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ロイド眼鏡の男

「ちょ、ちょっと。どうなさいました!?」

 俺の姿にエキオンが動揺している。



 無理もない。別れてから数十分でこんな姿になっているのだから。



「いやぁ……。すいません。ちょっと冷静になろうと思って水を浴びちゃいました」


「そ、そうですか。え、あ、まあわかりました。今タオルを持ってきますから、お待ちください」

 エキオンが受付の奥の部屋へタオルを取りに行く。



 ペンションの玄関前で服をできるだけ絞って水分を落としたつもりで入るが、このまま上がり込むのはさすがに俺も気が引ける。



「災難でしたね」



 ロビーのソファに座っていた男が話しかけてきた。


 ここの来た時には気が付かなかった。最初からいたのだろうか。



「え、ええ。まあ……」


「助かるといいですね」

 男がにやりと笑った。



 あ、さっき俺が泥棒を追いかけていたときに後ろから同じように追っていた男だ。


 怪しい男だと直感がそう言っているが、状況から判断して犯人ではない。犯人の仲間である可能性は否定できないが。


 ばたんと受付の奥の扉が開き、エキオンが戻ってきた。



「お待たせしました。こちらを使いください」

 エキオンからタオルを受け取ると、頭を拭いた。


「それでは」

 ロイド眼鏡の男の声が聞こえた。



 拭く手を止めて確認すると、もうロイド眼鏡の男はいなかった。



「今日はきのこのスープを作ってありますから、体を温めてください」


「ありがとうございます。とりあえず着替えてきます」


「ええ。それでは食堂でお待ちしております」



 できるだけ床をぬらさないようにつま先立ちで階段を上がり、部屋に入る。


 お風呂場で服を脱ぐ。


 さっきの男はいったい何だったのだろう。


 あのロイド眼鏡の男は「災難でしたね」と言ったが、何に対してのことだろうか。


 連れの二人が捕まってしまったことか、びしょびしょの状況のことか、それとも井戸に閉じ込められたことか。


 最後のことだとしたら泥棒ではないにしてもロープを切った本人となる。


 その後に続く「助かるといいですね」も不明だ。


 あの男の言った「災難でしたね」が連れのことなら、二人が助かるといいですねとなる。


 びしょびしょの状況だとしたら、風邪をひかないようにというニュアンスになるだろう。


 しかし井戸に閉じ込められたことだとしたら……? 井戸から脱出し助かっているのにもかかわらず、そういう発言をするということは、「また命にかかわることがあるから覚悟しろよ」という風にとらえられなくもない。


 何にせよ、怪しいことは間違いない。要注意人物として警戒しておこう。


 気が付けば裸だった。すっぽんぽで考え事をしていた。


 ここには誰もいないからいいけど、なんだかシュールだなと思った。

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