リスボン ー ポルトガル
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ヨーロッパ大陸から船でアフリカ大陸へ足を伸ばしたように今度は、アフリカ大陸西岸沖のカナリア諸島から、ヨーロッパ大陸西端のリスボンへと向かう。
ラスパルマスから大西洋を一路北上。カナリア諸島を後にすると右手にアフリカ大陸が横たわり、左手にはポルトガル領のマデイラ諸島であろうか、島影が見える。この日は風が強く吹いているでもなく空は澄み切っており穏やかな大海原と言えよう。この海域は十五世紀から十六世紀にかけて世界史に登場するインド航路を開拓したバスコ・ダ・ガマや世界一周を成し遂げたマゼランが行き来したところで、信太も同じところを航海しているのだと思うと感動を覚えた。
乗船客用に上甲板が大きく取られているので暖かい日差しを堪能している旅行者がそこここに見られる。その中にカップルがいて、女性がアジア人である。モロッコでもスペイン領サハラでも、ラスパルマスを除いてアジア人を見かけることはなかったが、彼女は中国人ではなく日本人と直感して、お互い顔を見合わせた時に信太は話しかける。
「日本の方ですか?」
「はい、そうです。」
「珍しいですね、こんなところで日本人の旅行者に会うなんて。」
先方も驚いた様子で話が自然と弾む。この日本女性の恋人か主人か、取り残されたように少し離れたところで二人が話しているのをちらちらと見遣るが、遠慮しているのか、近づこうとしない。
「あちらの方が貴女を待っているようですよ。」と気を利かして一言すると、思い出したように信太に素早く一礼して彼の元に戻って行く。
暫くして、一人の西欧人が信太に話しかけてきた。会話をしているうちに彼はイギリス人であると分かる。年の頃は信太と十歳以上離れているようで、三十代前半だと思われる。その時代の日本人の感覚からすると彼の歳で一人旅、又、独身であるというのは吃驚だが、接し方に角がないと言うのか、紳士的な物腰なので徐々に打ち解ける。
イギリス人と言えば、信太はイギリスとその植民地・海外領土などの総称である大英帝国を思い出す。大英帝国と言うと古めかしい呼称だが、イギリス帝国とも呼ばれる。結局、リスボンに着いてその後、このイギリス人と一週間ホテルで宿泊するが、先のドイツ人とモロッコで部屋を分け合ったように一室を二人で借りる。これは双方にとって安上がりなのだ。
リスボンと大西洋を眺望




