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9.はじめての獲物

【最後に殺生シーン有りです。ご注意下さい】

ヤシの実モドキを砂浜に置き、

獲物の真後ろに回り込む。

音は立てない様にだが、ここから素早く行動する。

さっき出てきた突起物はたぶん目だ。

蟹とかの仲間の目が、確かあんな形で周囲を見渡せる構造だったと思う。

つまり身動き取らずに周囲を見渡せるのだ。

次に目が立ち上がるまでに捕らえるか、

それが可能な位置まで行かなければならない。


真後ろに回り込み、体制を低くしたまま小走りで近づく。

なるべく音を立てないように、、、


5歩

  

10歩


15歩


20歩


25歩


そして、その瞬間にまた突起が二個上部に飛び出る。

そこで俺は一気に速度をあげる。

全力だ!音なんてもう気にしない!!


獲物は一瞬思考停止していたのか、、、

その間にも俺は急接近していく。

そりゃ、いきなり土の塊が勢い良く迫って来たら

何が起きたか混乱するわな、哀れ哀れ。


獲物は咄嗟に逃げようか、隠れようかしたのだろう、

一瞬下から脚が出て体制が高くなったが、

俺が大きく踏み切り獲物に思いっきりダイブ。

一瞬スローになる思考の中で思い浮かんだのは、

ビーチフラッグの最後の1コマの光景。


両手で獲物をダイビングキャッチ。

俺に捕まった獲物は一瞬で身体をしまい込む。

蟹モドキ、、、殻が付いてるからヤドカリモドキか、、、ゲットである。



手にしたそれをとりあえず縦に回して正面と下部を見てみる。

バイクのヘルメットのジェットタイプに似た形の殻を持ち、

正面を大きな1対のハサミを横に並べて塞ぎ、

下部を3対の脚が折り重なる様に塞いでいた。

殻の下部の辺りに体が入っているのだろう。

殻がそこの部分に向かい渦を巻いている。


さて、どうしようか?

相手は先手をこちらに取られたが、籠城戦する気満々のご様子。

ヤシの実モドキより一回り大きいくらいの大きさなので

口に入れるのは問題なさそうなサイズだ。

先ほどヤシの実モドキに行った口内プレス技も有りかと思ったが、

踊り食いは少し抵抗が有るので最後の手段にしたい。

ヤドカリモドキも殻に籠っているだけで動きはないので、

先ほどのヤシの実モドキの身と共にこのまま持ち運ぶことにした。


浜という事もあり、漂流物がそこかしこに有る。

探せば使えそうな物が有るかもしれない。

と、そう思えるのもこの浜の漂流物の9割近くは流木などの自然物なのだが、

朽ちていない木材がチラホラ漂流してきていた。


木材と表現したのは、木には明らかに

人か何かの手の加えられた後が見受けられるからだ。

何か人工物が近くで壊れたのか?

もう一度辺りを見渡す。

、、、やはり、それらしい物は見受けられない。

そうすると、船か何かが壊れたか沈んだか、、、。

そう考えるとあまり良い気がしない。

森や海が静かなのも、この辺りが原因なのかもしれないと、

少し納得する。


警戒を強めながら、海辺を中心に漂流物を見ながらさらに西へ歩く。



歩いてしばらくすると、大きな漂流物が目に入ってきた。

小走りでそこへ向かう。


向かった先には自分よりも横は倍以上、縦も自分と同じぐらいの大きいサイズの漂流物。

軽く反るような流線型をしている。

たぶんたが、船の外壁だろう。

流線型の板の内側に太い骨組みが格子状に組まれている。

このサイズからして、一般の漁船ということは無いだろう。

かなりの大型の船になるはずだ。

少なくともこれを造った者たちは、それ相応の技術が有るということだ。


少し怖いと思った半面、それが人類ならと期待し、

それが壊される事態、、、そしてこの土の体、、、

少し色々考えがまとまらなくなったので、首を大きく左右な何度か振ってリセット。


ヤシの実モドキを下に置き、

ヤドカリモドキを小脇に抱えながら破損した船の外壁をひっくり返す。

そこには銀色に輝く金属板が1枚張り付いていた。

どうやら木材部分が多いことで沈まなかったのだろう。


金属板は1枚と言っても自分の胴体と同じぐらいあるだろうか?

薄かったがかなりのサイズがある。

金属、それが有るだけで文明レベルは一気に跳ね上がる。

この結果だけで本日大収穫と言って間違いない。


嬉しい気持ちを一旦落ち着ける。

そして手を合わせて、しばしの黙祷、、、。

「この金属、大事に使わせていただきます。」、、、声には出ないが、、、。

そして一礼して作業に入る。



ヤドカリモドキを相変わらず小脇に抱えたまま、

バキバキと船の外壁から金属を剥がしていく。

少し薄いが剥がしている最中に、グニャリと曲がったりはしなかった。

頑丈な金属のようだ。


その金属板を片手で体に押し当て集中。

体を変型させて金属板体内に押し込む。

金属板が体にすっぽり入り少し違和感があるがさらに集中。

そして、ダンジョン内でのことを思い出す。

石も変型させられたのだ、金属も可能かもしれない、、、

金属板を縮めていくイメージをする。バクテリア達、頼んだよ。

、、、石よりもスムーズには行えないが金属も変型可能なようだ!

よし、最大の第一関門突破。

これが出来なかったら金属板をそのままヤドカリモドキに

頭上から突き立てていただろう。

、、、小脇のヤツを見て「回避できてよかったな」と心で思う。


そして、もう少し金属をちじめようかと頑張っていたが、

空腹がヤバくなって来たので中断。

金属板から一部を分離して簡易な刃物に変型、

こいつを解体する予定なので

少し武骨なぐらいでちょうど良いだろう。



よし、刃物はできた。

もう一度周りをざっと見渡したが、

あまり目ぼしい物はなさそうだ。


あまり海辺でじっとしていては、

小脇のこいつと同じ運命になりかねない。

ちょっと金属が体に入っていて動きずらいが仕方ない。

ヤシの実モドキも回収し、他者の目を避けるため一度森の方へ移動する。



森に軽く入り、適当に大きな木の根本に陣取る。

都合良く、まな板の様になりそうな切り株など有りはしない。

むしろ手付かずの森に近いかもしれない。

ふと少し考える。

、、、空腹の時の方が頭が冴えるって言うのは本当なのかもしれない。



あぐらをかき、足でヤドカリモドキを逃がさないように押さえておく。

地面の土を手で集め、軽くならして周りよりも少しだけ高くする。

そこに手を当ててバクテリアとバクテリアと自分をつなぐ回路流し込む。

そこでバクテリアに変型で土の形をまな板のように綺麗な平らにしてもらち、

そしてそのまま硬貨化を使う。

バクテリアと回路を引き戻して回収し手を退けると、

簡易なまな板ならぬ、まな土の完成だ。



それでは、今回の主役の登場です。

ずっと小脇に抱えていたので、少し名残惜しくなって来た所だが、、、致し方ない。

ヘルメット型の殻を下にし、ハサミが自分の方になるようにヤドカリモドキを置く。

こちらの雰囲気を察したのか、ヤドカリモドキも体を限界まで引き込み、

隙間を少しでも埋めようと懸命だ。

そして俺は体内で作り上げて刃物を取り出す。

形は武骨な出刃包丁だ。


ヤドカリモドキの大きなハサミとハサミの間、

そして一番上の脚との間の所で、良さそうなポイントを刃先で探る。

ここだな、、、。

そして刃物をもった右手に力を入れて一気に貫く。

間髪入れずに貫いた刃物の背を左手で何度か叩きながら傾けて行き、

傾いて来た刃物に最後に一気に体重をかけてヤドカリモドキを両断する。

正中線を両断されたヤドカリモドキは力を失い、

閉まっていたハサミと脚がゆっくり開いていく。





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