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捜査二日目

 目覚めの良い朝だった。


 カーテンの隙間から入る朝日で自然と起き、頭がすっきりしていた。


 窓から見えるのはノッキオの町とその先に続く大地が一望できる絶景だった。


 しかしそれを共有できるはずの二人はいない。


 顔を洗うと、すぐに食堂に向かった。


 階段を降り、食堂のドアを開けようとしたら、中からロイド眼鏡の男が出てきた。



「おっと失礼」


「いえ、こちらこそ」


 

 この男とのやりとりは、なるべく速やかに、できるだけ短く済ませたい。



「今日も頑張ってくださいね」

 にやりとするロイド眼鏡の男。


「は、はあ」



 俺の返事を聞いてか聞かずか「くっくっく」とのどを鳴らして笑い、階段を上がっていった。


 相変わらず何について言っているのか掴めない。意味深なことを言う奴だ。



「おはようございます」

 エキオンは相も変わらないテンションで迎えてくれる。



 テーブルに並ぶ料理。


 どれもきのこ料理だ。スープは昨日と同じようだ。本当に作り過ぎたようだ。


 朝食は鮭きのこを焼いたものと卵きのこをゆでたもの。もちろん米きのこに海苔きのこもついてくる。


 さらに服きのこのピクルスと、爪きのこのお浸し。サラダには鍵きのこが入っていた。


 デザートのヨーグルト和えの泥きのこを食べ、血きのこのドリンクを飲んで、席を立つ。



「いってらっしゃいませ」


「ごちそうさま。いってきます」



 外はさわやかな気温で、やる気が出てきた。


 まずは旧広場の井戸の確認。


 昨日と変わらぬ水位を保ったままの井戸があった。


 ここの町人は気が付かないのだろうか。急に水が溜まったことに。


 それくらい旧広場は廃れてしまったということなのか。エキオンがかわいそうだ。


 現広場へ降りてみる。


 朝早かったからだろうか、町人は開店準備をしている。



「おはようございます」

 焼き鳥の焼き台のに火をつけているイミゼスに声をかける。


「お? ああ昨日の兄ちゃんかい。大丈夫なのか?」


「今それでいろいろ聞き取りをしているところです」


「そうか。まあ犯人が見つかるといいな」



 イミゼスはソフィーとハリエットを犯人だと思っているのだろうか。それとも他にいると思っているのだろうか。


 どちらにしても協力してもらいたい。



「ところで、イミゼスさん。昨日今日で地盤沈下や洪水、土砂災害が起きたところはありませんか?」


「ん? 何を言ってるだい? ノッキオは山の斜面にできてるんだ。そんなもん起きてたらこんな呑気に開店準備なんてできないだろう」



 そう答えると「かっかっか」とイミゼスは笑った。


 確かにその通りだ。


 この町の人全員がそういった災害に心当たりがないということだろう。


 ということは、井戸に溜まった水は昨日のままということだ。


 まあ水位が変わっていないのだから、当たり前だけれど。


 もう一度坂を上がり旧広場へ行く。


 旧広場は俺一人しかいない。本当に使われなくなったのだろう。


 かつてはここが賑わっていたと思うと寂しい気持ちになる。


 井戸にコインを二つ投げた。また二人と一緒にいられますように。


 そう願ってまた考える。


 井戸に閉じ込められ、這い上がるために、水で満たした。


 もし反対の出口で水を満たしていたら、抜け道の先がわかったはずなのに。


 ただ横穴の水に対する強度が不明だったためそれは出来なかった。


 今のこの状況を見れば水に対する強度はしっかりしたもので、耐えることができただろう。


 それに横穴が下り坂だったので、水が溢れれば洪水が起き、自動的に反対の出口がわかると思った。


 しかし溢れていなかった。


 ん? 溢れていない?


 なるほど、そういうことか。

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