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07 続 ユーリ攻略とその後のアゼリア視点

♢♢♢ユーリ攻略♢♢♢




「ふふふ、あなたとこうして秘密で会っていると、まるで逢引きしているみたい」

といって金髪の可憐な少女リリアが微笑む。


「逢引きではないの? それとも僕とどうどうと学園のカフェで食事ができる?」


 二人は今学園の敷地にある大きな庭の木陰で、サンドウィッチを食べている。


「私は別に構わないわ。それではユーリ様がお困りでしょう?」

「僕は別に構わないよ。だが、君が兄上に叱られてしまう」

と美しい第二王子ユーリが悲し気に眉尻を下げる。


「まあ、ユーリ様はお優しいのね」


「残念だ。兄上が、アゼリア嬢との婚約を破棄しなければ、君と僕が結ばれたかもしれないのに」


 ユーリは夢うつつのぼうっとした状態で、リリアに愛の言葉を紡ぐ。


「それならば、私をローガン様から奪ってください」

 

 リリアが熱っぽい瞳で彼を見つめる。


「それは出来ない。兄上が許さないだろう。きっと僕ばかりではなく、君も傷つけられる。リリアが傷つくことに耐えられないんだ」


「ユーリ様、なんてお優しいの。お慕いしております。あなたの孤独は私が必ず埋めるから。もう少し待っていてください」


 そう言ってリリアはユーリに抱きついた。




 ――おかしい。なにかとても大切なことを忘れているようだ。思い出そうとすると頭が割れるように痛む。苦しい……。




♢♢♢アゼリア♢♢♢



 今日もユーリは食堂に来なかった。


 毎日彼と一緒にとっていたランチが三日に一度になり、週に一度になり、二週間が過ぎ……。

 

 ユーリはアゼリアの前に現われなくなった。


 もうすぐ彼との約束の一年になる。


 アゼリアはポツリと一人で食事をする。来ない人を待ちながら。


「なんだ。みじめなものだな」


 そういって、断りもせずアゼリアの横にどかりと座るのは第一王子のローガン。


「ローガン殿下こそ、どうなさったのですか? 最近リリア様といらっしゃるところをお見掛けしませんが」


 当てこすりをいうアゼリアに、ローガンが苦虫を噛み潰したような顔をする。


「リリアは、あまり勉強が得意でない。だから、先生に呼ばれている。お妃教育なんて多分無理だ。

 俺はリリアが無理していないか心配だよ」


 ローガンは気付いていないのだ。


 アゼリアは何度かリリアとユーリが学園の庭の茂みに消えて行くのを目撃している。


 リリアは上手くやっている。ローガンの目に入らないように、だがアゼリアの視界には入るように。


 気性の激しいローガンには誰もリリアの浮気を知らせない。下手をすれば自分の首が飛ぶかもしれないからだ。


「そうですか……」

 アゼリアはおざなりに返事する。


「で、ユーリには飽きられたのか? 捨てられたのか?」


 相変わらず苛烈だ。彼の言葉は容赦がない。


「ユーリ様はそういう方ではございません」


 アゼリアは機械的に口にする。怒りよりも、悲しみと諦めが心を支配していた。


 ここまでくると自分に原因があるような気がしてくる。


(私は、なぜリリアに懸想するユーリ殿下と婚約を解消しないのかしら)


「ユーリみたいな後ろ盾のない奴になめられてどうする。お前はコーリング家の令嬢だろ? 袖にしてやれよ。あんな奴」


 気安く言ってくれる。


「二回も婚約が白紙になったら、私の行先は修道院しかありません」

「俺が貰ってやるよ」

 ローガンの言葉に驚いた。


「まさか? 妾になれと?」


 ユーリに捨てられて、弱気になってはいるが、さすがにローガンの妾になるなど考えられない。思わずローガンを睨んでしまう。

 

 するとローガンが渋い顔をした。


「まったくお前はきついな。

 リリアは伯爵家の養女だ。元は平民だから、王妃はお前で妾はリリアでどうだ?」

「は? え? ちょっと待ってください。リリア様が平民って」


 情報が多くて混乱する。するとローガンが楽しそうに笑う。


「これは秘密だ。王妃が元平民だなんてこの国ではありえないからね。リリアが隠したがっている。それに俺とリリアの仲は未だ父母に反対されている。


 あいつ可愛いんだけれど馬鹿でさ。俺もなんであんなの選ぶのかと言われて王宮内で肩身が狭いわけさ。

 だからと言って候補に挙がっている公爵令嬢のマリエルはいやだ。

 アゼリアより器量が悪いから問題外だ」


 ローガンはリリアと弟に裏切られていると知ったらどうなるのだろう。激しい人だ。二人とも殺されかねない。


「面白い冗談ですね」


 ローガンの話は切り捨てた。彼と復縁など考えられない。

 彼への愛は消えたから、愛人がいても割り切れる。だが、何よりローガンは冷酷すぎて危険だ。


「お前、そういうところが可愛くないんだよ」


 別に今更彼に可愛いと思われなくても構わない。


「そうですね。私は可愛げがありませんので、リリア様とお幸せに。これから授業があるので失礼します」


 そういって、アゼリアは席を立った。




 ユーリは完全にリリアに靡いてしまった。

 学園で声をかけても慇懃無礼に対応されるだけだ。まるでアゼリアと婚約していることなど忘れたかのように。


 何とか話をしようとしたがどうにもならなかった。


 もうそれが一か月以上続いている。


 本当はもっと早く決断しなければならなかったのにぐずぐずとして……。


(気のせいだと、彼が戻ってくると期待していた。人を愛することの怖さと辛さを知っているのに。私は愚かな人間だ)



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