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野菜オタクの苺ちゃんは手に負えない~お好きなお野菜はなんですか?~  作者: 山吹祥


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第23話 私はキノコ料理を考えたい(4)

 放課後。

 私は愛想よく「お会計1,088円となります」と金額を告げる。

 夕方の時間よく買物にいらっしゃる、エプロンを着けた二十代前半くらいに見える男性のお客様が「領収証」とぶっきら棒に放ち、1,100円をブルー色のカルトンに乗せた。


 私はお金を預かり、釣銭12円と共に領収証をお渡しする。


 普段なら購入した商品をサッカー台で袋に詰め、すぐさま退店するお客様だけど今日はある一点を見つめ立ち止まっている。


 男性客は「ハンバーグ一択だろ」と呟き、シールを貼らず去って行った。


(うんうん。後で代わりにハンバーグに貼らせてもらいますね)


 私はそう頷いて、レジに向かってベビーカーを押すお客様へ「いらっしゃいませ」と駆け寄り、仕事を再開させた。


 閉店時間となる十八時半。

 最後のお客様を見送り、シャッターを下ろす。

 それから三十分かけて片付け清掃を済ませ、事務仕事をする采萌さんを待つ間、掲示していた模造紙へ近寄り、ハンバーグと書かれた個所にシールを貼る。


「みんなハンバーグ好きなんだなぁ……」


 アルバイト前に急造した『夜ご飯に食べるなら!?』と書いたアンケート。

 お昼休みに三人から話を聞いて参考に作らせてもらったアンケート。


 菜花ちゃんが言った『キノコのから揚げ』。

 木之香ちゃんが言った『キノコハンバーグ』。

 白菜ちゃんが言った『キノコグラタン』。


 どれも魅力的で美味しいから、もっと均等に接戦するかと私は予想していた。

 けど、蓋を開けてみた結果はハンバーグの圧勝に終わった。


「おーし、帰るぞー」


 事務仕事そして帰り支度を終えた采萌さんが、離れた位置から私へ呼び掛ける。

 私は慌てて模造紙を回収し采萌さんの元へ駆け寄り、裏口から退店する。


「もっと接戦すると予想したんだけどなぁ」

「あの三択なら当然だろー」


 ということは、采萌さんもハンバーグ派ってことか。


「ま、今が冬だったらグラタンも接戦したかもだけどなー」


 確かに。暑い夏にグラタンを選ぶ人は、よっぽどグラタンが好きなのだろう。采萌さんは「むしろシール張るやつがいた方が驚きだなー」とおかしそうに口角を上げた。


「から揚げはなんでダメだったのかな?」

「あまり身近な食べ方じゃないからなー」


 つまり想像しにくいことも敗因の一つかもしれない。絵や写真を付けたり、試食があれば違った結果になったかもしれないな。


「ちなみに采萌さんは夕飯に何が食べたい?」

「パスタもありだなー」


 まさかの選択外だけど、今の時間でも気温が下がらないから気持ちは分かる。


「暑いと麺が食べたくなるよね」

「疲れたからハンバーグでもいいけどなー」

「じゃあ、今日は両方にしよっか」

「いや、腹も減ったしパスタだけでいいぞー」


 パスタの方がちゃちゃっと作れるのは確かだ。

 でも、茹で時間を利用すれば何十分も待たせたりすることはないと思うけど、とか考えている間に「ただいま」と、徒歩一分少々の帰宅の途に終わりを迎えてしまう。


「聞いてなかったけど采萌さんは何にシール貼ったの?」


 靴を脱ぎ、スリッパに履き替えた采萌さんは「ハンバーグ」と短く答えた。

 この反応……采萌さん、もしかして夕飯はハンバーグの気分になってない?


「やっぱり両方作るよ」


 一瞬だけ足を止めた采萌さんを見て私は「十中八区ハンバーグだ!」と内心叫ぶ。


「苺も疲れただろ? どっちかだけでいいぞー?」

「大して手間じゃないよ。それに私も食べたいし、ハンバーグは多めに作ってお弁当に入れてもいいかなって」


 返答に珍しく逡巡させていたけど「実は食べたかったんだよなー」と、采萌さんが白状する。


「別に気なんて使わないでいいのに」

「いや、あれだ……今朝のことがあっただろー」


 つまり私を散々からかった手前、言い出しにくかったのか。


(……言ったら怒られるかな?)


 きっと怒られるよね。分かっている。でも言いたい!!


「毒キノコは入れないから安心してね!」


 私へ振り返った采萌さんは、

 笑い茸を食べたのかってくらい満面の笑みだった。


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