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野菜オタクの苺ちゃんは手に負えない~お好きなお野菜はなんですか?~  作者: 山吹祥


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第34話 私はイチゴが食べたい(7)

「ん~~っおいし!」


 糖度の高い先っちょまで食べ終えたところで、真ん丸お目めをこれでもかと見開いた菜花ちゃんが私の両肩を掴む。


「いっちゃんっっ!!? 駄目っ、吐いて! 今すぐぺってして!?」


「そんな勿体ない――」

「じゃないと死んじゃうんだよッッ!?」


「大袈裟だよぉ、食べても寝ちゃうくらいだよぉ?」


「永眠するだなんて言わないでッッ!!」


 菜花ちゃんの方が大袈裟じゃないかな。


「そんなに激しく肩を揺らされたら酔っちゃうよぉ?」


「こうなったら――直接キスするしかない!?!」


 ふふふふ――。

 それを言うなら人工呼吸じゃないかな。


「なのかちゃん、落ち着いて?」


「あ、え??? な、に……これ???」


「なにって、ぎゅうぅぅ! だよぉ?」


「んっ~~……なんで、どうして急に!??」


「なのかちゃんが言ったんだよぉ?」


「何を!?」


「ケンカしたらぁ? いち日最低いちハグしよって?」


「ちょっと違う!? 私が言ったのはケンカしたら――」


「あとは……なんだっけ?」


 もっとたくさんあった気がするけど、ぽわぽわと気持ちよくてうまく思い出せない。


「え、あと!? えっと、ベッドは一つを共同で使用とか、毎日髪をセットするとか、ケンカしたらキ――」


「んふふふ~、わたし一晩中? ぎゅってして寝相わるいんだけどいっかなぁ?」


「全然いい!! むしろいいっっ!!」


「ほんとに、なのかちゃんはわたしのこと大好きだなぁ」


 けどそれなのに――


「っ!? やっと分かってくれたの!?」


「でも、なのかちゃん……イチゴと菜の花のサラダ嫌いっていって、わたし達のこと否定するよね」


「それは、だって……美味しくないから」


「ほら! それなのに、わたしに内緒でしろなちゃんとイチャイチャするっ!」


「え、は? 私と冬葉が? してないよ?」


「してるもんっ!! むぅ~~!!」


「ん、きゅんっ――。はぁ、はぁっ……ちなみにいっちゃんは、どうしてそう思ったの?」


 まどろみの中、指を一つひとつ折りながら刺さっていた不満を抜いていく。


「なのかちゃん、しろなちゃんに髪やってもらってるでしょ?」


「髪? それはいっちゃんとお揃いにしてもらうからで――」


「わたしとオソロの香りだって……しろなちゃんと勝手に一緒にしたもん……」


「そ、それは! ……恋の相談とかで、協力しあおうって結託したからで」


「やっ! わたしとだけにしてっ! わかった? なのか?」


「んっ、きゅんっっ――――そんな、かわいく首を斜め(・・・・)にして呼び捨てとか……もう、むり。かわいすぎて、死ねる――――」


「なのかちゃん? ゆかで寝たりしたらかぜひいちゃうよ?」


 何度揺すっても起きない菜花ちゃんに、せめて膝枕をしてあげようと思ったが、



 ぴょこぴょこ跳ねる髪の毛が視界の端に映りこんだ。


「そこに居るのは、こがねちゃんだぁ!」


「うへぇっ!? 覗くつもりはなかったんだけど、死ぬとか物騒な声が聞こえてきて~……ごめん! 部屋で待ってるから、あーちゃんたちはどうぞ続けて――」


「……こがねちゃんはわたしのこと嫌いだからいっちゃうの?」


「な、なーんて? なはははは、あたしもお話に混ざろっかなぁ~……なに話そ?」


 引き留めるのに掴んだ小指の先。

 蜀黍ちゃんはその手をギュッと繋ぎ直してくれる。


「えへへへぇ、えっとね! こがねちゃんは、なんのおやさいが好き?」

「え~、やっぱりトウモロコシかな?」


「んふふふ、わたしもね、好き!」

「知ってるよ~……ところで――」


「こがねちゃんの弾けるえがおって、ほんっとーにおいしそうだよね?」

「んえっ!? ありがとーう……あたしの髪、また跳ねてる?」


「はねてないよぉ?」

「んじゃ、どうしてその……撫でてるの?」


 蜀黍ちゃんは髪に触れると耳が赤くなる。

 それがとってもおいかわなのだ。


「んふふ~、トウモロコシってね収穫した後がいちばん美味しいんだよぉ?」


「お野菜だもんね……って、あああああーちゃん!?」


「そのタイミングはねぇ、おひげが赤茶に染まったときなんだよぉ」


「耳ッ!? お耳くすぐったいんだけどッ!??」


 そう、今の色具合がベストだ――


(――かぷっ)


「ふあぁぁぁぁぁ~~~~っっ…………――――」


「ふふ、あかく染まったこがねちゃんを収穫しちゃたぁ」


 あれ、でも収穫するより先に食べちゃったような……?

 ちゃんと話せていると思うけど、段々と意識に齟齬が生じてきちゃったかな?



「――苺さん」


「あ~っ! このかちゃんだぁ!」


「えっと、この惨状は一体……? 春乃さんと蜀黍さんの身に何が起きたのでしょうか」


「んー、みんなおねむみたい?」


「……私の目には、おねむな人は苺さんだけに映って見えますけど?」


 そうなの、そろそろ起きているのも辛いくらいなの。


「このかちゃんもネンネする?」


「しません。私は枕がないと眠れないですし、今はパーティの途中ですから」


「ねぇねぇ、このかちゃん! ひざ枕してほしいなぁ?」


 前に約束したきりだったからね。


「そんなことより、二人を起こして差し上げた方がよい気が――」


「そんなこと…………わたし、わがまま言ったりしてごめんね」


「い、いちごさん!?」


「もう言ったりしないから、わたしのこと嫌いにならないで……?」


「つっ……嫌いになどなりません!!」


「ほんとうに? このかちゃんは、いっちゃんのこと好き?」


「ええ、好きです。ですから――ささ、どうぞ私のお膝でよろしければ」


 蜀黍ちゃんのそばに腰を着けた木之香ちゃんが、ポンポンとお膝を叩き誘ってくれる。


「えへへ~」


 すかさず横になり、それから甘えるように木之香ちゃんの手を取ると、木之香ちゃんは俯き笑みを落とし、空いているもう片方の手で頭を撫でてくれる。


「ふふ、苺さんたら――」


 お膝もふんわりと柔らかく、けれど程よい弾力もあって幸せな気分だ。


「ん……このかちゃんは、なんのおやさいが好き?」


「苺さんのおかげで、ブナピーちゃんが好きになりましたよ」


「んふふ~、キノコってね、何にでもあわせやすいおやさいなんだよぉ」


 このまま天使の枕に身を任せたいけど、私はむくりと起き上がる。


「? もうよろしいのですか?」


 扉の影から白銀髪が見え隠れしているのに気づいてしまったのだ。


「ふわふわしてお姫様みたいな、このかちゃんにピッタリだよねっ」


「え、え? え?? 苺さん!? 私たちはキスをするような間柄ではないかと――」


「膝枕してくれたお礼だよ?」


 木之香ちゃんの頬へ顔を寄せて――


(かぷっ)


「~~!?!」


「このかちゃんっ! だ~いすきっ!!」


「な、ナニコノ……カワイイいきも、の…………――――」


 あれ、お礼ならチューだよね?

 おっとりと優しい目をギュッと瞑らせた木之香ちゃんがおいかわで、間違えちゃった。



「苺!! シ…………シロナでさえ、木之香にキキキキ、キスしたことないのに!!?」


「しろなちゃんもチューすりゅ?」


「するわけないでしょう!!」


「それじゃぁ、しろなちゃんはなんにょ――」


「ちなみにシロナが好きな野菜は今日食べた全ての野菜よ!!」


「んふふ~」


 どれもパクパク食べてくれていたもんね、私嬉しくなっちゃったもん。


「てか苺、あんたどうしたのよ? なんで幼児化しての!?」


「しろなちゃんわぁ、ピュアでキレイだよねっ」


「ちょ、苺! 今のあんたかわいくて怖いから引っ付かないで!!」


「白くてすべすべでぇ……ものすごくすべすべしてりゅ?」


 私の手とは大違いだ。

 太モモも首も顔も、全身どこもかしこも白くてつるつるしている。


「んっ……だからっ! そういうのは、ちゃんと許可取ってから触りなさい!!」


 淡い碧色みどりの瞳もすごく美味しそう。


「いっちゃんね? 煮てクタクタになったハクサイも好きなにょ?」


「だから何!? でも気になるからそれはまた今度食べさせなさいっ!!」


「だからいっちょにおフロはいろ?」


「んっ……だからっ――あぁ~~!! 邪険にもできない、なにこの厄介で面倒な苺!? 存在がすでに冗談でしょう!??」


「……ごめんなちゃい」


「もう、その寂しい目は反則だから禁止って言ったでしょ……あ、あ、あ、ごめん! 謝るから、その目でシロナを見ないでっ!!」


「ケンカしたあとはチュなんだよ?」


 さっき菜花ちゃんから教わってよかった。


「っ……し、仕方ないわね。でも、シロナの方から……ちょ、シロナがする! シロナから苺にするから、シロナに近付かない、で――――」


(かぷっ)


「ひゃんっ、シロナは首が弱い……ん、あ。そんなに強く吸われたら、あ、痕が、んっ――――」


「ごちそうちゃまでちたっ」


 ほのかに香る甘い匂いがとっても美味しかったなぁ……


「……ん」


 イチゴを食べた影響に加えてお腹いっぱいにお野菜を食べたから、もう限界だ。

 キッチンで寝たりしたら采萌ともえさんに怒られるだろうけど、みんなが一緒なら別にいいかな?


『萌ちゃん、お姉ちゃん寝た?』

『横になったところだよ、笑住えすむ

『あとでベッドに運んであげてもらってもいい?』

『ああ、笑住の頼みならなんだってするよ』

『ありがとう、萌ちゃん』


 聞こえる筈のない愛しい笑住の声が聞こえたということは、

 頑張って起きているつもりだったけど実は寝てしまっていたのかな。


(ふふふ、幸せな夢だなぁ)


 色取り取りのおいかわ野菜に囲まれて、子守歌代わりに笑住の声が聞けて――――。



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