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忍びでも勝てない相手

 泣く子と地頭には勝てぬ……その言葉を実感しています。マリーは泣きながら、俺の袖をがっちりと掴んで離さない。

(そう言えば、昔もこうやって俺の袖を掴んでいたよな)

 記憶の蓋が開いた所為なのか、徐々に昔の男の思い出が蘇ってきている。忍び時代はもっと苛烈な経験をしているので、思い出しても平気だと脳が判断したのだろう。

(おっさんだから平気だけど、忍びに戻ってなかったらマリーを責めていたかもな)

 まあ、その前に忍びに戻っていなかったら、オーガに食われていたんだけど。

 ……でも、これからどうしよう。この状況で腕を振りほどいたら、状況は確実に悪化する。


 対策一・マリー、俺も会いたかったんだよ……セシリアさんに言われるまで気付かなかったので、これはアウトだ。

 対策二・お菓子チョコレートで誤魔化す。入手先を明かせないし、槍問題をクリアしないと駄目だ。これもアウトと。

 万策尽きた……それとなくセシリアさんに助けを求めてみるが、頭を横に振られた。自分でなんとかしろって、事ですか?

 俺はアブフェル家に仕える事になった忍びなんですよ。大事にしてあげましょう。

 ちなみにセットは俺の頭の上で、ずっとおろおろしている。

 そしてスマホって、こんな時に限ってなるんですよね。もう片方の手で取り出してみると“インスタントラーメンガチャ&高レベル武器ガチャ開催のお知らせ”と表示された。

 ……どこかで見ているじゃないだろうな?ありがたいけど、インスタントラーメンは捨て難い。しかし、現状を打破するには、これしかないか。


「マリー、ごめんな。お詫びにもっと凄い槍を、お兄ちゃんが手に入れてやる」

 問題は何回ガチャを回せば槍が手に入るかだ。オークの魔石は三十回分の価値があったとか……ないよね。


「……お菓子は?エレナにあげるって言っていた珍しいお菓子は?」

 これは血縁関係効果なのだろうか?マリーは口をとんがらせながら、上目遣いで俺を見ている。

 お兄たま、再会して十分も経たないのに、シスコンになりそうです。


「ここだと、あれだから後でな」

 純真無垢なエレナさんなら誤魔化せるけど、セシリアさんやユリアさんに見つかるのはまずいのだ。

 セシリアパーティーの皆さん、なにがあれなんだか突っ込むのは勘弁して下さい。おじさんは曖昧にして誤魔化すものなんです。


「マリー、お兄さんに会えて良かったですわね。久し振りに“甘えん坊マリー”な会えて懐かしかったですわよ」

 セシリアさんが悪戯っぽい笑顔を浮かべながら、マリーに話し掛ける。


「そ、それは昔の話だよっ!今の僕は騎士なんだから、もう甘えん坊じゃないの……全部、兄貴が悪いんだからね」

 からかわれたと気付いたのか、マリーが顔を真っ赤にしながら否定する。それを見て微笑むエレナさんとユリアさん。パーティーの暖かく優しい雰囲気が伝わって来る。

 同時にシャリル様が心配する訳が分かった。このパーティーは純粋で優し過ぎるのだ。

 本当に悪い奴は、善人や弱者を装って近づいてくる。多分この子達は、それに気づかないだろう。


「ジン、ここにいたのか。ちょっと顔を貸してくれ」

 俺に声を掛けて来たのは、ネーアさんだ。何故かそれまで、笑っていたマリー達の表情が一気に強張った。


「ネーア先生、おはようございます」

 そして全員が大声で挨拶……話を聞いてみたら、ネーアさんは冒険者学校で戦闘を教えているらしい。そして、その教え方はかなり厳しいとの事。


「ああ、おはよう。マリー、お兄さんを借りていくぞ。心配しなくてもジンはどこにも行かない。何しろシャリル様の直属の配下になったんだからな」

 流石のマリーもネーアさんには逆らえないらしく、渋々俺の腕を離した。


「マリー、後からな……ネーアさん、用事ってなんですか?」

 ……ふと思った。俺の扱いって、どうなっているんだろ?シャリル様の直属らしいが、何をすれば良いんだ?住むところも決まってないし。伝令役や会う方法を決めておかないと……美人な大家さんがやっている下宿屋とかないかな。


「ああ、シャリル様からお前を城の鍛冶師の所へ案内する様に言われてな……しかし、今日のマリーは随分と子供っぽかったな……異世界から来たシノビはどう思う?」

 それは俺も思った。とても十四歳とは思えない言動……まるで幼児帰りにでもなった感じだった。


「親父が死んで、何年になるか分かりますか?それとマリーの置かれている状況を教えて下さい」

 マリーがアブフェルに戻ってこれたのは、紋様が高ランクだったからだ。決して身内だからじゃない。


「君のお父さんが亡くなって、もう八年になる。マリーは、その頃から騎士になる為に、頑張っている。髪を短くしたのも、騎士になる為の覚悟だそうだ」

 ……親父、こっちに来て二年で殺されたのか。八年前って事は、マリーはまだ六歳か。


「父性に飢えているのかと。昔は大人しくて甘えん坊な性格でしたので、無理していたんだと思いますよ」

 無理して強くて騎士らしい少女を演じていたが、おにいたまの出現で崩壊したんだろう。


「マリーは“立派な騎士になって、兄貴を迎えに行くのが目標なんです”って言っていたな……ここが城の鍛冶場だ。パーカ殿、連れて来たぞ」

 多分、マリーは母親から俺の話を聞かせれていたんだと思う。父親も亡くしたマリーにとって、俺は気持ちの拠り所だったんだと思う……お兄たま反省してます。

 ネーアさんがドア越しに声を掛ける。俺は鍛冶場に用事なんてないんですが。


「ああ、こいつが例の奴か……手を見せてみろ」

 低く野太い声だ。ドアの向こうから、姿を現したのはドワーフである。髭が濃く背は低めで、筋肉質でがっちりとした身体。なんともテンプレなドワーフだ。

 ドワーフは、俺が手を差し出す前に、強引に手を掴むと大きさや厚さを計りはじめた。


「パーカ・パーバ殿は、国でもトップクラスの腕を持つ鍛冶師だ。今回、お前の手甲を作ってくれる」

 まさかのオーダーメイド!?しかも、トップクラスの鍛冶師となると、絶対に高いだろ……俺はシャリル様の期待に応えられるだろうか?


「手甲には、ミスリルを使う。ただ、これといった革がないんだ」

 ミスリル!?絶対駄目。そんなくそ高い物使われたたら、緊張で動けなくなる。


「いや、鉄とか銅で十分ですよ。俺にはもったいなさ過ぎます」

 豚に真珠なんてレベルじゃない。なにかあったら、切腹じゃすまないだろ。


「お前はシャリル様の命を救った。それの対価だ。これを否定するって事は、シャリル様の命の価値を否定する事になるんだぞ」

 低い声がさらに低くなる。お前の為に作るんじゃない、シャリル様に頼まれたから作るんだって感じだ。


「それだったら、ジンが皮を調達すれば良い……確か農民からワイルドシープが出て困っているとの訴えが届いていた。それを倒してくれば、シャリル様も喜ぶだろう」

 ネーアさん、貴重な情報ありがとうございます。シープって事は羊か。


「あ、主!ワイルドシープはまずいです。出会ったら、虎も逃げるって言われているんですよ」

 虎より強い羊なんているのか?断ろうとしたら、もう話が進んでいるし。これやばくないか。


 ◇

 早速教えてロッキさんで、ワイルドシープを検索してみる。

 ワイルドシープ、森野さんが分かりやすい様に言えばヘラジカクラスの羊です。武器は頑丈な角と強力な蹴りを放つ足。そしてその二つが組み合わさる突進は正にハリケーンミ〇サー。下手したら身体がバラバラになっちゃいますよ。

 後、ゲームじゃないんだから弱点なんてありません。心臓は太い肋骨に守られていますし、頭蓋骨も頑丈です。それとワイルドシープも魔物です。倒せば魔石が手に入りますよ。

 PS・武器ピックアップガチャの一覧も送りますね。


 SSR 武器 槍・雷神槍 剣・大地の剣 杖・暴風の杖 錫杖・ 祈りの杖 アイテム 佐助の足袋・異空間アパート一部屋・謎の占い師写真集

 SR  武器 ミスリルスピア  剣ミスリルソード 杖・仕込み杖   アイテム 俸禄玉 お菓子詰め合わせ 日本酒・ドワーフ殺し


 R 武器 弓・与一のおじさんの弓 忍び刀・半蔵門近くで買った忍び剣  鎖・根暗チェーン ハンマー・弁慶が使ったかも知れない槌 アイテム カップ麺詰め合わせ


 N 稲藁 竹竿 かんしゃく玉

 ……R以降手抜き過ぎないか。

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