怒る人
朝ではなく、帰りの電車の中。
帰宅する人で電車は混んでいます。
私はドアの付近のつり革につかまって立っています。
ウォークマンで音楽を聴きながら、ぼーっと車外の夜景を見ていると、斜め前にドアを背にした50代くらいの女性でしょうか、私の顔を見て何か文句を言っています。
その女性に見覚えもないし、ぶつかったとか失礼をした記憶がないので、知らん顔をします。
すると、その女性は無視した私の態度が、余程気に食わなかったのでしょうか、大きな仕草で、右手で私の方を指さし、髪を振り乱さんばかりで何か騒いでいます。
正確に言うと、言葉は出ていないで、口だけが動いています。
ただ、眼は吊り上がり、ものすごい形相です。
(いやだな、何もしていないのに。
このままエスカレートしたらどうしようか)
なんて思っていると、電車がその女性の降りる駅に着いたのか、急に女性の顔が普通の顔になり、何食わぬ顔をして私の横を通り抜け、電車を降りて行きました。
「いったい、今のは何だったんだろう」
私は自分の降りる駅まで、頭をひねって考えてしまいました。
そう言えば、以前、朝のフォームで、やはり50歳代位の女性でしょうか、大声で前を歩いている若い女性に文句を言っています。
傍に近づき何を言っているのかと聞き耳を立ててみます。
「あんた、ヒールの音がカツカツ、カツカツを響いて煩いの。
頭が痛くなるからやめなさい。」
どうやら、前を歩いている女性のヒールの足音が癇に障ったようです。
でも、「やめろ」と言っても、そこでヒールを脱ぐ訳にも行きません。
文句を付けられている女性も困惑顔をしていましたが、無視して、前の方にさっさと歩いて行きました。
「あっ、自分も革靴の音がうるさいかな?」
なんて、少し“抜き足、差し足、忍び足”になったりして。
心なしか周りの人たちも…
人には、いろいろな理由があるのでしょうが、ただ、周りに迷惑を掛けることは止めましょうね。
明日は違う電車で帰ろう。




