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忘却の彼方への旅  作者: JunJohnjean
第2章 野宿
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ストックホルムの帆船ユースホステル




 ここはスウェーデンの首都ストックホルム。四月の北欧はまだ寒いが、旅の出だしということもあって緊張感からか、寒さを感じない。信太はガイドブックを片手にユースホステル探し。港湾内に停泊している船そのものがホステルなのだった。スウェーデン美人と言うのだろうか、フロントで金髪の女性が応対してくれる。簡単な会話を交わして所定の手続きを済ませ、一泊。その後、街中を見て回る。ヘルシンキよりも大きい。彼が驚いたのは街の均整美だ。大きなガラス張りのショーウインドーが印象的であり、一晩中、照明に輝くのだ。ある日、彼がストックホルム駅に行って何をするでもなく構内のベンチに座ってボーッとしていると横に座っていた人が英語で喋りかけてきた。そして、最後に「家に来ないか」と誘ってくれる。暇を持て余していたし、「イエス」か「ノー」かどちらにしようかと迷っていた時、二人の背の高い男が近づいて来て一人が手のひらに何かを見せる。「これを売りたいのかな」と思って見つめていると、「ポリス」と言うので、この時、初めて事情が察せられた。

「パスポート」と私服警官は提示を要求する。

 信太は無言で即座にパスポートを渡す。

「どのぐらい、スウェーデンに滞在するのか?」

「一週間」

「所持金はいくらか?」

「500ドル」

 納得したのか、彼らは離れて行った。ベンチの横の人は話を聞いていたのは間違いない。何も言わずそそくさとその場を立ち去って行った。


挿絵(By みてみん)

ストックホルムの帆船ユースホステル



2(1)


 フィンランドの日本人から「ストックホルムの郊外に出てヒッチハイクをするに限る」と教えられていた信太は、ノルウェー行きの道路脇に立って初めてのヒッチハイク。すると彼は思ったよりスムーズにいくのに驚く。言葉こそ英語であるが、行き先を言うとスウェーデン人は何のためらいもなく乗せてくれる。目的地直行とまではいかなかったが、それでも途中のところまで進みヒッチハイクの醍醐味を堪能する。北欧の地図を眺めるとヨーロッパ大陸に位置するデンマークにはノルウェーの首都オスロから船で行くよりスウェーデンからのほうが近い。幾度か車を乗り継いで降ろされたところは辺り一面、丘と野原でしかない。


「ここは何もないな」と独り言を言って親指を立ててヒッチハイクを続けていると二人の白い服を着た若い女性が突然、視界に飛び込む。「天から舞い降りてきたのかな」と彼は首を傾げるが、道路脇でヒッチハイクをする髪の毛の長い、あごひげの生えたアジア人を見て珍しいのか、少しずつ近づいて来る。近隣に住んでいると思われるこの友だち風の二人は数十分ごとに一台通るか通らない道で、うまくヒッチハイクが出来ない信太に心を痛めたのかも知れない。言葉こそ交わさないが、やっと車が彼を拾ってくれて心で「さようなら」と言って手を振ると彼女らも大きく手を振って応えてくれた。


 港町には夜遅く着いたので、デンマーク行きの最終便はもう出発したあとだった。今日のヒッチハイクが順調で嬉しかったので、一晩、波止場のどこか一角で夜を過ごしても苦にはならない。ここは町というより小村で、人にものを尋ねれば優しく親切に教えてくれる。寝袋に入り安堵して深い眠りに落ちるのだった。


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