表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
258/383

190回用蘊蓄

 蘊蓄回です


<190本文>

「現状、婚姻による法定後見人としてチョーサー伯爵ポルクス殿が旧アンドレアス伯爵領を占有管理していますが、正しくは伯爵令嬢アウグスタ様の固有財産です。従いまして令嬢の実子ならば事実婚の子ケブスキントでも相続可能です」

<本文ここまで>


 法的に正当な婚姻により、夫は直ちに妻の後見人になる。

 Der man is ouch vormunde sins wibes, alse si im getruwet wirt. (Sachsenspiegel K XLV)

 Der Mann ist auch Vormund seiner Frau, sobald sie ihm angetraut ist.

(併記の場合、上段は中世ザクセン語)


 女性の出生身分が男性のそれ未満であるときは、婚姻期間中にわたり男性と同等身分に上がる。

 Das wip is ouch des mannes genosinne, swen si in sin bette trit, noch des mannes tode is si ledig von des mannes rechte.

 Die Frau ist ebenso Standesgenossin ihres Mannes, sobald sie in sein Bett tritt; nach dem Tod ihres Mannes ist sie von des Mannes Recht frei.

 男のベッドに入ると夫と同じ身分になる、と変に具体的な規定。

 夫の死後は男の『権利(身分)から自由になる』というニュアンスも不思議。


 ただし女性の身分が体僕ライバイゲンである場合は、(その所有者である)男性は先に女性の身分を解放する必要がある。

 Ist sie aber selbst leibeigen, so kann man sie freilassen. (Sachsenspiegel-I-51§2)

 男性の出生身分が女性のそれ未満であるときは、子の出生身分は父親と同じになる。

 したがって、一人の女性の産んだ子が、嫡出子eheliche Kinder、貴族の子供adelige Kinder、農奴の子供leibeigene Kinder、側室の子供Kebskinderのうち、どれでもあり得る。

 Kebskindは法的正統性を持たないKegelに当たる。


 Kebsは十三世紀でも差別的なニュアンスを強く含んでおり、寵姫Konkubineなどとも言い換えが行なわれた。

 一方で、部族時代のゲルマンでは母親からの地位継承が行われていたと考えられている。

 Der Nibelunge Nôt はブルグンド族の三人の王を "vrou Uoten" の息子( vrou=Frau )と母の名で呼び、父の名を伝えていない。


 ここで問題は、以下の規定が出生時点に遡及するか、である。

「彼女が側室であれば、いつでも男性と結婚し、この婚姻関係で(嫡出の)子供を産むことができます」

Ist sie eine Kebse, so kann sie einen Mann heiraten und jederzeit (eheliche) Kinder in dieser Verbindung bekommen. (Sachsenspiegel-前出)


 先に言及(186回用蘊蓄)したフランク王国ロレーヌのロタール2世Leutheri Filiusは王妃Teutbergaと婚姻中(もしくは同時)に愛人 Waldradaとの間に非嫡出子Hughを儲けておりHughは父Lothair IIとTeutbergaとの離婚訴訟成立直後であるa.d.867からロタールの王国崩壊の十五年後a.d.885までアルザス公爵である。これは非嫡出問題が解消されたと考えることが出来ようか。


 なお、女は不貞に迷って生きることで 自分の女性としての名誉を傷つける事はあっても、そのために彼女の権利や相続財産が失われることはありません。

Eine Frau kann durch unkeuschen Lebenswandel ihre weibliche Ehre verletzen, sie verliert aber dadurch weder ihr Recht noch ihr Erbe. (Sachsenspiegel I-III)

 つまり、もし婚姻によって夫の地位まで引き上げられている女性ならば離縁によって元の身分に戻るが、自分固有の出生身分も固有財産も失なわれる事はない。それは自分の血族本来のものだからである。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ