解放
「純也ぁああああ」
やっと解放されたソフィーは号泣してこちらに走って抱き着いてきた。
まあ、やっとと言っても一日だけれど。
エキオンが捕まったので釈放され、ペンションに戻ってきた。
俺は荒らされた部屋を片付けていた。
「よく頑張ったな……って、ちょっと暑いから離れろよ」
「だって……怖かったんだもん」
ぐずんぐすん鼻をすすりながら話すソフィー。
「一人前の剣士なんだろ? そんなことで泣くなよ」
「泥棒にされるところだったんだもん。牢屋に入れられてたんだもん。そんなの剣士だとか魔法使いだとか関係ないじゃん」
そう言うと「うあーん」と声を上げてさらに泣き出す。
俺の胸元がソフィーの涙と鼻水で濡れている。状況的に言えないけれど、不快感がすごい。
「純也様、ありがとうございました」
ソフィーと違ってハリエットは落ち着いていて、歩いてきた。
しかし表情はやつれ気味だ。牢屋の中で気を張っていたのだろう。
「ハリエットもよく耐えたな」
「純也様ならどうにかしてくれると信じていましたので」
ぺこりと頭を下げるハリエット。
「私も信じてた! 私も!」
「わかったわかった。ほら、いいから見てみろよ、この部屋を。大変なことが起きてるだろう」
「これは……。暴れたのですか?」
ハリエットが真面目な顔をして変なことを言う。
「違う。荒らされたんだ」
「え!? 誰によ! あのエキオンって男に?」
ソフィーの調子が戻ってきた。しかし鼻は赤く、鼻声だ。
「あいつじゃない。俺らの他にここに泊っていたロイド眼鏡の男だと思われる」
「逃げられたのですか?」
「ああ、悪い。油断した」
「いえ、責めているつもりはありません。状況を聞いただけです」
「大丈夫。わかっている」
ソフィーは自分の荷物を確認している。
荒らされてはいるが、盗まれたものはあまりなさそうだった。
何を探しているのかは不明だが、俺たちを探っていることには間違いないようだ。
「あの、今回は私たちの不手際でこのようなことになったと反省しております」
グレイニーさんが頭を下げて言った。
「そうだな。完全にそっちのミスだな」
これに関しては水に流すつもりはない。
「いろいろと補填させていただきたいと思います」
「当たり前よ!」
ソフィーがいつものように強気になっている。
それからいろいろ注文を付けて、新しい剣を作ってもらうことまで取り付けていた。それはさすがに図々しいなと思った。