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忘却の彼方への旅  作者: JunJohnjean
第4章 タッジとシュッヘ
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少年時代



4(1)


 他惑星からの移住者が教育施設を営むことは、この惑星ではよく見られることである。タッジが幼児期に学んだ小さな施設も、移住民が高い理想を掲げて設立した学習機関である。情操教育に一種独特の気風があって、音楽、美術はもちろん、演劇にも力を入れている。又、体育も重要視している。しかし、タッジがこの施設に学ぶのは偶然で、彼の居住地に近いので通学には便利という単純な理由である。


 施設ではこの惑星の伝統の音楽のみではなく多種多様な音楽を取り入れ、とりわけ美的歌謡が選ばれた。歌詞もじっくり聴けるようにとテンポの遅いもので、想像力を目覚めさせるものだ。歌唱力に欠ける幼児もいるので、楽器を手に握らせて音楽を感得させることもある。演劇は各々の感受性を高めるのによい。簡単なダンスを取り入れ、ミュージカル風にアレンジされたものも数多くある。又、幾つかの種類のシーソーが設置されている。これは宇宙旅行者が重力の小さい星に降り立つ場合、脚力強化の必要性があり、歩く感覚をマスターさせるためである。


 授業の時、隣の席に座ったクラスメートがデッサンが得意で、タッジは彼の描くデッサンに見惚れてしまう。こうしてタッジは自分よりもうまい人なら、どんな領域でも尊崇の念を禁じ得なかった。


 少年になってもタッジは長い間、他者と自分の区別が付かなかった。従って「腕白小僧」「やんちゃな子」「いたずらっ子」というあだ名をほしいままにしていた。しかし、転機というのは遅かれ早かれ、やってくるものだ。


 この世の中、上には上があるものである。自分よりも腕っ節の強いものが目の前に現れることで、タッジは初めて他人と自分を区別する。しかし、腕っ節の強いものは学力がタッジより優れているわけではない。その後、しばらくして学力があって、運動能力もあるクラスメートと出会う。タッジは彼の知的能力を尊敬し、このクラスメートはタッジの運動能力を評価して彼らは急速に接近するのである。


 又、少年期にいい担任の先生に出会ったというのも、タッジには幸運であった。

 ある日、先生はクラスで、

「君らの家を訪問する。」と言い出す。

 みんなは驚きの顔で見合わせる。

「ご両親に会って、いろいろ喋りたいことがある。」


 生徒の顔は一瞬、曇る。各人、顔がそれぞれ違うように学力もまちまちである。きっと、それを言われるに違いないと思う。

「君らもよく知っているように誰にでも長所と短所がある。両親というのは、君らの近くにいつもいるため子供の短所ばっかしが目に付く。でだ、私はご両親にこの子はいい性格がある。伸ばして下さいと頼みに行こうと思っているんだよ。」

 彼らはほっとした顔つきになる。

「又、この学習機関は学力を優先させているわけではない。つまり、人作りが目的なんだけども、そのためにもご両親と会って話して、君らの才能を発見し伸ばして行くつもりだ。」

 歓声がクラスに響く。

「見たいのは君らの勉強机もだ。」と先生は強調する。

「机はただ、勉強のためにだけにあるものじゃないだろう。日記を付けたり、趣味でもあればその机を利用する場合だってたくさんある。とても身近なものだから私はそれを見ておきたいんだよ。」

 その時「僕の机は落書きばかりでどうしよう」であるとか「部屋は乱雑をきわめているので見せられたものではない」と思った生徒がいるに違いない。


 後日、この先生がタッジの家を訪問するが、彼の両親と先生、三人が暫くの間、懇談し、彼は大人しく部屋で待っている。

「先生のところにおいでなさい。」と母が来て言う。タッジが母親と連れ立って父親と先生の元に行く。

「じゃ、タッジ君、君の勉強部屋をちょっと見たいんだが、お許し願えるかな。」と先生は言って、連れ立って部屋に向かう。


 先生は彼の部屋の壁にあるベガ系図の前で立ち止まって、

「タッジ君は大きな夢でも抱いてるのかな?」と尋ねる。

「いえ、ただ、このものが好きなだけです。」とタッジ。

 彼は担任の先生を自分の部屋に案内できたというだけで、誇りにも似た気持ちに包まれるのだった。


 しかしながら、父兄はなぜ生徒の家庭を訪問をするのだろうと腑に落ちない。だが、この先生は「父兄と先生が会って各家庭は教師を身近に感じるし、先生は生徒の部屋を見て生徒の趣味や性格がもっと分かる。」と家族に明言するのであった。


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