の摘発、そして殲滅だ。既にシアトル近郊でスパイを数名拘束されたが、我々のネットワークはまだ生きている。布哇や太平洋の諸島、オーストララシアやその他親日国に逃げた国際ユダヤ(劣等人種)共もターゲットだ」


将校の一人が尋ねた。「連邦は日本帝国連邦の傀儡だ。介入すれば戦争になるのでは?」ヴォルフは薄笑いを浮かべた。「だからこそ、秘密裏に進める。工作員を潜入させ、内部から崩す。日本が気づいた時には手遅れだ」


地図には、赤い線が連邦から日本、シベリア、広東、浦塩、インドネシア、オーストララシアといった地までタコの足のように伸びていた。騎士団は、西海岸に逃げたユダヤ人の大半の足取りを突き止め、追跡を開始していた。ヴォルフは続けた。「我々の新兵器、ドローン群『ワルキューレ』を投入する。連邦の防空網を掻い潜り、ピンポイントで標的を仕留める。これが聖なる神(オーディン)と、我が帝国の為に命を落とした彼らの住まうヴァルハラへの(供物)となる」


会議が終わり、将校たちが庁舎を去ると、クロイツは窓から荒野を見下ろした。「神聖な北米を取り戻す。我々の血は純粋であり続ける」とつぶやき、その瞳には狂気じみた光が宿っていた。


一方、遠く布哇県では、ヘルガが新しい生活を始めていた。穏やかな海と椰子の木に囲まれた島で、彼女は少しずつ笑顔を取り戻しつつあった。しかし、彼女の知らないところで、「オペレーション・ヴァルハラ」の影が忍び寄っていた。シアトルの悠斗と茉由もまた、不穏な空気を感じ始めていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ