7.妖精の憂鬱
時間は少し戻り、ゴーレム達の修理が終わって少しした後。
「はぁ~あ、参ったわね~」
ラント密林にあるラントのダンジョン。
31階層からなる密林のダンジョンである。
そこの管理者で木精霊のセピラムは頭を抱えていた。
もともと楽観的な考え方の彼女にしてみても
今の状況はなんとも耐え難いのだ、憂鬱だ。
ダンジョンに昨日現れた存在は
明らかに自分とは格の違う存在だった。
全くと言っていいほどに足止めすらできなかった。
人化し更に抑えてはいたものの微量ながらも固有の魔素を放っていたことから、
竜種の上の存在、龍種だろう。
漏れ出ていた固有魔素の性質も闇や悪に近く、
闇龍か邪龍あたりだろう。
ただでさえ、本来このダンジョンを制御するはずの地下20階層のフロアが
以前に壊され、なんとかかんとかサブフロアの
この10階層だけでやりくりしてきているのだ。
そして多少魔素を引き抜いてはいるものの、
11階層から下はかなりの荒れ具合になっている。
それでも追跡しようとして使えるゴーレムすべてを投入しても、
暴走したダンジョンモンスターによる
ゴーレムへのダメージ量がひどく地下14階層までしか追跡できなかった。
ただでさえ初期に18体いたゴーレムが12、、、今日もう1体壊れた?ので
11体まで数を減らしてしまっているのだ、
これ以上のゴーレム損失は避けなければならず、
不本意ではあったがゴーレム達を撤退させた。
そんな半暴走化したダンジョンの中を彼の龍は
すでにすべての階層を突破し最深層の31階に到達しているようだ。
「あそこには魔素流脈があるのよね~、、、」
それはこの星から生まれた魔素が
星を循環するために作られて星の血管。
その綻び、、、つまり漏れ出ている所にこのダンジョンは作られた。
ちなみにこの魔素流脈の綻びにできるダンジョンを常開型ダンジョン、
魔素流脈の滞りができる、、、つまり流脈貯まりができる箇所に作られる
ダンジョンのことを開閉型ダンジョンという。
セピラムの管理するラントのダンジョンは常開型のダンジョンとなる。
星の血管、つまり魔素流脈を傷つけりることは、
そのまま星の、、、最悪でも周辺環境の激変を意味する。
その場所へ到達させないために、ダンジョンの防衛機能があるのだが、
その機能と管理体制が著しく低下しているこのダンジョンを
最悪とも言える闇龍か邪龍の襲来、、、
彼の龍はまだ魔素流脈に刺激を与えてはいないが、
早急に対応、可能なら排除しなければならない、、、
現段階では戦力的にも厳しいし、
時間的にもいつ龍が動くかわからない。
今すぐなのか、10年後なのか、、、
全く検討がつかないのが対応に困るが、
早いに越したことはないのだが、戦力という最初の問題にすぐぶち当たる。
「あいつがこのまま深層でおとなしくしてくれていると良いんだけど、、、」
セピラムが彼の龍から感じ取ったのは、
強力ではあるが、少し安定していないような魔素の流れ、
力が強すぎて乱れ方はわずかにしか感じ取れなかったが、
その乱れが悪い方に行かない事を祈るばかりだった。
懸念材料はいくらでもある、、、だが一つ言えることが!!
「それはもうあいつしだいだな(笑)!」
セピラムの手の届かなくなった存在の事を考えても始まらない。
セピラムはまず現状の改善から行いたいと考えた。
本当なら地下20階層の施設を直したい。
そうすれば破損したゴーレムコアの修復も可能かもしれない。
だが現状地下11階層以下は、ダンジョン内での魔素の処理が追い付いておらず
狂暴化したダンジョンモンスターで溢れている。
現実問題地下20階層に到達したとしても、施設を直す手段がない。
地下10階にある結界はゴーレムと自分を除くダンジョンモンスターのみに働く。
逆に言えばその制限のお陰でかなり強力なものになっている。
今現状でのダンジョンモンスターでは突破はあり得ない。
それに多少ではあるが11階層以下の魔素を表層の地下1~9階層でも、
排出できているのだ。
地下10階層の結界突破が可能な魔物の発生は
セピラム自身がダンジョン管理をする間は考えられなかった。
それに表層とは違い防衛に主眼を置かれる中層以降は
逆に魔物が強くても良いんじゃないか?
などと、過去に楽観的に考えて事態を先伸ばししていたツケけが、
今、彼女に降りかかってきている事を
当の本人は微塵も気が付いていない、、、。
「一応、ブモンには話したし、そのうちオーク達も手伝ってくれるでしょう♪」
ブモンはこのラントのダンジョンに出入りするオークのリーダー格だ。
武闘派のオークの将の一人で拳足体を使っての格闘戦に優れる武人。
性格も堅実でオークの王からもかなり信頼されてる。
、、、と聞いている。
そしてセピラムは基本的には彼を通して
オークの国の中核達と連絡を取ることになっている。
普段は直属部下、ほぼ弟子同然の二人と共にこのダンジョン地下10層の
護衛が彼らの主な仕事らしい。
今回は相手が強大過ぎるのでセピラムの権限で
ダンジョン防衛には地下10階層フロアボスのラクラグ(2頭の犬型ダンジョンモンスター)
と共に参加させなかった。
ダンジョン内転移によりブモンと一人の直属部下、ラクラグを
彼の龍とすれ違うように入り口付近へ避難。
ブモンにオークの王へと連絡を頼み
表層にてラクラグとブモンの直属部下一人で他者の侵入を警戒してもらっていた。
転移はダンジョンの機能のを使うので
機能の生きている1~10層限定でしかもセピラムの魔力を大量に使うので
連発はできない。
そして、ラクラグはまだ代替わりして日の浅いフロアボスだ。
先日寿命で亡くなった鎧騎士のオガントさんの代わりに
セピラムが彼の愛犬を選らんだばかりだった。
それにオーク達もこのダンジョンにかなり協力的な存在だ、
むざむざ敵わぬ相手にぶつけて無くすのは惜しいとセピラムは考えていた。
たまに美味しいお土産も持ってきてくれるし、、、。
仮に転移による魔力低下がなかったとしても、数十秒時間が稼げただけで大差なかっただろう。
そんな相手を排除しなけらばならないのだ、憂鬱だ、、、。
そして憂鬱と言えばもう一つ、
この一件が一体のゴーレムコアのメンテナンス中のことがたぶん災いした。
コアの魔術式の補修中だったのだがその事が中断していた。
その術式補修中だったコアが何故か初期の土を媒介に顕現した。
普通ならメンテナンス前のダンジョンゴーレムのスペックで
ダンジョン内の壁や床材を使って顕現するはずなのに、
侵入者の魔素か魔力の影響か、、、
あるいはゴーレムのコア自体の防衛本能なのか、、、
それとも他の原因なのか、、、。
ゴーレム自体はコアのメンテナンスさえ施せば
ダンジョン内で半永久的に活動できるように設計されている。
今回のケースはセピラムにも初めてのケースだし、
前例を聞いたことがない。
ダンジョンの暴走による余波の影響でのゴーレムの暴走。
または逆にダンジョンの機能停止により、
魔素の流入停止から起こるゴーレムコアの防衛本能の目覚めによる暴走。
ゴーレムコアの破損による機能停止。
術式変更や破損に誤作動、、、。
最後の誤作動に関してが一番怪しいが、
行動原理が定まっていない。
こちらのダンジョン管理者としての命令はうかつけなかったり、
このフロアの草の葉を食べ始めたり。
かと思えば仲間のゴーレムの修復は手伝ってくれたり、
さっきまでも仲間のゴーレムと共にダンジョン修復を行ってくれていた。
上手く行かずに途中いじけていたようにも見えるが、、、。
今は一体で最表層の入り口付近にいるようだ。
「さーて、あのゴーレムもどうにか直してあげないとね~♪」
と思っていると
「えっ!?!?出ていっちゃった、、、の、!?!?!?」
「、、、マジか~、、、」
【ちょっとネタバレ閲覧注意】
この作品内での魔素、魔力の違いや
ダンジョンとオークの関係などなど、
かなり説明不足なところが有りますが、
簡単な説明回にしました。
主人公在籍時に詳細説明回があるので
しばらくお待ちくださいm(__)m
あとこの説明回ですが、主人公がまだ喋れない状況なので、
かなり後半になる予定ですm(__)m