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忘却の彼方への旅  作者: JunJohnjean
第5章 ベーダ星
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テレパシー




 シュッヘが働いているところは科学機器配給センターである。シュッヘの専門分野は立体浮遊映像であるが、彼は配給、据付、及び、デモストレーションも行っている。


 今日はタッジを含め、数十名の出席者を前にしてシュッヘは一個のこぶし大の金属球を取り出して部屋の中央にあるテーブルの上におく。指で数箇所、金属球を押すと、一箇所のところが開いて、最後に一押しするとレーザーが噴出し、空中に色とりどりの映像が浮かび上がる。今後、移住民にベーダ星の食物・衣服の配給・調達のシステム、地表の居住地、教育システム、医療施設を知ってもらうために必要な知識を提供し、加えて、大変実用的なもので出来栄えは上々である。


 見終わり次第、シュッヘは襟を正して出席者の感想を問う。

「映像はいかがでしたでしょうか?」

「きわめて明瞭。」という返事がテレパシーによって一斉に、シュッヘに返ってきた。

 彼は言葉を継ぐ。

「私ども科学機器配給センターは、翻訳機器を移民面接委員会に提供しましたが、現在、論理的な言葉遣いのみ同時通訳は可能です。ご覧になられた浮遊映像はベーダ星に住居を構えるエルク星人に、より一層私ども社会の基本原則の理解を促すと思われます。非論理的な言語は異星間文明研究機関の研究結果を待ち望むところです。」


 そこで研究機関の責任者が出席者の前に足を運び、説明する。

「非論理的言語は、現在、二つの壁がある。一つは、先人がエルク星を訪問した当時の報告、資料が旧くなったこと。二つ目は、エルク星人の感情は我らの古典文学を紐解いて初めて似通った表現を見つけることができる。つまり、古典文学には感情や情念が豊富に表現されている。我らは長い間、理性的・理論的・論理的思考に慣れ、数多くの感情表現を失った嫌いがある。従って、それら表現に疎くなっている。」


 事実、ベーダ星人がテレパシーを獲得したのは、彼らの脳科学の発達のお陰である。それ以前は、文学が高度な発達を遂げていた。しかし、テレパシーを使用するようになって文学は影を潜めてしまったのだ。


 教育長が登壇して立脚点を明示し諸点の注意喚起を促す。

「なぜ我らは移住民を受け入れるかというと、ベーダ星は人口の過疎化もあるが、多種多様な異質の文化を吸収・摂取することによって文明は発達するという考えに基づく。しかし、それには万全な下準備が必要だ。そうでないと文明の衝突や文明間の対立もあると考えられるので、彼らの非論理的思考、感情表現の理解、及び、発言を注視してもらいたい。」


 最後に、教師への要望を一言、付け加える。

「エルク星人への道徳教育については、教師自ら、模範を垂れることを願う。」と。


挿絵(By みてみん)

テレパシー

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