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悪役令嬢は幸せを夢見る

作者: 千子

「アリヴィア侯爵令嬢!貴様のライア嬢への言動は目に余る!ここで婚約破棄を告げる!!」

婚約者であるガイラ殿下のお言葉に従いカーテシーをして了承する。

「かしこまりました、殿下」

周囲がどういう目をしているか見えずにお互いを見合う第一王子ガイラ様と平民であるライア様はお互い手を取り合って鐘撞堂へ向かう。

しばらくして鐘の音が国中に響く。

これで「物語の世界」は終わり…。

私が何をしてもどうとでもなる世界には早変わり。

「ようやくですね」

声を掛けてきた従者のエヴァンにも笑いを抑えきれず答える。

「ふふふ、そうね。ずっとこの時をまっていたのですもの。ヒロインであるライア様が物語を始める前から。……矯正、出来たら良かったんですけれどもね。幼い頃頑張ってみましたが、ガイラ殿下では国が滅びますわ」

よって、ライア様同様にガイラ様からもこれからの物語からは退場していただきましょうと決めたのはライア様が現れてガイラ様が即骨抜きにされた頃。強制力が強すぎてもう修正は諦めていましたわ。

ガイラ様ったら、傀儡の王にすらなる価値がないんですもの。

第二王子が優秀な方でよかったですわ。

ですから、ゲームが終わるのを待って事が進むようにしましたの。

鐘撞堂の鐘の音が国中に響いたらゲームはお終い。

これからはわたくしのやりたいようにやらせていただきますわ。

だって、悪役令嬢ですもの。


一夜明けて、ガイラ様は粗末な小屋の床に縛られて置かれております。

何度も身体を重ねたわりには初夜気分で楽しまれておりましたから、身体を動かして行為をなさる前に飲み物に混入しておいた睡眠薬が効いているご様子。

ぴくりとも動かずにまるで死んでいるかのよう。

「ガイラ様、ガイラ様。お目覚めくださいな」

そうでなくてはつまらないでしょう?

「う……ライア…?」

まだ夢見心地なのかしら?これから地獄へ真っ逆さまなのに。可哀想なお方。もう少し優秀ならこんなことにならずに済んだのに。

「ライア様は娼館へ送らせていただきましたわ。殿下以外に側近五名とも肉体関係を持つような方ですもの。今頃喜んでいるんじゃありませんこと?それに、この国で一番厳しいけれども豪奢な娼館ですもの。働いたら働いた分だけ相応の報酬がある。ライア様には今までと何も変わりませんわ。まあ、その報酬はご迷惑を掛けた方々への慰謝料で消えていく事でしょうけれど」

本当に、調べれば調べる程にライア様は他者に対して慈悲の心もないようでしたわ。

わたくしを悪役令嬢と罵る以上の悪役令嬢っぷりには感服致します。

「何を言っている!ライアは、ライアは私だけだと!私だけを愛していると言って身を差し出したんだ!失礼なことを言うな!!」

「ではこれを」

他国から取り寄せた記録機を使いライア様の不貞をガイラ様に分かりやすく見て知っていただきました。

この機械のおかげで殿下の浮気や不正も撮っておくことが出来、陛下に婚約解消を認めていただけて慰謝料までいただけましたわ。

無言になったガイラ様に追い討ちを掛ける。

「お可哀想なガイラ様。愛していた者にも信じていた者にも裏切られて、陛下方からは死んだことにせよと身分剥奪で他国へ放り投げ出され……ざまぁみろですわね」

にこり、と微笑めばガイラ様は許容量を超えたのか意味の分からない暴言…呪詛に近いですわね。撒き散らしながら芋虫のようにこちらへ這ってきます。

「まあ、振った女性に寄ってくるとは本当に落ちた方。わたくしがあなたを愛したことすらないことも分からず得意顔で、本当におかしくて面白いお時間をありがとうございました。このお礼を言うために接見を許されましたの。もう目的は果たしましたので行きますわね。ごきげんよう、ガイラ様」

そう言って小屋の扉を閉めた。あとは見張り番が厳重に鍵を閉めて馬車が来るのを待つだけ。

もしかしたら、その馬車も他国へ行く前に崖下へ落ちてしまうトラブルがあるかもしれませんが、陛下の心情を考えても致し方ないことですわ。


「エヴァン、待たせましたわね」

「いいえ、ですがやはり元婚約者とはいえ他の男性とあなたを二人きりにするのは少し妬けました」

「まあ、エヴァンったら……」

素直なその言葉に頬が熱くなります。

悪役令嬢の従者エヴァンは隠しキャラクター。

そして前世からの推し。

幼少期に記憶が戻った時には既に王子との婚約が取り決められていて絶望しましたが、諦めきれずにエヴァンを不正のある、孤児たちに暴力すら働く孤児院から探して保護して万事エヴァンルートを進めさせていただき、無事クリアしましたもの。

これで邪魔者はすべてなくなり、わたくしはエヴァンと幸せな生活を送るのですわ。

エヴァンとの仲は浮気にならないよう、足元を掬われないよう細心の注意を払いました。

それにエヴァンは孤児院にいたけれど、元は公爵の庶子。

その証拠の品も前世の記憶から見付けてあります。

これで身分差は問題なし。


ああ、我ながら完璧なルート過ぎて夢を見ているよう。

いいえ、これはわたくしの地道な努力の成果ですわ。

「エヴァン、幸せになりましょうね」

「もちろんです、アリヴィア様。幸せに致します」

うっとりとした顔で愛を誓ってくださるかわいいエヴァン。

夢見た悪役令嬢が幸せになってもゆるされますわよね。

恋した人と過ごしたいなんて可愛らしい夢。

これからは、これからこそは本当に愛した方と幸せに過ごしますわ。



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