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12 異変

 しかし、学園の卒業まで余すところ三ケ月になった頃、異変は起きた。


 ある日突然アゼリアは一人ぼっちになったのだ。


 周りの好感度は一気に下がり、皆マイナスの数値を示し、アゼリアは冷たい視線にさらされた。


 何が何だかさっぱりわからない。

 マイナス30以下のものも数人存在し、このままで殺されてしまうかも知れない。

 学園へ通う間にも彼らの好感度はぐんぐん下がって行く。


 行くのが恐ろしくなってきた。


 そんな時、マハに別棟に呼び出された。


 またゲームの世界の話を聞かされるのかとアゼリアは少々うんざりする。

 だが、アゼリアを取り巻く今の状況は最悪だ。


 一度は断ろうとしたが、思い直しマハの話を聞くことにした。何か有益な話をできればよいのだが……。

 またゲームの話をされて混乱するかもしれないと少し憂鬱な気持ちを抱え、夜の侯爵邸の庭を歩き、マハの住む別棟へ向かった。


 中に入るとすっかり面やつれしたマハがいた。


「マハ、随分やつれているようだけれどどうしたの?」


 さすがにこれには驚いた。少し心配になる。


「それはあなたも同じじゃない。眠れていないの? いまお茶を入れるから」


 いつも元気なマハが力なく言う。

 人払いのされたマハの部屋で二人は向かい合って静かにお茶を飲んだ。


 最近心労が多いせいかアゼリアは急に眠気をもよおした。


「それで用事は何なの?」


 用件を促した。そうしないと話を聞く前に眠ってしまいそうなくらい瞼が重い。


「アゼリア、ごめん。彼、バグっているのよ……」


 マハが震える声で言う。


 

 ちかちかと血のように赤い文字が瞬く



 バッドエンド

 




 アゼリアは目の前が徐々に霞んで暗くなり、やがて意識はブラックアウトした。



 ああ、薬を盛られたのね……。


 




♢♢♢





 目が覚めるとアゼリアは馬車に揺られていた。


「え……」


 目の前に青白い顔をしたユーリがいる。アゼリアは呆然とした。


「これは、いったい? どういうこと?」


 マハの部屋に呼ばれて薬を盛られたことを思いだす。

 ユーリがおもむろに口を開いた。


「イーリア王国との国境は抜けた。今馬車は隣国のティモナ王国に入ったところだ」


 アゼリアは驚きに目を見張る。


「え?」

「済まないね。僕が君を攫ったんだ。マハに手伝わせてね」


 頭が混乱する。マハもユーリも酷いと思った。


「なぜ、そのような卑怯な真似をなさったのですか!」


 体を動かした拍子にじゃらりと音がした。手首に冷たい感触。鈍色の手枷。アゼリアは馬車の中で鉄枷に繋がれた。

 鎖の先をたどるとそこにはユーリが……彼にも同じ手枷がついている。


「悪いが、自由を拘束させてもらうよ。逃げられたら困るからね」

「嘘、嘘よ。信じられない。なんでこのようなことを……」


 アゼリアは目の前が真っ暗になるような絶望と恐怖を感じた。


「ヒロインと結ばれなかったユーリは危険なの」というマハの言葉を思い出す。まさかマハは彼に脅された?


「ユーリ殿下は私をどうするつもりなのです」

 アゼリアはそれでも気丈に振舞った。


「しばらくこの国で君といっしょに暮らすつもりだ」

「こんなことが許されるとお思いですか! 父が黙っていませんよ」

 父はきっと激怒するだろう。


「そうだね。許されないだろうね。だが、どうにかする。君の御父上に心配はかけない」


 アゼリアはそれ以上の会話を諦めた。

 

 彼はおかしくなってしまったのだろうか?


 

 しかし、詳しく説明をされることなく、アゼリアとユーリをのせた馬車は人里離れた大きな屋敷に到着した。


 以降アゼリアは屋敷に幽閉される。





 これがバッドエンド……。









明日以降一日一回午後 更新予定です。全十九話。


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