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第一章 出会い

俺の名前は柏木浩だ。

25歳独身で東京の某有名企業で働いているどこにでもいる社会人だ。

そして俺はあるラジオ配信で毎日定期配信を行っている。

俺は秋田出身だから秋田弁で配信をしている。

秋田弁は珍しかったのか1週間で2000ファンに上り、

毎回のアクティブ数は100を下ることはない程になっていた。

話が面白いとか声がカッコいいとかよく言われるが自分はそこまで上手だと思わないし、声もイケボとは完全に言えないと思っている。

そして、俺はこの世界に色がなくなってしまっている男だった。

そのため、何を話してもつまらなく、仕事も苦に感じておらず、何をしても無に帰していた。

そのためか俺は表情が全く顔に出なくなってしまっていた。

俺は同じ時間に退社し、同じ時間に帰宅するほど機械みたいな人間だった。

そしてそんな俺の枠にほぼ毎日聞きに来るリスナーがいるそのうちの一人に淳さんがいる。



ある日俺は退社の時間が少し遅れた。

それが幸か不幸か運命なのかわからないが俺の目に一輪の花、いや初めて違う色が見えた。


その日は帰宅中に配信をしていた。

そして淳さんが入ってきた。俺はいつも通り秋田弁で淳さんを受け入れた。

「淳さんいらっしゃい!今日も俺の声さに癒されでね~」

(こんばんは!仕事の帰り道です!)

「淳さん、仕事の帰り中か~俺もなんだぁ~!仕事お疲れさんなぁ~」

(いつもhiroさんの枠に癒されてるんで今日も来ました!)

「いつもhiroさんの枠さ癒されんで今日も来たんだぁ~ありがてぇ~!」

俺はリスナーのコメントを読みつつ、それに自分が経験したことや思ったことを話しながら家の近くのコンビニに入っていった。そこには客が数人と店員が2人いるだけだった。俺はそこに周りとは違う雰囲気の男性がいた。

まるでその男の周りだけ灰色のキャンバスにピンクの絵具を垂らしたように見えた。


(初めて色のついた人を見たな…、あの人イヤホンしてるけど何きいてるんだろ?)

俺は気になりつつその人の横を通り過ぎた。

俺はその時男なのに艶やかな肌そしてかわいらしいその顔に少し見とれてしまった。

「そんじゃ、もうすぐで家ば着ぐがらまだな~」

「おつhiro~、おつhiro~」

そして、配信は終わった。



そして、さっき会った男が頭から離れなかった。

「すいません。hiroさんですよね?」

「えっ…?」

その男はスマホを見せてきた。そしてある配信者のアイコンを見せてきた

特徴的なタバコを吹かした男性のアイコン。俺のだ。



「この配信者あなたですか?」

と聞かれ俺は胸の奥からじんわりと来る温もりを感じつつ平然を装いつつ言った。

「あはは、まさかリスナーさんと会うとは、はーそうか、俺の聞いてたのか…ふー。君名前は?」

と俺はここで無意識に名前を聞いているのに気が付いた。

俺、なんてこと聞いてんだ?相手は年下だぞ!何やってんだ…あーもう!と自分を責めた。

「僕の名前は神原淳です…。一応大学生です…。」


「そうか、そうか、じゃあ淳くんってのは君の事だったんだね。俺の名前はね柏木浩だよろしくな淳くん。」

(あれ?淳くん顔赤いな… 熱でもあるのか?)

「淳くん大丈夫かい?ボーっとして顔も赤いぞ。」


「だ、大丈夫…です。」

そう答えていたが顔はさらに赤くなっているのに不思議に感じた。


「そういえば柏木さん。」

と言ってきたので、

「浩で良いよ。」

と咄嗟に答えていた。慣れ慣れしかったかな?

「浩さん、今秋田弁使ってないんですね。」

「あー、生まれは秋田だけど東京で就職してるとね、やっぱり方言は使えないからさ。配信のときの俺と普段の俺は違うのさ」

「そうなんですか…」

そう答えた淳は嬉しそうだった。

「そういえば、淳くん家はこの辺りなのかい?」

「はい、ここから10分程歩いたマンションに住んでます。」

俺は驚いた。俺もここから10分程歩いたマンションに住んでるからだ。

「えっ、もしかしてクリニックの横にある?」

「そうですけど…もしかして浩さんもそこに住んでるんですか?」

「そうだよ。そこの502号室だ」

「僕隣です。501号室です。」

「あー、神原って名前君だったのか!いつも会わないから誰だろうって思ってたけど」

「はい、自分も驚きです。まさか浩さんと隣なんて…」


俺は自分が淳に一目ぼれしていることにも気づかず、他愛のない話をしながら帰途に着いた。

「今度二人でどっか遊びに行きませんか?」

淳の一言に俺は驚いた。

「こんな素性も知らない大人とは付き合わないほうがいいよ。」

「…」

淳が少し寂しそうに見えたので笑顔で

「淳くん、お休み!明日も学校頑張れよ!」

「あ、あの!あ、明日も配信き、聞きに行きます!」

「おう!待ってるから!」


そのまま俺は部屋に入った。

そして、いつも通りの日々を過ごしていた。

あの日以来淳君には会っていない。

ただ繋がっている。それだけは確かなことだった。


(こんにちは!)

「淳くん、いらっしゃい!もう俺のファンだべな~!いつもあんがとー」

(hiroさんの配信好きなんでまた来ました!)


その言葉に俺は嬉しい気持ちとは別の感情があることに気づいた。

好きだ…。

でもその言葉は喉を通らなかった。


そして、月日は過ぎ、新入社員研修の日が近づいていた。

そこに淳がいることも知る由もなかった。

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