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172用蘊蓄

本編は夕刻にUPします。

蘊蓄回です


<172本文>

「ヴィッリ男爵フェンリス様は、正確には爵位継承の儀を近日中に控えておいでの猶子どので、ご実父は高名な嶺南の猛将マッサ兄弟のミケーレ様。既にトルンカの男爵様でもあられますが、今は南岳の司祭さまを名乗られております」

<本文ここまで>


 修道院もまた、一つの経済活動を営む共同体なので、内部に世俗的業務に専念 する人々の存在があった。

 彼らは俗人の兄弟Laienbruderと呼ばれた。

 教会内で使われる手拭いについての習慣規定で、puerの手拭い、cantorの手拭い、idiotaの手拭いという区別があった。puerは修行中の小坊主、cantorは聖歌の歌い手ーここではラテン語で歌える者の意味である。司祭Sacredosや助祭Levitaは、これ。ばかidiotaはilliteratusという言い換えから見てもラテン語読み書きのできない者が露骨に差別されている。宗教的位階以前に、言語能力で身分的に大きな壁があったのである。

 しかし血縁チートを除けば、教会は年功序列の世界である。のちのち勉強して高い地位に登った者もいる。

 成人後に修道院に入った俗人で、院長Abbaや次席Priorはもちろん、経理部長Camerariusや看護師長infirmariusという専門職の高位役職者になった者の記録もある。ただし貴族階級ばかりなので、血縁チートかも知れない。


 フェンリスくんの場合、法務担当の俗人司祭Laienpriesterとなるのは、puer出身で語学も堪能、ヴィレルミ師とアリストテレス談義をする人物なので(第四部 29.憂鬱な情報屋)経歴的にも学識的にも問題なかろう。





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