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調査②

 やられた。犯人による仕業だろう。


 油断した俺が悪いけれど。


 まあそれにそこまで絶望的ではない。


 簡単な話だ。


 井戸と言ったら水。つまり水を溜めれば浮力で上に帰れる。


 幸いその能力は授かっている。水を生み出すくらい夕飯前でも朝飯前だ。あーあ腹減った。


 ただこの井戸には横穴がある。そこから水が流れてしまい、溜まりきる前に俺の魔力が切れてしまうという可能性はある。


 そうなったらそうなったでまた考えよう。とりあえずはこの方法で帰還を試みる。


 エネルギーを集中させる。


 一気に爆発させるイメージをすると、みるみる洪水の如く水がわき上がる。


 原理は不明。とにかく不思議。


 落ちていた木片を抱き、浮かぶ用意をする。


 水は順調にくるぶしあたりまで溜まったがそこからなかなか水位が上がらない。


 横穴に流れているのが見える。


 確かに最初は緩やかな下り坂だった。


 手を止めず、水を出し続ける。


 水位が上がり始める。膝、腰、胸、肩、首を過ぎたあたりで、つま先が地面から離れた。


 ぐんぐんぐんぐん出口に向かう。順調そのもの。


 心配なことは横穴が多量の水により崩壊し、地盤沈下のような大ごとになること。


 まあそうなったらどさくさに紛れて二人を救出してこの町から逃げればいい。


 そんなことを考えている間も水位と共に身体が上昇していく。


 しかし体温は下がっていく。冷える。寒い。


 ファイアーも同時に出したらお風呂みたいになるかな? でもそんなことをしたら魔力の消費が倍になってしまうな。でも待てよ。旅の途中でお風呂に入りたくなったらこの手は使えるな。あーだめだ。俺の基本魔法がそれなりのものだと二人に感づかれてしまう可能性がある。却下だ。


 顎をがくがくいわせながら無事井戸の入り口まで上がりきった。魔力も使い切らずに済んだ。


 しかし油断はできない。


 勝手に動く顎を手で止め、そーっと顔を出してあたりを伺う。


 誰もいない。ロープは結び目のところで切られているようだ。


 犯人はロープを切ってすぐに去ったと考えられる。


 どうせ俺を蟻地獄で死を待つ蟻だと思っているのだろう。逃げきれないと思っているのだろう。


 そして町は静かだ。地盤沈下が起きていれば混乱で騒がしくなっていると思ったが、そういったこともなさそうだ。


 井戸から脱出すると、近くのベンチに座った。


 水分を十分に吸った服は重たい。そして夜風が一段と冷たい。


 ファイアを使って暖を取るが、服はすぐには乾かない。体温もすぐには戻らない。


 あーこれダメだ。風邪ひくわ。


 エキオンには悪いけれど、このままペンションに行こう。


 重たい服を引きずるように歩く。


 なめくじのように歩いた跡をつけながらペンションに戻った。

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