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261回蘊蓄

 蘊蓄回です。


《261回本文 1》

「なぁ知ってるか? 昔は女にゃぜんぜん相続権なかったんだぜ。親が殺されても女は仇討ちの決闘できねぇじゃん! って言われてな」

「ふーん」

《本文ここまで》


 ゲルマン諸族のうち、ローマ市を領有したランゴバルド族は最も先進的といえる国を建てた。フランクのシャルルマーニュに征服されたが、法の整備は時代の先端を行っていた。

 女性の権利正常化も先行しており、ロタリ王法典Edictus Rothari (a.d.643成立)に加えられたリウトプランド王附加勅令(a.d.713〜735頃成立)では、初めて嫡出の娘に嫡出の息子に準ずる権利が認められている。


リウトプランド王附加勅令§1

「もし誰かランゴバルド人が嫡出の息子達なく死亡して、娘達を遺した時は、その娘達が、嫡出の息子達のように、彼女の父または母の全相続財産を、相続人として相続するべきである」

"Si quiscumque Longobardus sine filiis masculinis legitimis mortuus fuerit et filias reliquerit unam aut plures,ipse ei in omnem hereditatem patris vel matris suae tanquam filii legitimi

masculini heredes succedant."



《261回本文 2》

「庶子に相続の制限があるのも、おお昔は敵の一族みんなブッコして財産奪っちゃ敵の大将の女房一発やって孕ませるってマウントの取り方してたから、そうやって外でこさえた息子に割とよく、仇討ち喰らって殺されてた所為だとさ」

「それはさすがに嘘だろ」

《本文ここまで》


 さすがに嘘である。

 逆に、庶子に対する差別は結婚制度がルーズだった古い時代には余り見られず、教会の影響で時代が下るほどと強くなる。


《261回本文 3》

 実際に、く耳にするのは『その息子の兄に殺されて、異父兄弟がまた仇討ちで殺し合う』なんて伝説である。

 殺伐とした時代があったもんだ。

《本文ここまで》


"勇士殺しのアースムンドのサガ" (既出)

 スウェーデン王Buðliはデンマーク王Álfrに殺され、Buðliの娘Hildrはデンマーク王の家臣の勇士アーキ Ákiに与えられた。

 それでスウェーデン王の娘Hildrには、前夫の子Hildebrandrと、Ákiとの間の子Ásmundrという異父兄弟がいる。

 Hildebrandrはデンマーク王に復讐してこれを殺し、デンマーク王の娘Æsaの婚約者となっていたÁsmundrがHildebrandrに復讐する。

 つまり異母弟が異母兄を殺す。



《261回本文 4》

「いま農奴になってる人たち、征服された部族の子孫達だって言われるけど、家督争いで負けた兄さんの一家とかも居たかもね」

「そう言やぁ、負けた兄一族が水中にぶち込まれて虐殺される『溺死踊り』なんて伝統芸能があったっけ。溺れて死なずに、一命とりとめて奴隷にされた生き残りが伝えたとか」

「現代に生まれて良かったな」

《本文ここまで》


 これは海幸彦と山幸彦ネタ。

 隼人舞の起源。

 弟に敗れて臣従する海幸彦(火照命;隼人の祖)が『潮盈珠』攻撃で溺れる様子を写したと言われる。

 実際は、南九州のオーストロネシア系部族が伝える戦闘舞踊を、奉事根源説話にかこつけて、征服者側である大和びとがそう揶揄したという説の方に信憑性を感じる。

 現在の隼人舞は研究者が再現したもので、原型とは異なるだろう。むしろオールブラックスがラグビーの試合前に披露するマオリ族の戦闘舞踊ハカなどに近いものだったのではないか。



《261回本文 5》

 みんな軍人気質で行動が早いのだろうか。まるでBlitzkriegだ。

「『ぱぱっぶりっつと』が良いんだよ。父上たち多分 "copula carnalis" 済んでるから」

「げ」

《本文ここまで》


 電撃戦Blitzkriegは、グデーリアンのものが有名。稲妻のごとき速攻。


 氏族間の婚姻ムントエヘは、やや単純化すれば

 1)Mundchatz贈与:結納。家父長権の移譲に対する対価の支払い。

    :夫→妻実家

 2)第一回copula carnalis(肉体的結合)

    :教会法的に婚姻の必須条件。後世は夫婦の合意で代替される。

 3)朝の贈り物モルゲンガーべ;donum propter nuptias

    :処女性喪失の補償として、未亡人になる未来も含めて生活の糧を保障

     夫→妻本人

 この三つで婚姻締結行為が完了する。



《261回本文 6》

 いつしか、だいぶの人数に達した頃、派手な服を着たバグパイプ吹きが現れ曲を奏で始める。

 吹きながら村の通りを練り歩くと、旅姿の女子供が列を成し随いて歩く。小さな荷車を曳く者もいる。

《本文ここまで》


 いうまでもなくPied Piperネタ。



《261回本文 6》

「そうじゃなぁ。『高原州は陥としたが未だ進撃は是れから・・じゃのうて、

《本文ここまで》


 決してシンガポールと関係ない。




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