145回用蘊蓄2
本編は夕刻にUPします。・・たぶん。
《145回本文1》
「それより問題が・・寝言なんです」
「男にキスされたとかいう内容か?」
《本文ここまで》
There are a kind of men so loose of soul,
That in their sleeps will mutter their affairs:
One of this kind is Cassio:
...
and sigh'd, and kiss'd; and then
Cried 'Cursed fate that gave thee to the Moor!'
(Othello Act 3 Scene 3 )
寝言が問題。隣で寝ていた男にキスまでする。
《145回本文2》
「それが・・『ヴェーヌスの山』って単語が聞こえたとか、聞こえないとか」
「そそそ・それ、あそこのぷっくりした膨らみってエロ単語じゃないよな? もろ本格的に教会的にやばい禁句の方だよな?」
《本文ここまで》
„Ich bin der edle Tannhäuser genannt,
Wollt Lieb und Lust gewinnen,
Da zog ich in den Venusberg,
Blieb sieben Jahre drinnen.
( Heinrich Heine "Der Tannhäuser.Eine Legende.")
欧州に残った地母神ら、女神イシュタール(アスタルテ)は地獄の侯爵アスタロトになったが、ヴィーナスはキリスト教世界で生き残るのに最も成功した。地下で信仰され続けたのである。魔女だが。
ハイネ『流刑の神々(Les Dieux en Exil)』に詳しい。
ヤーコブ・グリムの収集した伝説では
修道騎士タンホイザーは愛欲の世界に迷い『ヴェーヌスの山』に七年住む。
所業を悔いて教皇の前で懺悔するが、最悪の悪魔の魔法は解けないと言われる。
教皇の手にした木の杖が再び芽吹くことが無いように、その罪は赦されぬと言い渡される。
タンホイザーが何処かへ去ったあと、教皇の杖に新芽が生える。
奇跡が起きたので人々はタンホイザーを探すが、その行方は遂に知れなかった。
《145回本文3》
「はい・・『あなたの愛を知らぬ者よ。行け! 行け!』とも」
《本文ここまで》
Armselige, die ihr Liebe nie genossen,
zieht hin, zieht in den Berg der Venus ein!
(Tannhäuser)
《145回本文4》
「それ・・『行け! 行け! トルコへ』でも無いよな?」
《本文ここまで》
小沢昭一『土耳古行進曲』
《145回本文5》
酒を一気に喇叭飲みして『七面鳥は飛んでいく』という歌を謡い出すマックス。
《本文ここまで》
トルコ(チュルク)族は六世紀にはアラル海に達し、十一世紀には小アジアで東ローマ帝国に勝利している。
中世の物語にトルコが登場しても辛うじておかしくないが、新大陸の鳥類である七面鳥は無い。
もちろんコンドルも無い。
ジャガイモ警察が逮捕するであろう。
タンホイザー
ハイデルベルク大所蔵『ハイデルベルク名歌手大全』Codex Manesse(Public Domain)より
Tannhäuser(Tanhserと綴られている)
伝説的人物だがアッコン(現イスラエル)に本部があった時代のチュートン騎士団員として実在したらしい。
修道騎士の姿で描かれている。




