ペンション①
ペンションのドアを開けると、ひょろりとした髭のおじさんが待ち構えていた。
「よくお越しいただきました。私はこのペンションサンフルームのオーナのエキオンと申します」
あいさつをしながらエキオンが我々を受付に促す。
宿泊代も観光案内所で聞いていた値段と変わらなかった。ぼったくられるという心配はなさそうだ。
簡単に手続きを済ませると、「こちらです」と早速部屋に案内される。
二部屋用意してもらったけれど、一度片方の部屋で三人でエキオンの説明を聞く。
「大浴場もございますが、部屋にもお風呂は用意しておりますので、ご自由にお使いください。また夕食は十八時から二十一時までとなっていますので、その時間帯になりましたら一階の食堂までお越しください。食べ物、飲み物の持ち込みは自由ですので、ご観光の後お部屋で続き楽しんでいただいて構いません。その際、他のお客様のご迷惑にならないようにご配慮お願いいたします。二泊三日とのことですので、明日は朝食がございます。七時から十時までに夕食と同じ食堂までお越しください。明日の夕食も今日と同じ時間です。またチェックアウトは明後日の朝八時までとなっていますので、遅れないようによろしくお願いいたします。説明は以上となりますが、ご質問はございますか?」
エキオンは一度も詰まることも噛むこともなくきれいなタイミングで息継ぎをし、聞き取りやすい口調とスピードで説明をしてくれた。
プロの仕事だなと思った。
俺たち三人から質問はないとわかると「それでは失礼します」と言って出て行った。
「よし、男女で別れよう。じゃあ俺は隣の部屋に荷物持っていく」
エキオンから部屋にベッドは二つしかないと聞いていたので、二部屋取ったが、三つあったとしても男女で分けた方がいいだろうと思っていた。
「え、あ、そうなの?」
ソフィーが荷物を台車からおろしながら言う。
「私が一人部屋でも構いませんよ」
ハリエットが意味の分からない気を遣っている。なぜか荷物を担いでいる。
「ハ、ハリエットがそこまで一人がいいって言うのであれば、じゅ、純也と一緒の部屋でもいいわよ」
腕を組んで、「仕方ないわね」とかぶつぶつ言いながら顔を背けてソフィーが言う。
頬が赤いのは坂道の疲れのせいだろうか。
「いや、俺が一人でいい。ハリエット、ありがとう」
馬車の運転でかなり疲れていたので、一人でゆっくり休みたいと思っていた。
荷物を担ぐと部屋を移動した。
ドアを開けるとき「はぁあ」というソフィーのため息みたいなものが聞こえたが、坂道が相当疲れたのだろうか。
一人部屋をソフィーに譲るべきだったのだろうか。