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巣立ち

朝のラッシュ時の電車の中。


中高生の新学年がはじまったころ。

高校生となったばかりと思われる初々しい女子高生がホームで電車を待っている姿が車内から見えました。

電車が付くと、私の乗っている付近の近いドアから、その女子高生は電車に乗ろうとしています。

が、よく見ると、少し年配の女性、どちらかと言うと、その女子高生の母親と思われる女性が、その女子高生に乗るドアを指図しています。

女子高生は頷き、その女性と電車に乗り込みます。

そして、電車が次の駅に着くと、その女子高生と母親と思われる女性は電車から降り、改札口に向かって行きます。

(ああ、母親が、通学の不慣れな娘のために、付き添ってきたんだろうな)

そう、微笑ましく二人の後姿を車内から見送ります。


翌日も、女子高生と母親と思われる女性は、同じようにその女性が乗るドアを指示して、二人で乗り込み、次の駅で降ります。

その翌日も、また、その翌日も、同じことを繰り返します。

二人がいない日は、試験休みと夏休み、冬休み、春休み位でしょうか。

母親らしき女性がいない時は、父親らしき男性が代わりに女子高生をエスコートします。

ただ、不思議なのは二人を見ると、いつも会話をしていません。

乗るドアも、指で指示するだけです。

(きっと、一人娘で、可愛くてしかたないんだろうな。

 一駅でも、痴漢に遭うといけないから、ついてきているのかな。

 でも、なぜ、話しをしたりしないんだろう。)

なんて考えたりします。

まあ、きっと電車がホームに入って来る前は会話しているんだろうと思います。

電車が入ってくると混んでいるので、乗るのにも気合がいります。

なので、会話がないんでしょう。


その二人の姿が3回目の桜の時期が過ぎた頃から、女子高生一人になります。

見ると、女子高生の手にはスマートフォンが。

きっと、高校3年になり自立を促すのに、泣く泣く娘を一人で通学させるようにしたのかな。

でも、心配なのでスマートフォンを持たせたのかな。

そんなことを考えている最中、女子学生はいつものドアではなく自由に自分の好きなドアを探して電車に乗っているようです。

それに、何か自由を満喫しているような、晴れやかな顔をしています。


明日も同じ電車に乗ろう。

挿絵(By みてみん)

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