調査①
確認したいこと。それはやはり井戸だ。
この井戸をしっかり調べないことには始まらない。ここが抜け道になっていることも十分に考えられる。
基本的に井戸の形状としては縦に掘られているだけで横穴はない。しかし古い井戸だ。それに水もなく枯れている。
横道がないとしたら一時避難的にここに逃げ込んだという可能性がある。
瓦礫を拾い中に落としてみる。
しばらくしてからガチャンと音がした。
ロープで下に降りたのなら、そのロープが残っているはず。しかしその痕跡はない。
だとしたら飛び降りた可能性がある。そこで瓦礫を投げたのだが、それなりの深さがあり、さらに下にはクッションのようなものはないということになる。
このまま飛び降りたらけがをして逃げるどころの話ではない。
結論として、横穴のない井戸の場合、一時避難的にここに逃げ込んだ可能性はない。
横穴が井戸の底にあった場合は、なかなか難しい。
ロープで下に降りたということはさっきと同じ条件でありえない。
しかし飛び降りるという可能性は否定できなくなる。クッションをあらかじめ用意しておいて、飛び降りてからそれを抱えて逃げればいい。
気は進まないが降りて確認する必要がある。
瓦礫の中からロープを見つけた。何度も引っ張って丈夫さを確認した。
木にロープを結び、井戸に垂らす。
ゆっくりゆっくり慎重に下っていく。当たり前だが、下に行くほど暗くなる。
井戸の底は真っ暗で、見上げた入り口からわずかな光が入ってくるだけだった。
底に下り立つ。ぼこぼこしていてバランスを取りにくい。
俺は指に小さい火を起こして周りを調べた。
地面は石や木片が転がっていて、転倒しないように注意が必要だ。
壁を見てみると、案の定、横穴があった。
状況証拠として密室だと判断され、二人が容疑者となったが、ここに旧広場からの抜け道があるとなると、町の人の多くが容疑者に該当することになる。
とりあえずこれで二人の容疑も晴れるはずだ。
しかしここまで降りたのであれば、この先も調査しておきたい。
覚悟を決めて横穴を進んだ。
基本的に下り坂で膝に負担がかかった。
幸い分かれ道がなかったので、迷わず進むことができたが、くねくねとしていて自分がどっちを向いているのか、今がどのあたりなのか、そういった見当はまったくもってつかなかった。
行き止まりまでたどり着く。上を見上げると、光がさしていた。
つまり犯人は窃盗をして旧広場まで走り逃げる。
そしてクッションを用意しておいた井戸に飛び込んだ。
その後クッションを持って横穴からこの行き止まりまで進む。
あらかじめロープを垂らしておいて出口まで上り切ると、そのロープも回収しまんまと逃げおおせた。
こんなシナリオだろう。
明日はこの出口がどこにあるかを調べる必要があるだろう。
森の中だったら暗い夜は無理だ。
一度旧広場の井戸の方に戻る。
横穴から井戸に出ると悲しいことが起きていた。
俺の降りてきたロープが切られていた。
「おいおい。戻れねーじゃん」




