なんでよりによって俺が!?
中世チックな建造物の並ぶ通りのど真ん中、世界観ぶち壊しの学ランを着た男子高校生が腰に手を当て立っていた。
「うんうん、ここが異世界かぁ~...ふざけんなよぉぉぉぉぉ!!!!」
それは異世界に吹っ飛ばされた俺だった。
これを見ているであろうみんなになんでこんな事になっているか教えてあげよう。
それは今日の学校終わり、大体16時くらいに起こった。
俺は学校帰り、日課の読書をしていた。読書といっても頭のいい文学少年が読むような本ではなく、いわゆる"ラノベ"といわれるものだ。俺は自他ともに認めるラノベマスター、王道からコアなものまで様々なジャンルのラノベを所有し、読み漁っていた。
今日は異世界モノの気分だったため、壁一面に並ぶ本棚から一番好きなシリーズの一巻目を手に取ると夕日と風の心地よいポジションに置かれた一人掛けソファに腰を下ろす。大好きな本に囲まれてラノベを読んでいる時が一日の中で一番安心する。まぁ、安心するってことは眠くなってくる訳だが、いつもの俺なら本を元に戻してベッドで寝るのだが、その日はかなり疲れていたのかそのまま寝てしまった。
目を覚ますと自分の座っていたソファ以外見たことのない空間、見たことないというか何もない真っ白な空間に飛ばされていた。
「なんだ、このなんもない場所...俺部屋で寝たよな?」
寝起きにもかかわらず意識は異様なほどはっきりしていたので、もう一度寝るなんてことはできそうにない。
こんな何もない世界が現実な訳ないと踏んだ俺は夢の中の世界だと思われる真っ白な空間を散策してみることにした。
「もしかしたら誰かいるかもしれないしな、誰かいたらそいつにここがどこか聞くとしよう。」
そんな独り言をこぼして歩き出す...といったところで背後から聞き覚えのない声が俺にかけられた。
「どこかに行かれるのですか?ここには貴方と私、あとはソファぐらいしかありませんよ。」
「うわおっ」そんな腑抜けた声を出し、声の主のほうに回れ右する。
そこに立っていたのは透き通るような白い肌にきれいに整えられたロングの黒髪、異様なほど整った顔、完璧とまで言えるスタイル、要するに女神のような女性が立っていた。
「えーっと、だれ...ですか?」
人見知り陰キャを発動させている俺の問いに対して女神のような女性は答える。
「自己紹介がまだでしたね。こんにちは九条正樹さん。私は天界転生課のシリスと申します。以後お見知りおきを。」
「これはご丁寧にどうも。で、なんで俺の名前を知っているか聞いても?」
「私は女神ですよ?何でも知っています。貴方の家の家族構成も、趣味も、性癖も。疑うようでしたらここで暴露して差し上げてもよろしいですよ。」
「OKやめてくれ、俺の人生最大のトラウマになりかねない。」
「信じてもらえてよかったです。私も貴方の性癖については言いたくありませんでしたので。」
「ちょっと傷ついたよ!?」
そんな感じで心に少し傷が入ったところでこの状況について聞いてみることにした。
「で、俺は何でこんなところにいるのか聞いてもいいか?確か俺は部屋で寝てたはずなんだけど。」
「...単刀直入に言います。」
そうシリスは言うとなんのために俺がここに呼ばれたかを話し始めた。
「貴方に世界を救ってもらいたいのです。」
「へ?」