終着
2026年春、アメリカ連邦共和国のシアトルに平和が戻りつつあった。核戦争の傷跡は深く、難民問題や治安の不安は残るものの、戦争の恐怖は遠のき、街には再び桜が咲き始めた。布哇県で難民支援に奔走していたヘルガ・シュタインが、ついにシアトルに戻ってきた。桜ヶ丘学園の校門で、佐藤悠斗、藤田茉由、中村朱莉が彼女を待っていた。
「ヘルガ!」悠斗が手を振ると、ヘルガは金髪をなびかせて駆け寄り、四人は抱き合った。「やっと会えた……布哇でずっと心配してたんだから」と茉由が涙ぐみ、朱莉が「無事でよかった」と微笑んだ。ヘルガは「私もみんなに会いたかった。シアトルがこんなに穏やかになってるなんて信じられない」と目を輝かせた。
四人は学園の寮に戻り、かつての日常を取り戻し始めた。戦争中の戒厳令や配給制は過去のものとなり、学食には再び温かい味噌汁が並んだ。ヘルガは生活に慣れ、茉由と笑いながら掃除当番をこなした。ある日、茉由が「スープ、ゲロまずじゃない!」と冗談を飛ばすと、悠斗が「またそれか」と突っ込み、部屋は笑いに包まれた。つらくも楽しかったあの頃の軽口が戻ってきた。
学園にも自由が戻りつつあった。生徒たちは戦争の恐怖から解放され、クラブ活動や学園祭の準備に熱中。ヘルガは美術部に加入し、布哇での経験を絵に描いた。彼女の作品は難民の苦しみと希望を映し出し、学園中で話題になった。悠斗はサッカー部で汗を流し、朱莉は歴史研究部で戦争の記録をまとめ、茉由は演劇部で明るい役を演じた。四人はそれぞれに、大胆で前向きな自分を取り戻していった。
ある夕暮れ、校庭の桜の下で四人が集まった。「戦争がなかったら、こんな風に会えなかったかもしれないね」とヘルガが言うと、悠斗がうなずいた。「でも、こうやって一緒にいられるなら、あの辛さも悪くなかったのかも」茉由が「まあ、ノロは二度とごめんだけどね!」と笑い、朱莉が「次は平和を守る側に回ろうね」と静かに付け加えた。
夜風が桜の花びらを散らし、四人は未来を見据えた。戦争は終わり、傷は癒えつつある。彼らの友情は、試練を乗り越えた証だった。学園に響く笑い声は、新たな一歩への希望そのものだった。