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3/7

体の内側から変わる

草木などを手にしたシャンテルは、それを使って、何かするのでしょうか。

 欲しかった物を手に入れたシャンテルは、その日からマルガリーナにいろいろな施術を行った。

 過去生の知識が役立つとは思っていなかった。

 シャンテルは以前の人生で、美貌を磨くための様々な方法を体得していたのだ。


 その日、シャンテルはまず、マルガリーナを浴場に誘った。

 浴槽には、ダフィの木の皮を煮出した湯が張ってある。

 ダフィの木は独特な香りを持ち、虫を寄せ付けない。

 そして、肌の痒みを止める薬効を持つ。


「ああ、温かいわ。なんだか、森の中にいるような香りね」


 シャンテルが上気した顔で手足を伸ばす。

 マルガリーナは、なるべく優しく、シャンテルの体を洗った。

 

 ヤギを連れた老人から貰ったのは、ハチの巣の一部である。

 それをお湯で柔らかくして、シャンテルはマルガリーナの頭髪に塗った。

 

「それ、なあに?」


「リーナ様の髪を、ツヤツヤにするものです」


 シャンテルはマルガリーナの頭部を、蒸しタオルで包む。


「ホント? 嬉しい!」


 マルガリーナの髪は一本一本が細く、髪の毛同士がよく絡む。

 ブラッシングをしようにも、絡んだ髪が切れてしまうので、上辺しかできない。

 結果、『蜘蛛の巣に覆われたような』髪になってしまうのだ。


 いつもより時間をかけて、マルガリーナは入浴した。

 蒸しタオルを外した髪は艶やかになり、髪同士が絡みあうことなく、自分の手でブラッシングできた。するすると、自分の指が髪を通りぬける感覚を、マルガリーナは初めて感じた。

 体を温めると痒みが出やすいのだが、ダフィの木の効果なのか、浴槽から出ても、マルガリーナは痒みを感じなかった。

 

 湯あみ後、マルガリーナの頬は、ほんのりと健康的な薄紅色になった。


「さっぱりしたら、お腹がすいたわ」


 着替えが終わったマルガリーナは、両腕を伸ばして笑う。

 シャンテルも、目を細めた。

 

「まずは、このお茶をお飲みくださいね。夕食のご用意をしてあります」


 マルガリーナは、お茶をごくごく飲んだ。


 

◇◇


 マルガリーナの皮膚に現れる症状は、『臓物の毒』によるものだとシャンテルは考えている。毒とは、その人の体に合わない食べ物全般を指す。

 シャンテルが見ている限り、マルガリーナは食が細い。日常的な主食であるパンは、姉のガドランシアの半分程度しか食べていない。


 プラバトー夫人は、虚弱なマルガリーナになんとか栄養を摂らせるために、わざわざ新鮮な牛の乳を取り寄せて飲ませていた。容器に残った白い液体は、ガドランシアが顔や手に塗っていた。


 だが、シャンテルの見立てでは、牛の乳はマルガリーナに合っていない。

 牛の乳を飲んだ後、マルガリーナの唇はぷっくりと赤く腫れるのだ。

 

「リーナ様、ちょっと手首を拝借しますね」


 牛の乳の代わりになるものはないかと、シャンテルは探していた。

 

「あら、ええ、どうぞ」


 手首を差し出すマルガリーナ。シャンテルは彼女の手首の内側に、一滴の液体を垂らす。

 代わりになるかもしれない、裏庭で育っていた豆。

 その実を砕いてすり潰し、布で濾す。


 手首に垂らしたのは、豆から絞った液である。

 垂らしたところが、赤くなるなら諦める。

 皮膚を赤く変えるもの、それが臓物への毒となるものである。


 幸い、豆の汁は、マルガリーナの皮膚に変化を起こさなかったので、それを食することが出来る。


「良かった! リーナ様、これなら食べても大丈夫です」


 以後、マルガリーナは牛の乳の代わりに、豆の絞り汁を飲むようになる。

 唇が腫れることはなくなったが、牛の乳と比べると、美味しいものではない。

 体のためにと我慢しながら、豆の絞り汁を飲むマルガリーナのために、何かないかとシャンテルは考えた。


 牛がダメでも、山羊ならどうかしら……


 シャンテルは山羊を連れた老人にお願いし、時折山羊の乳を譲ってもらうことにした。

 山羊の乳も、マルガリーナの手首に垂らして確かめた。


 老人はこう言った。


「山羊の乳はそのまま飲むだけじゃなくって、固まりを作っておくといいぞ。パンや野菜と一緒に、食べることが出来るからね」


 シャンテルは老人から、山羊の乳から固まりを作る方法を習った。

 出来上がった真っ白な固まりは、薄く切った黒パンと一緒に食べると、思わず頬が緩む。

 シャンテルは、プラバトー夫人やガドランシアにも、この食べ方を勧めた。

 夫人は「珍しいものを作ったわね」と喜んだ。

 ガドランシアは「臭い」といって、一口で止めた。

 

 季節は春から初夏に向かう。

 マルガリーナの食事は、血や肉を作る栄誉分が豊富になった。

 すると、それまでさほど活動的ではなかったマルガリーナが、体を動かすことを厭わなくなる。

 シャンテルは、体の柔軟性を高めるような動きをマルガリーナに伝授した。


 食べて、動いて、湯浴みをする。

 マルガリーナは毎日、熟睡出来るようになった。

 その結果、マルガリーナは薄皮を剥ぐように、肌がきれいになっていった。


 肌だけではない。

 髪はしっとりとしなやかさを増し、頭頂部には光の輪が浮かぶようになった。


 マルガリーナの笑顔が増えると、シャンテルも心が弾む。

 もっと元気に。

 もっともっと美しく。

 誰かのために動き回ることは、自分の心も明るくすることを、シャンテルは実感していた。

 

 

 肌の発疹が治まるようになり、夫人は喜んだ。

 こっそりシャンテルに言った。


「あなたに、マルガリーナの手助けをしてもらって、良かったわ」

 

 さらに、こんなことも。


「新しいドレスを作りましょうね、マルガリーナ。ああ、もちろんシャンテルも。夏至の日はあちこちで、お茶会やパーティがあるから」


 肌を出さなければならない夏には、マルガリーナが外に出ることはなかった。

 今年は、パーティにも行けるだろうか。


「シャンティーと一緒なら、行ってみたいです、お母様」


 そんなマルガリーナを、ガドランシアは横目で見ながら通り過ぎた。

 ガドランシアの額には、ポツンと赤い発疹があった。

 

次回、マルガリーナに出会いが!?


お読みくださいまして、ありがとうございます!!

誤字報告、助かっています。

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― 新着の感想 ―
[良い点] シャンテルによって見た目を改善されたマルガリーナはその内面にも変化が出始めているようです(*´ω`*) どんな出会いが待っているのか楽しみです(∩´∀`)∩
[良い点] アレルギー!! 知らないで食べてたら可哀想だったねー。酷いものじゃなくて良かった。 ナッツはやめておこうね。絶対に禁止!! アトピーかと思ってたけど、アレルギーなら抑え効く!! うんう…
[一言] エステティックサロンキターーー!!!!(大歓喜)
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