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まさかの?

強力なキャラがでます

 俺に突っかかってきている少女の名はセシリア・アブフェル……シャリル様の妹だそうです。

 シャリル様の妹だけあり、かなりの美人である。貴族の娘で金髪碧眼、おまけに縦ロールで高飛車……キャラが濃すぎです。

エレナさんが清楚なカスミ草だとしたら、セシリアさんは豪華なバラだと思う。


「セシリア様、ジンさんは誘拐事件を解決してくれたんですよ」

 エレナさんがセシリアさんをいさめてくれた……マジ、天使です。


「あの程度の事件、私達にも解決出来ました。それなのにお兄様はこんなどこの馬の骨とも分からない男を重用して……皆さんは悔しくないんですか!ユリアさんもそう思いますわよね!?」

 いや、あれは俺が忍びだからなんとかなったのよ。シャリル様の妹であるセシリアさんが出て行ったら、更に面倒な事になっただろう。


「……その人に文句をいったら、アイ先生に怒られる……」

 返事をしたのはくすんだ灰色の髪の少女。名前はユリア・ジプーソ、貴族の娘で魔法使いみたいなローブを着ている。

 アイさんはこの子を教える為に、冒険者学校の講師として雇われたらしい。

 ユリアさんも美少女だが無口で大人しい感じだ。ローブを着ているから分かり辛いが、こちらもエレナさんに負けず劣らずのナイスバディ……こっちも属性盛り沢山です。


「あの……どうしたら納得してくれるんでしょうか?」

 こういう時に反論して丸く収まるのは主人公体質な人だけだ。俺みたいなモブは下手にでて交渉するのが一番である。


「貴方はFランクだと聞きました。そんな低ランクの人間が誘拐犯を捕まえられるとは思ません。私達と勝負して、実力を証明してみなさい!」

 四対一で戦えと?冒険者学校に通っているといえ、相手は女の子だ。本気で攻撃するのはまずい。

そしてセシリアとユリアさんは貴族の令嬢だし、エレナさんも良いとこのお嬢様だ。怪我をさせたら絶対にやばい。

(普通の女の子ならなんとかなる。だけど言動からすると高ランクの紋様の持ち主なんだろうな)

 手加減して戦える相手ではない。鑑定して対策を練るのが一番だけど、初対面の少女を鑑定するのはプライバシー侵害だと思う。鍵付きのブログを覗く様なもんだ。


「セシリア、四対一なんて時間の無駄だよ。僕一人で十分だ」

 むすっとした表情でケンカを売って来たのは、浅黒い肌の少年。軽鎧を着ており、手には槍を持っている。中性的な顔立ちをしており、一見すると女の子にも見える。

 でも髪は短いし声も低いので、男だと思う……僕って言ってるし。


「えっと、そこの彼と試合をすれば良いんですね。日時はそちらにお任せします。俺はシャリル様に報告をしなきゃいけないんで」

 こいつは男だから鑑定しても問題なし……。

鑑定結果 ???・?????? 年:十四歳 種族:猿人 槍使い……これだけかよ。妨害スキルでも持っているのか?

 名前を教えてくれないし、イケメン君(仮)と呼ぶ事にしよう。

とりあえず、おじさんはこれ以上話がこじれる前に逃げます。


 事前に書類で結果を報告しておいたが、証拠を残せない情報もあるので詳しい事は口頭での報告となった。


「モスキー・コクーに奴隷商のコルチカムか……下手に刺激すれば、また以前の様な内乱が起きるな」

 一通り報告をすると、シャリル様は深い溜め息をついた。モスキーの背後にはシャリル様の叔父ヴェレーノがいる。下手に藪をつついたら蛇じゃなくて、ドラゴンが出てきてしまう危険性があるのだ。


「実行犯を逮捕しましたので、当面の間モスキーは大人しくしていると思います……ただ少年も誘拐していた様なので、捜査範囲を広げてみるべきかと」

 誘拐された少年は強制労働をさせられている可能性が高い。重労働な現場を探ってみるべきか。


「まだまだ解決には程遠いか。そうだ、前回の件を含めてジンに褒美をやろう。何か欲しい物はないか?」

 和食と可愛い彼女が欲しいです……言える訳ないか。


「それじゃ頑丈な手甲が欲しいです。手を怪我したらまともに戦えませんので」

 この世界のスキルに対抗するのには、武器を壊すのが一番だ。武器を壊せば逃げる時に攻撃を受けないし。


「分かった。それと頼みがある。セシリアの鼻を折ってもらえないか?妹は高ランクの紋様を持っている所為か、危険な事に首を突っ込みたがる。でも、私が注意しても聞く耳を持たないんだよ」

 なんでもシャリル様は昔冒険者をしていた時期があったそうだ。アイさんとはその時に知り合いになったとの事。

 そしてセシリアさんはダンスより剣の練習を好むらしい。だから冒険者学校に入り、エレナさん達とパーティーを組んで冒険に出ようとしている。


「ヴェレーノに掴まったら、まずいですもんね」

 俺がヴェレーノなら偽の依頼をだして、人気のない場所で拘束する。後はシャリル様と交渉して、何らかの役職に復帰。そこを足掛かりにして、領主の座を狙う。


 試合の申し込みがあったのは次の日だった。武器は自由、気絶かギブアップした方が負けとの事。万が一怪我をしたら、エレナさんが回復してくれるそうだ……頭を打ったら膝枕とかしてくれないかな。


「僕は槍を使う。君は何を使っても良いよ……もっともFランクで使えるスキルがあればの話だけどね」

 ……君の槍、刃引きしてないよね。回復が遅れたら痛いじゃすまないんだよ。

 しかし流石はお城だな。剣、剣、杖、斧等のメジャーな武器だけじゃなく、ハンマーや鞭まで準備してある。


「俺はこれを使わせてもらうよ」

 俺が選んだのは槍……を束ねてあるロープ。先端に石をくくりつければ完成だ。本当は鎖分銅を使いたかったんだけども、無い物は仕方ない。


「ふ、ふざけるな! 僕を馬鹿にしているのか? そんな物でまともに戦える訳ないだろ!」

 ……こっちの世界には鎖分銅とかないのか? ……スキルに頼りきりで武術が発展していないから、メジャーな武器しか発明されていないとか。


「俺は戦闘用のスキルを持っていないんでね……それじゃ始めるぞ」

 イケメン君(仮)は馬鹿にされたと思ったのか、俺を睨んでます……俺、あいつに恨まれる様な事したかな? 凄い突っかかってくるんだけど。


「ジンさん、無理しないで下さい。怪我をしたら直ぐに回復しますので」

 仲間と戦うのに俺の心配をしてくれるなんて……エレナさん、良い娘だ。


「ありがとうございます。この試合が終わったら珍しいお菓子をご馳走しますよ」

 付き合うのは無理でも仲良くなりたい。奇跡の逆転ホームランがあるかも知れないし。


「早く始めるぞ!」

 ……イケメン君(仮)もエレナさんに惚れているんだろうか?


「……気を付けて……その人強いって、アイ先生が言ってた」

 ユリアさんがアドバイスをおくる。ハーレムですか? こんちくしょう。


「ユリア、ありがとう。でも、勝つのは僕だ」

 ガビアはみたいに油断はしないか。イケメン君(仮)は直ぐに槍を構えた。その構えに隙はない。


「覚えておきな! ロープには、こんな使い方もあるんだぜ」

 ロープを頭上で回して勢いをつける。このロープはイケメン君(仮)が使っている槍よりも長い。


「凄いな……まるでロープが意思を持った蛇の様に自在に動いている。あれでは迂闊に近づけないわ……お兄様が認めるだけはあるのね」

 セシリアさん、解説ありがとうございます。このまま槍を絡め取れれば良いんだけども。


「ひ、卑怯だぞ。きちんと戦え!」

 卑怯も忍びの武器なんですが……セシリアさんも認めてくれたし、高ランクの槍を味わってみるか。

 ロープを床に置いて、半身の姿勢をとる。


「ロープを捨てただと……馬鹿にしやがって」

 イケメン君(仮)は激高して、鋭い突きを放ってきた。事前に槍の長さを見ていたからなんとか対処出来たけど、初見なら串刺しになっていたと思う。

(若い癖になんて鋭い突きなんだ……でも、なんで突きしか出さないんだ?)

 剣は突け、槍は斬れって言葉を知らないんだろうか?


「……全部かわしている……」

 ユリアさんは驚いているが種は簡単だ。こいつは突きを放つ際、腰を沈める癖がある。その時間が長い程鋭い突きがくるのだ。まるで格ゲーの強攻撃や弱攻撃の様に。

 そしてイケメン君(仮)は、今まで一番長く腰を沈めた……なにか、くる。


「喰らえっ! サンダースピアッ!」

 まじかよ……槍から雷が出てたぞ。ありがたい事に槍を引く瞬間には、雷が消えていた。


「ここだっ」

 膝と肘で挟み込んで、槍をへし折る。

イケメン君(仮)は真っ二つになった槍を持って、唖然としている。


「おっ」

 イケメン君(仮)は顔を伏せた。


「折りやがったって言いたいのか? あんな技を喰らったら、俺は丸こげだったんだぞ」

 気のせいか、イケメン君(仮)は身体をプルプルと震わせている。


「お兄たまが僕の槍折ったー! お小遣い貯めてやっと買ったのにー」

 お兄たま? こいつは何を言っているんだ?


「やっぱり気付いていなかったのか……そいつの名前はマリー・マルグリット。お前の妹だ」

 セシリアさん、嘘ですよね? 慌ててエレナさんを見ると、俺に向かって手を合わせている。

 素早く鑑定

鑑定結果 マリー・マルグリット マルグリット家長女 年:十四歳 種族:猿人 紋様Aランク五枚羽根 スキル 槍術達人級 サンダースピア 備考:大好きな人・お兄たま


「すいません、“兄貴は絶対に僕に気付くから”ってマリーさんに口止めされていたんです」

 まじですか! マリー、ガン泣きなんですが。


「本当にマリーなのか?」

 俺の覚えているマリーは色白で大人しい子なんですが。


「お兄たまのお馬鹿ー!僕、直ぐに分かったもん。なにさ、エレナにばっかり優しくして!お兄たまなんて、もう知らない。べーッだ」

 マリーは泣きながら、あかんべーをしてきた。エレナさん達の視線が冷たいです。


「……マリー、お兄さんに会えるの凄く楽しみにしていた……」

 ユリアさん、追撃ありがとうございます。


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