284回用蘊蓄
蘊蓄回です。
《284回本文 1》
「結局、無罪んなった地主は、あんたんとこ入れて三軒だけだったわ」
《本文ここまで》
ここではS.S.PのPfleghafte (mhd. phlegehaft )と言う自由人の階級を、日常会話なので『地主』と呼んでいる。他の文脈で『本百姓』とも書いた。原語は地租負担者とでも訳せようが、結構な広さの土地を世襲的に所有して小作人に貸し地代を徴収したり、隷属的な使用人(作中では『作男』などと表記)を使役して耕作させたりしていた階級である。(結構な広さ:およそ東京ドーム 4倍以上、代々木公園以下。cf.騎士領は代々木公園以上、東京都中央区の半分以下)
自由人階級3つのうちの2番目に当たるが、こうした法的な階級の分類自体『複雑な現実を松竹梅で分類してみた』的な単純化された理想型である可能性が高い。
法的身分(盾序列)のうち国王と司教級を除く上級身分(封建序列3/4/5位)『諸侯Vorsten/自由領主Vrie herrin/騎士(参審自由人Schepphinbare Luite)』をみると、諸侯と騎士には明瞭に『一代ごとに選抜されるもので世襲身分でなかった』時代が嘗て有ったことが窺える。それぞれ世襲的な『自由領主』と『自由人』から析出された階級であると思われる。
つまり『諸侯』の公爵は嘗て部族長であった殿様たちのリーダー大族長の後裔が第一のひと=フリストを名乗った者であり、騎士は部族民の中で通過儀礼をパスした部族戦士の末裔なのである。
(注:ヘルツォクがヘルをツォクした者というのは語呂合わせであり、学問的には軍Heerをzogした者(führer)でDux羅の直訳である。ヒトラーがムソリーニを模倣したのは、まさに『歴史は繰り返す』)
これに対し、『自由人Vrie lute』の松竹梅である『参審自由人/Phlegehaft/Lantsesin』のうち、Lantsesinは土地を持たない自由人なので、封建序列に含まれない。彼らは自由人として受け容れられた外来の人々と説明されており、必然的に小作人である。つまり、ざっくり言えば『エリート部族民(戦士)/一般人/受容されたよそ者』の構成となり、封建身分七階梯の残り6/7位と上手く対応しない。正確に言うと、騎士階級(参審自由人)に対応する5位の下の裾野が不明確である。
騎士と地主の間には『領地を賜って忠誠を誓う』ような関係が成立していないので、ここは騎士と地主の間に未定義のグラデーションがあると考えておきたい。例えば領主の私兵のうち勲功で土地を賜った者や、自力で墾田私財化許可の代償に徴兵義務を負った者など。
《284回本文 2》
「そうかな。若い下女に主人のお手が付いてるくらい普通じゃないですかぁ」
《本文ここまで》
ケント王国エセルベルト王の法典
「王のメイドとえっちしたら50シリングの賠償金」
1 0 . Gif man wið cyninges mægdenman geligeþ , L scillinga gebete .
「自由人の妻とえっちしたら彼女の人命金(50シリング)を賠償し以下略」
3 1 . Gif friman wið fries mannes wif geligeþ , his wergelde abicge,...
王に限らず、メイドの主人は彼女の貞操について独占権を持っていた。それも妻なみの。
これで手を出さないのは、心が肉親的パパ化した主人である。
《284回本文 3》
強盗より泥棒の方が不名誉で、同じ泥棒でも夜中に『こそこそ』盗むのと、白昼堂々盗むのとでは『こそこそ』の方がより罪が重いのだ。
《本文ここまで》
重い、軽いと言っても斬首になって遺体埋葬可か、絞首刑になって埋葬不可かの差。
本人にとって差はない。もう死んでるから。
《284回本文 4》
「金貨五百枚と大銀貨六千枚にするんですね」
《本文ここまで》
金貨1枚=大銀貨12枚の比率で交換すると
金貨1枚3.5g、大銀貨1枚1.2gとすると総重量8.75kg、体積で約3.7倍になる。
2Lボトル4本半の荷物である。
こんな財布を持っている男を襲う強盗は仕事が楽そうだ。
持って逃げるのは楽でないが。




