279回用蘊蓄
蘊蓄回です。
《279回本文 1》
まだ正式に授封更新が済んでいないので、男爵領内の騎士は誰も未だツァーデク伯に忠誠宣誓していない。
《本文ここまで》
封建制には7階層がある。
封建序列(盾序列)1:国王
封建序列2:精神的諸侯:大司教、司教
封建序列3:世俗的諸侯:公爵、侯爵、辺境伯、一部の伯爵など
封建序列4:自由領主:大多数の伯爵、子爵、男爵など
封建序列5:参審自由人(騎士階級)
6と7には名称が無い。
騎士は領地を与えて臣従させた世襲の『家臣』と『陪臣』を持てるが、それ以外は金銭で雇った者や無償で働く隷属者であるということ。
また『ばる』という語尾はburdigと同じで、ナチュラルボーン(生まれながらの)やウーマンボーン(女から生まれた(者))と同じ。騎士階級は騎士に就職できた/出来ない;を問わず『騎士の家に生まれた』『騎士になれる家系の者』を意味する。
封建関係は
封 主
↓(領地を与えて臣従させる)
封 臣
むろん臣従とは軍事力提供契約であって、滅私奉公などしない。裏を返せば、滅私奉公は封建的でない。
国王から最大七階層、土地の又貸し的なチェーンが封建制である。
序列3:世俗的諸侯は、序列1:国王からの封建;と序列2:精神的諸侯からの封建があるが、序列3以下は中とび無く3→4→5→6→7と続く。つまり同じ序列4である『伯爵』と『男爵』は封建的主従になる事はなく、上下関係は『宗家に従う分家一族』とか『軍事行動中での指揮命令系統』とかである。
また、国王からの又貸し的チェーンと別系統で、個人的(もしくは世襲的)な私有地を与えられて臣従している者もある。
例えば、男爵が離反して侯爵との君臣関係が解消されると、侯爵から封与された封地を領有する権利も無くなるので、その土地から又貸し的チェーンで封建された騎士たちも封地を領有する権利を失なう。しかし私有地を封与されている騎士は権利を失わない。
この封主→封臣の封建関係は、いずれか一方が代替わりすると、一年と一日以内に『授封更新』を行わねば、正式な君臣関係が維持できない。
授封更新におけるコメンダシオンの儀式
《279回本文 2》
「いや、わたくしたちは caeligenus ではないが caelibatus ですから、何のことを仰っているやら皆目・・」
《本文ここまで》
caeligenus :天国の生まれ
caelibatus :(戒律で求められる)独身、禁欲。つまりchastity童貞
《279回本文 3》
少なくとも代官シュルツの裁判所は関与しない。なぜって、自由民を裁く法廷だから。
《本文ここまで》
法も正義も権利も同じ言葉 "Recht" だが、法が保護するのは自由人である。
だがなぜか動物を裁く裁判がある。
《279回本文 4》
しかし、自分の所有する不自由民に対して暴力的な主人は、高価な着物を粗略に扱って平気で汚す人と同じくらい存在する。貴重な財産である馬を、癇癪ひとつで乗り潰す者も居る。
《本文ここまで》
教会が『同じ神を信じる者を奴隷として使役する』ことを禁じたが、異教徒を奴隷にすることも、神を信じる自国民を異国に売り飛ばすことも平然と行われていた。
教会すら、先天的奴隷人たる異民族を認めていた。
奴隷の価格は70〜140Dukat(Gênes 14/15eme-siecle)
かなり高価である。




