282回用蘊蓄
蘊蓄というより解説回です。
《282回本文 1》
『東方修道騎士団』は人呼んでの名。
武装修道会『剣の兄弟』団という。
《本文ここまで》
東方植民に深く関わった修道騎士団といえばドイツ騎士団The Teutonic Orderだが、ここではリヴォニア騎士団の 『剣の兄弟』Swertbrudereをモデルにした。
リガ初代司教アペルデルンのアルベルトによって設立され、定番の『清貧・貞潔・服従』のほか『異教徒との戦い』を戒律とした。バルト三国のエストニア及びラトビア地域に宗教国家を建てたが、ノブゴロド(ロシア、ペテルブルグ南150kmほど)侵攻に失敗して以降衰え、ドイツ騎士団に吸収されてそのリヴォニア分団となった。
ちなみにドイツ騎士団の総長はホッホ・マイスター、リヴォニア騎士団総長はスーペリア・マイスター。その他多くの騎士団ではグロス・マイスター(グランドマスター、羅マグヌス・マギステル)と呼ばれる。
《282回本文 2》
嘗て外地では『聖堂防衛に集いし清貧の騎士』団オルドと良きライバルの関係であったが、お互い遠方に復員したため今は交流が無い。
《本文ここまで》
これまで作中では南岳の御堂騎士団として登場している。実在の『キリストとソロモン神殿の貧しき戦友たち』(Templar) を真似た正式名称とした。
《282回本文 3》
両親が病に倒れて世を去ったのは成人した翌月だった。なのに分家のはずだった叔父が乗り込んで来て、家の財産を勝手に仕切り始めた。かなり苦労して理不尽を跳ね除けたが、親類は目上に逆らう者とは縁を切ると言って来た。
《本文ここまで》
成人前ならば剣親swertmac(=父方の最近親年長者)が孤児の後見人になる。成人後であれば不当な権利侵害。
《282回本文 4》
「あのお嬢さんって名家の娘で、悪党パックが財産横取りしようとアロガン村長を継父に押し込んでたらしいじゃないか」
《本文ここまで》
既出のエピソード。
家父長権の不当行使で自分の腰巾着との再婚を強要し、妻所有資産に対する夫(=法定後見人)の権利を濫用させた事件。
《282回本文 5》
「子供が無いまま奥様が出て行った話、じき隣村にも知れるわ」
「叔母の嫁入り先に知れたら、あいつが来るな・・」
《本文ここまで》
婚姻を継続したまま妻が出奔したため、確実に相続人不存在となると見て、被相続人生存中にも関わらず近親者が暴挙に及ぶことを懸念している。
『寝たきり男』には、隣村に嫁いだ叔母1と、嫁がずに婚外子を出産した叔母2(故人)がいるので、『寝たきり男』が子の無いまま死亡すれば叔母1が法定相続人であり、叔母2の子である『泥棒猫の女』に相続権は無い。
『寝たきり男』は『泥棒猫の女』と内縁関係にあり、なおかつ彼女は彼の弟を出産している。
妻が出奔するのも無理はない。
《282回本文 6》
「貴方に子供が無いならば、弟に継がせりゃ良いだけよ。あたしの息子なんだもの貴方を大切にするわ」
《本文ここまで》
非嫡出の弟を相続人にする計画を提案しているが、いくつかの困難がある。
婚姻が有効であれば子は父の身分を承継するが、姪との近親婚が教会の特認でなく領主の承認で認められるか否かが一番のネック。
『寝たきり』男は婚姻を継続したまま妻が特に不貞行為もなく(今後するつもりだが)出奔しているため、再婚が困難である。
《282回本文 7》
「ガリーナさぁ! あんた此れから遺産がっぽり入るんだから、いっそ村もう一つ作っちゃわない? あたし、お父さまに強請ねだって男爵領内で荘園開発の特任状とか貰ってくるから、ゴドウィンソン家を復興しちゃおうよ」
《本文ここまで》
ガリーナが騎士家(参審自由人)として相続した領地以外にも、現在利用されていない男爵領の土地に資金投入して、植民請負人として永代借地権を入手する策。底地権が男爵家のまま、運用者として実質的な騎士家の領地拡大を企図するもの。
領主側のヒルダと開発者のガリーナにWinWinな企画である。




