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忘却の彼方への旅  作者: JunJohnjean
第12章 大海原
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エンリケ航海王子 ― リスボン




 リスボンの中世の佇まいを残すところでは小さな丘に古い家屋がひしめき合い、石畳は勾配の急な坂道だ。港町なので信太は平地だろうと思っていたのだが、これは全く根拠のない先入観であった。後年、信太はアメリカのサンフランシスコを訪れるのだが、この町でも中心街と思われるところでは坂道に建てられた多くの家屋がある。郊外はというと平地が多く見られ、たくさんの低層オフィスビルや小規模の工場がある。サンフランシスコとリスボンを比較するのは滑稽かも知れないが、信太はサンフランシスコを見てリスボンの港町を思い出し懐かしさが込み上げてきたのだ。それはともかく、ポルトガルと言えば、日本人にはお馴染みのポルトガル人が種子島に持ち込んだという鉄砲(火縄銃)がある。この時、初めて日本人が西洋人に接触した。この西洋人というのがポルトガル人で、1543年のことである。日本は室町時代でいわゆる、戦国の世であった。


 又、ポルトガルで思い出されるのはエンリケ航海王子の事績である。この王子はジブラルタル海峡を渡ってすぐのところ、北アフリカにあるセウタの町に乗り込んで攻略した。そこで暫く滞在するに及んで、セウタの商人たちやサハラ砂漠のキャラバン隊から貴重な情報を得るに至る。イスラム商人が金や香辛料などに高額な中間マージンを乗せていることに驚き、彼はいかにこれら商人を介さないで直接、交易品を手に入れることができるかを思案する。更に、アフリカ西海岸の地理的特徴を学んだことが、後日、陸地沿いに大西洋を南下するという航海事業を推し進めるきっかけとなる。


 当時、カナリア諸島の南、約240キロ先のボジャドール岬のその向こうは海が滝のようになっていてそこから船もろとも流れ落ちると信じられていた。エンリケ航海王子や一部の知識人は地球は丸いと確信にも似たものがあったが、当時の船員や一般人は、地球は平たく出来ているものと信じ込んでおり、この迷信を打ち破るのは大変なことだった。今では地球は丸いと常識にもなっているが、実はこの岬から風向きが変わって逆風となることから、船乗りは世界の果てに達したと思い、滝つぼに落ちると恐怖に慄いていたのである。


 しかし、この王子は「岬を越えよ」と派遣の探検隊を叱咤激励したわけであるが、それを達成したのはセウタ攻略から19年後であった。一つ、彼には大きな弱みがあった。それは船酔いが酷く、遠洋航海は全くお手上げということだったが、指導者としての魅力が具わっていたのか、船乗りは次々と未知の世界に挑戦してゆく。


 又、この王子は探究熱心であった。つまり、学究肌であり、後日、数学、天文学、地理、博物学などの学者はもちろん、地図、造船、航海術などの探検に必要な専門技術者たちを国籍、人種、主義主張を問わず招き寄せた。彼の元でこれら科学技術は発達し長期の航海が可能となる。その上、スポンサーとして探検航海に出資を厭わなかったことが大航海時代の幕引きとなった。


 昨今、宇宙の発見には目を見張るものがある。これら発見は先の大航海時代に類似していないだろうか。1977年にケープカナベラル空軍基地から打ち上げられた無人宇宙探査機ボイジャー1号は今や太陽系を脱出したが、それまでに幾多の新しいデータを地球に送信して来ており、2025年頃までは地球との通信を維持するのに十分だと言われている。同年に発射された姉妹機であるボイジャー2号も間もなく太陽系を脱出するであろうが、2030年頃まで交信は可能であろうと言われている。これら二機は現在、どこへ行き着くともなく、ただひたすらに真っ直ぐ孤独の旅を続けているのだ。


挿絵(By みてみん)

エンリケ航海王子 ― 発見のモニュメント


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