窓
朝のラッシュ時の電車の中。
座っている人を見ると、半分くらいの人は寝ていたりします。
昨晩は残業だったのでしょうか、それともゲームで夜更かし?
最近では、俯きではなく仰向け、そう、窓ガラスに頭を付けて寝ている人を多く見かけます。
それも、男性だけではなく、女性の方も。
今の電車は昔の電車に比べ、窓に頭を付けても走行中振動がほとんどありません。
昔は、常に振動でガタガタ、窓枠もガタガタ、電車同士がすれ違うと、その風圧でバーンでした。
そういう時代、我らのお父さん世代、そう、“働きバチ”、“24時間働けますか?”のモーレツサラリーマンの時代は、皆、頭に柳屋のヘアーオイルやチック等で髪の毛をてかてかに固めていました。
そのモーレツサラリーマンも、さすがに電車に乗ると疲れてウトウト。
“武士は、前向きに倒れるのでは仰向けに倒れるものだ”と時代小説の本か何かに書いてあった気がします。
そのせいか、モーレツサラリーマンの方は、がたがた揺れている窓ガラスに頭を付けて眠ります。
まあ、眠らなくて普通にしていても、振動で窓ガラスが髪に触ったりしていました。
なので、窓ガラスの座ると頭が来る位置ら辺は、ヘアーオイルの帯が出来ています。
それも一か所ではなく、全ての窓ガラスに帯状に付いています。
子供心に、そんな窓には絶対に触りたくないと思ったものです。
今では、よく見ると若い男性の会社員は髪がてかてかしていません。
サラッと系なのでしょうか。
まれに、60歳を過ぎたような人が髪をてかてかにして、びっしりと形を付け乗って来ます。
その人が傍に来ると、昔の窓ガラスの風景をトラウマのように思い出します。
サラッと系が根付いたせいか、はたまた、ガラスの質?が良くなったのか、最近ではヘアー油の帯は、見受けられません。
「そんな油が付いている窓ガラスに、頭を付けて寝るなんて、私考えられない。」
と前の席で寝ている女性が寝言で言ったような。
「私もそれが嫌で、床屋に行っても整髪料は付けていないんですよ。」
なんて心の中で言ってみたり。
明日も同じ電車に乗ろう。




