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愉悦とガチャ

お待たせしました

 地面に落ちている石を拾い上げ、例の男目掛けて投げつける。

 結果、無反応。ピクリとも動かないから、確実に死んでいると思う。


「鑑定は……不明か。なんか、釈然としねえな」

 こいつは俺と同じ匂いがする。多分、人殺しを生業とする同業者だ。


「主、鑑定妨害のマジックアイテムを持っているのではないのでしょうか?」

 セットが疑問を投げかけてくる。こいつがただの魔法使いなら問題ない。

 しかし、こいつはナイル君の従者だ。ある意味既に身バレしている。今さら何を隠すんだ?


「こいつは俺の同業者だと思う。そんな奴が高価なマジックアイテムを持ったまま、無謀な戦いを挑む事自体おかしいんだよ」

 ここはマルグリット領だ。そこでマリーの乗っている馬車に襲撃を仕掛けたら、死刑は免れない。


「殺されたら、マジックアイテムを奪われてしまいますもんね」

 俺の同業者なら、高価なマジックアイテムなら事前に仲間へ譲り渡す筈。死人が貴重な物を持っていても無意味だ。でも、仲間に渡せば依頼の達成確率があがる。


「ここで考えても仕方ないか……なんか持っていれば良いんだけどな」

 男の死体に近付き、衣類を斬りさく。魔法使いの割りに鍛えられた肉体……どう考えてもただの従者じゃない。

 男の持ち物で怪しいのは、不自然なまでに目立つのは金色のペンダント。真紅の魔石が付いており、一目で高価な物だと分かる。


「主、なにをするんですか?服を斬りさくなんて……まさか、危ない性癖なんて持っていませんよね?」

 セットが身じろぎする。見た目はナナフシだけど、精神は十代の少年だ。性的な事に興味があり、胡散臭い情報を信じているんだろう。


「そんな物持ってねーよ。こういう奴は、服に毒針とかを仕込む事があるんだ……なんだ、こりゃ?」

 男の身体には奇妙な模様があった。入れ墨にも見えるが、これは焼き印だ。

 焼き印にしぼって鑑定してみるが、やはり不明。とりあえずスマホで撮影しておく。


「……主!火の魔力が濃くなっています!」

 同業者が持っていた赤色の魔石、そして火の魔力……セットが臆病で助かった。

 肩に乗っていたセットを掴んで、男の死体から離れた。魔力を足に集中させて、全速力で逃げる。そして横っ飛びで森に逃げ込む。

 次の瞬間、耳をつんざく様な爆音が森に響いた……魔操法を使えなかったら、確実に死んでいたと思う。


「装備者が死んだら自動で爆発するマジックアイテムか……良いね」

 死の危険に晒されたというに、愉悦が抑えられない。腹の底から笑いがこみ上げてくる。やっぱり、俺は忍びだ。


「あ、主、恐怖でおかしくなったのですか?」

 セットが心配そうに聞いてくる。残念ながら、俺は元からおかしいのだ。


「嬉しいんだよ。この世界にも、俺と同じ人間がいるって分かってな……こりゃ、退屈しないで済みそうだ」

 暗く醜い感情が首をもたげてくる。こうでなきゃ、張り合いがないんだ。一方的な忍び働きばっかりじゃ、面白くない。そう、これが俺の生きる世界だ。俺はなんとも言えない満足感に包まれていた。


「ジン様、爆音が聞こえましたが、なにがあったのですか?」

 馬車の進行方向に歩いて行くと、ジニーさんが駆け寄ってきた。恐らく安全を確認してから、近付いてきたのだろう……それとマリーちゃん、毎回お兄たまを睨むのは止めませんか?可愛い顏が台無しだよ。


「自爆ですよ。例の男が持っていたマジックアイテムが爆発した様です。証拠になりそうな物は、魔石の欠片位ですね」

 かなり威力があった様で、米粒程度の物しか見つけられなかった。まあ、証拠を残さない為の爆発ですし。


「ナルシス家の従者が、自爆のマジックアイテムを持っていたのですか?法律で禁止されているんですよ」

 ジニーさんは愕然としているが、裏社会の人間は法律なんて守らないですよ。


「まずはワイルドシープをシャリル様の元へ届けましょう。詮索や考察は後からでも、出来ますし……マリー、腕痛いんだけど」

 マリーが俺の手をがっちりと掴んで離さないのだ。


「やだ。きちんと捕まえておかないと、兄貴は直ぐに危ない事に首を突っ込むんだもん」

 いや、それが商売ですし。もっとやばい目に合って来たから大丈夫……なんて言えないか。

 そのまま馬車まで連行され、城に着くまで拘束されていました。


 ◇

 パソコンとプリンターが欲しいです。ワイルドシープの討伐に、追跡者の自爆……報告書が何枚必要になるんだろ。


「アイさん、この焼き印が、なんだか分かりますか?」

 俺は魔法の知識が皆無だ。でも、報告書に考察を書かなきゃいけない。アイさんにスマホで撮った焼き印を見てもらう。

 ちなみにちなみにスマホは忍び専用のマジックアイテムだと、適当な嘘をついてます。



「随分と綺麗な絵ですね……この焼き印は間違いなく、ナルシス家の従者についていたのですか?」

 写メを見せた途端、アイさんの顔色が変わった。やっぱり、スマホをマジックアイテムだと誤魔化すのは無理があったか。


「ええ、鑑定は出来ませんでしたが、間違いなくナイル・ナルシスが連れていた男です」

 あの男はナイル君の護衛だったんだろうか?でも、護衛が御禁制のマジックアイテムは持たないよな。


「今すぐシャリル様に報告へ行きましょう。これは鑑定妨害の紋様です」

 アイさんの話によると、紋様を焼き印化させた物らしい。当然、人に焼き印をつけるのは法律違反だそうだ。

 焼き印を押した人だけでなく、作った職人まで罰せられるらしい。そして焼き印を作れるのはスキルを持った職人だけ。逆に言えば焼き印職人は、他の仕事に就くのは困難。

 そんな危険を冒してまで、請け負う職人なんているのか?


 ◇

 報告書が出来ていないので、口頭での報告となった。でも、書類は出さないといけないそうだ。

 そして蜂の巣をつついたような、大騒ぎとなった。


「ジン、ご苦労様。そしてワイルドシープからも焼き印が見つかったよ。空腹化の紋様らしい」

 シャリル様が溜め息混じりに、とんでもない事実を告げてきた。

 元々は短期間で家畜を肥育させる為の物らしい。

 ふと酒場での会話が蘇ってくる。

 〝職人風の男の話によると“外国から来た客が俺にしか出来ないって仕事だって、破格の依頼料を提示された。難しい仕事だけど、俺のスキルがあれば余裕さ”と自慢げに語っていた。

 店員にチップを渡して確認してみると、その男は家畜用の焼き印を作る職人らしい〟

 そういう事か。


「つまり、ワイルドシープ騒動その物が、誰かによって仕組まれた可能性が高いって事ですか」

 だから、あの男はワイルドシープを狙っていたのか。証拠やきいんを隠滅させるつもりだったと。

 そして馬車ごとワイルドシープを爆発させるつもりだったんだ。


 ◇

 今回手にいれた魔石はオークの魔石、ワイルドシープの魔石……そして赤い魔石の欠片。取り込んでみるとガチャ十回分だった。


(頼む。槍来てくれ!)

 この辺で点数稼ぎしておかないと、お兄たまの面子が立たない。

 祈りをこめてボタンを押す。


 SSR 雷神槍 佐助の足袋・異空間アパート一部屋 

 SR 仕込み杖・俸禄玉・お菓子詰め合わせ

 R カップ麺詰め合わせ

 N 稲藁 竹竿 かんしゃく玉


 ……凄い。SSRが三つも来た。速攻、槍以外を鑑定してみる。まずは佐助の足袋だ。猿飛佐助なんて憧れでしかない。


 鑑定結果 佐助の足袋・伝説の棟梁鬼瓦佐助が使ったという足袋です。どんな小さな足場でも滑る事がありません。 バッドステイタス 水虫 注)猿飛佐助は創作上の人物ですよ。

 ……佐助違いかよ。しかも、変なバッドステイタスまでついていやがる。

 気を取り直して、異空間アパート一部屋を鑑定だ。


 鑑定結果 異空間アパート一部屋・異世界に住んでいた忍者森野仁の部屋を再現しました。やらしい本も、寸分たがわず再現しています 注)異世界アパートの鍵が必要になります。

 結果、槍以外は使えないと。

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