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忘却の彼方への旅  作者: JunJohnjean
第7章 新たなる旅立ち
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イフ島 ー フランス




 朝早く信太は目が覚め、ガイドブックを見るとマルセイユにこれといった観光スポットがないのに気付いた。昨日、ヒッチハイクの車から見たイフ島をもっと間近で見ようと、宿泊の場所からさほど遠くない港まで歩いて行く。冬の一月なのに地中海性気候と言うのだろうか、陽光の下では暖かく心地よい。海岸に出ると視界は昨日より良好で、二、三キロ沖合いの島の上にはっきりと城が見える。城と言っても要塞だ。石積みの堤防に腰を掛けて海原を見つめていると信太はモンテ・クリスト伯と名乗る以前の青年エドモン・ダンテスが記憶に蘇ってくる。囚人の中にはこの青年のように身に覚えのない罪で貶められた人もいるだろう。又、政治・思想犯も多くいるかも知れない。信太はこの時、この地球には多くの亡命者、逃亡者、追放された者、避難民、犯罪者といったあらゆる階層の人が生を受けているのではないかという考えが脳裏をよぎる。この直感めいた考えはもしかすると彼の生まれる前と言っていい、遠い過去の記憶に起因しているかも知れない。


 信太はスペインのマラガまで行く切符を購入するために、昨夕足を運んだ丘の上にある鉄道駅に向かう。途中、公園で数人の壮年が玉ころがしと言うのか、遊びに興じているのが目に留まる。近づいて観察すると最初にゴムでできたような小さな玉を転がし、その後、大きな金属製の玉をその小さな玉に近づけようと慎重に放り投げている。なんという単純な遊びであろうかと彼は呆れるが、よく考えてみるとパチンコも玉を穴に入れるだけの簡単なものだ。フランス人はこの遊びをペタンクと呼んでいるが、単純なものほど大衆性があるのだろうか。


 切符売り場まで来てマラガと言うと、直通はなくフィゲラスで乗り換えなければならないと言われる。フィゲラスは思い出深い町であり散歩をしようと思っていたが、乗り継ぎの電車との間に時間がないので再訪を諦めマラガに直行して到着。人口は四十万(当時)で、わりあい大きな町である。


 ピカソの出身地としても知られている。スイスで和とピカソの話題が上った時、「ピカソの絵は子供でも描けそうだね」と信太が感想を伝えると、「彼の絵は二、三十年、進んでいるのは間違いない」と和が自信をもって述べたのが昨日のように思い出される。


 スペインの最南端にあるタリファ岬に行くには途中のアルへシラスでバスを乗り換えなければならないが、バスの引継ぎがスムーズで瞬く間にタリファの町に着く。なぜこの町を選んだかというとヨーロッパの中で最もアフリカ大陸に近いところだし、船賃が一番安いのではないかと考えたからだ。ここからモロッコのタンジェまでフェリーが運航しているが、出航にはまだ時間がある。


 埠頭の先端まで歩いて行って前方を望むと大きな陸地が横たわっているのが見える。右手には荒波が目立つ大西洋。左手には波の静かな地中海。いよいよジブラルタル海峡を越えてアフリカ大陸に足を踏み入れるのだ。そう思うと信太の心は高鳴り、不安は掻き消され、期待に胸を膨らませるのだった。


挿絵(By みてみん)

イフ島に築かれた要塞、その後、牢獄

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― 新着の感想 ―
[一言] 城って、堅牢な作りになっていたりするので、後に牢獄に転用されたりすることも多かったのかもしれませんね。 確か、ロンドン塔も、最初は王宮だったはずですよね。
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