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75.盗賊の頭

俺は、テントの幕を払って外に出る。

先に俺に女が来たとを知らせた見張り役が、

他の者にもその事を知らせて回る。


敵襲なら敵襲とそう伝えるはずだ。

一刻を争う訳でもなさそうなので、

少しだけ他の子分が集まるのをテントの前で待つ。


すぐにある程度の人数が集まり、

その中から新な見張り役に3人と、

他の有事に備えて4,5人を残すように指示を出す。


そして10人弱の人数を連れて、

すぐに拠点の東側へと向かう。

サツが小走りに俺の横に付く。

東に向かいながら、

仲間に知らせ回っていた子分に訪問者を再確認する。


「女一人か!?」


「へい、冒険者のようでした」


それを聞き、武器の鞘を握る手の力が少し緩む。


一人と言うことで、モンスターが化けた

もののけの類いかと警戒していたが、

そういう場合のモンスターは、

美しい容姿をしていたり、

あるいは情が移りそうな可愛らしい姿を

している者が多い。


その上で、こちらに気付かれぬように

″チャーム″などの魅了魔法をを乗せてくる。

音系の魅了魔法なら聴覚から、

水系の魅了魔法は視覚と嗅覚から

それぞれ感覚を狂わされる。


そうなる前に即首を跳ねるのが鉄則だが、

どうやら部下の話では、

その類いでは無いようだ。


冒険者と言うことは、

仲間とはぐれたと見るのが妥当か!?


仲間がモンスターに襲われて自分だけ逃れたか?

あるいは意図的にはぐれる用に置いていかれたか、、、?

…その辺りが遠からずだろうな。


しばらく駆け、程なく木々の間から

二人の子分と黒い黒い軽甲冑の女が現れる。


女は子分たちと一定距離を置いてはいるが、

腰の武器に手をかけたいる訳ではない。



俺達の接近には既に気が付いていて、

俺達の人数を見て半歩後退して軽く身構える。

それを確認して俺は、軽く腕を上げて、

同行していた部下達の足を止める。


この勢いのまま駆け込むのは、

相手を刺激する。

相手が武器を手にしていないし、

どんな者なのかもはっきりはわからない。

無用な刺激は避けたい。



止まった部下達を確認し、

俺は、女を間近で見ようとゆっくりと近づき始めようとした。


その時、側にいたサツが小声で俺に言う。


「お頭、あの女、軽装過ぎます」


その言葉に動き出そうとしていた俺の体が止まる。



そのまま女を見れば、

確かに女の近くにいる二人の子分と

さほど変わらない軽装だ。

唯一の持ち物と言えば、

腰に着けたポーチぐらいしか見当たらない。


体を動かさずにサツに問う。


「斥候か??」


「わかりませんね、ですがその可能性も十分有るかと…」



俺達の小声の会話を聞き、

近くにいた数人の子分の体がピクリと反応する。

その中の一人に横目で視線を送る。


そいつは索敵に優れる三属性の風、雷、音の属性のうち、

音が主属性の子分だ。

索敵や追跡などには重宝するので、

使い勝手が良く、こいつも俺の側に良く置いている一人だ。


肩にかけた短弓に手をかけていたその男は、

俺の視線を感じて軽く目を閉じる。


その後、小さく首を横に降った。

どうやら他の者は近くには居ないようだ。


だが、索敵の魔法を掻い潜ることもできる者も居る。


後ろから付いてきていた子分に顎で指示を出す。

二人一組のグループを二つ、

左右からかなりの大回りで女の後方まで

回り込むように指示する。

それをサツが俺の影から声を出して補足する。


「どこかに仲間が居るかもしれません、

ゆっくりと大回りで…」


それを聞いた子分が四人、

一旦後方に静かに下がる。

後はゆっくりと女の後方に回り込み、

異常があれば随時教えてくれるはずだ。



それから俺は一人で

女の方にゆっくりと歩み出す。


女、、、


距離を縮めて認識を改める。


かなり若い。


そして、黒い塗料の塗られた金属製

かと思っていた甲冑の艶を見て、

俺は、思わず小さく口笛を鳴らした。


闘蟲の軽甲冑。


漆黒に近いその色から、

素材は三角闘蟲の物だろう。

胸当てやショルダーガード程度なら良く見かけるが、

手甲足甲の部分も同じ闘蟲素材でできているようだ。

腰に下げている武器も三角闘蟲の角。

そのサイズから

相当の大物から切り出した素材なのがわかる。


さらにゆっくりと近づき、

その腰の武器がサーベルであろう柄をもつ武器で、

三角闘蟲の角が、その武器の鞘なのに気がつく。


闘蟲の角や爪自体、武器に転用されることも有るが、

素材ごとに反りや強度が異なるため、

武器にすると素材個々の差が出てしまう。

それで武器を作製すると、

当然だが素材の癖が出る武器になってしまう。

好んで使う者も居るが、

武器が変わるその都度、攻撃方法などを塾考したり、

使い方に慣れなければならなくなる手間がある。

防具に転用できる部位に比べて素材価値は多少下がる。


それでもその若い冒険者の腰の物は、

十分に、刺突、打撃に応用できるほどの逸品だ。


それをただの鞘にする、、、?

いや、鞘も武器として使う、、、?


俺は、その女の腰に下げている武器に

非常に興味をそそられた。

俺のお得意武器も斬撃メインのサーベルだ。

束の形状からも中身はほぼサーベルだろう。


武器の新調、、、その言葉が俺の頭をよぎる。


息子の身に付けている物は

武具共に価値がありそうだ。

それに若い女ってのも良い。

昨日の冒険者たちはともかく、

商人たちは男しか居なかったからな。


今日の″獲物″だな、、、。


だが、その獲物への期待と同時に

警戒も感じる。


その闘蟲素材を自力で手に入れたのか、

金を積んで手に入れたのかはわからない。

後者ならばともかく、

前者ならば、かなりの実力者と言うことだ。

最低でも中位のランクE-以上の

チーム所属の冒険者だろう。


セイニの国の冒険者、、、。

数の少ない中位の冒険者、

しかもここまで若ければ多少なりとも、

俺の耳にも入る情報のはずだが、、、。


特にピンと来る者は浮かばない。


獲物の戦力を解析しつつ距離をつめ、

ほどよい所で俺は、声をかける。


「お嬢さん、こんな森の中でどうしましたぁ~?」


「…少し、森に迷ってしまっていて…」


「おお、それはお困りでしょぉ~」


俺はさらにゆっくりと娘へと距離を詰めて行く。

近くにいた子分二人も口を開き、

俺に調子を合わせてくる。



だが、このやり取りで俺の中では、

″獲物″が″鴨″に変わっていた。


その事に俺は小さく微笑む。

下心を隠すように、

あくまで表面的には紳士的な笑顔を心がけて。


強者ならば、自分が

困っている。

救いを求めている。

などとは、まず最初には口にしない。


この娘の年相応と言えば年相応なのだろう。

甲冑の方もおおかた、

自分の実力で手に入れたのでは無いのは明白だ。

金か親か何かの伝か、、、??


そこで娘の顔が気になった。

赤い短めの髪。

肌は少し焼けていて健康的な色をしている。

顔立ちはきれいな方だが、

気品が有るかと言われれば、

可もなく不可もなく。

貴族なのか商人なのか一般市民なのか区別はつかない。


ちらりと体を見れば、

鍛えられてはいるが、華奢な体型だった。


近づいた分、甲冑の方も状態が良く観察できる。

艶やかな光沢の甲冑は見事な厚みをしていた。


それは、一般的な闘蟲と比べなならない厚みで、

その縁には金属が綺麗に取り付けられていて、

甲殻を補強していた。

シンプルな作りだが、

素材、加工含め、かなりの上等品なのがわかる。


だがその立派な甲冑に比べて、その下…。

娘の着ている服は、上等な物ではなく一般的。


甲冑の方も上等かと思えば、

ウルフの皮や、

場当たり的な布を裂いたような紐で

要所要所を結束させているように見える。


良く見れば、バランスのおかしい組み合わせの身なりだ。



、、、"おかしい"で思い出した、、、。



サツの言葉…

″あまりに軽装過ぎる″、、、。



見れば、水袋すらどこに付けていない。


水魔法を使えるのか??


旅する者によっては魔法で飲み水を確保する者もいる。

水を持たねば手荷物は減る。

だが、それは体内の魔素を消費するので、

決して得策とは言えない。

魔素を温存するのは、

旅する者、ましてや冒険者なら命にかかわる。

飲み水は持ち歩くのが鉄則だ。


その水に加えて、

娘は食糧の類いも持ち合わせていないようだ。


仲間、あるいは荷物を手放して間もないのか?



、、、


、、、



娘がどのような状況なのか、

判断が確定しないままに、

娘の前に歩み出る。


視線をあわせ少しの間を置くが、

娘からは声がかからない。

こちらに警戒しているのだろう。


そこで、俺から切り出す。


「とりあえずお疲れでしょうぉ~」

「ここでは何なので、私たちのテントにでも…」


体を拠点の方に向けながら、

俺は″鴨″をアジトに誘ったが…。


「いえ、大丈夫です」


と娘が断る。



半身を回したことで、

俺からはサツが見えるようになる。

そのサツが小さく頷く。


(包囲完了だな)



俺は、近くにいた子分に鋭い視線を送る。

それを受け、俺が娘の方に振り返ると同時に

二人の子分がズカズカと娘に近寄りつかみかかる。


それに慌てて後方にステップする娘。


「おい!!」


俺の一声に、娘の後方に左右な回り込んだ子分たちが、

姿を見せる。


「歓迎してやって言ってるんだよ!」


その声を聞いて、二人の子分がさらに

娘に近づくと、

娘がさらに大きくバックステップをして

後方の木の近くで抜刀。


腰の闘蟲の鞘からは、

漆黒の刃物が抜かれる。


刃物はサーベルなどよりも反りが少なく

刃厚も有る片刃の物。

そのやの光沢は、闘蟲のそれよりもはるかに強く、

日の光を綺麗に反射していた。


美しい…欲しい!!

素直にそう思える刃物だった。


娘の右手に握られたその異形異色の刃物に

一瞬心奪われていたが、

俺はある異変に気が付く。



それは娘の左手後方、

木の根元にあった土の塊。


それがどんどんと盛り上がり、

大きな人の形を模していく。


自然に起きたとは思えないその現象…



この娘、召還師だったのか!?



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