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57.滝壺

荷物を担ぎ直し、

オレンジのマンドラゴラに連れられて、

花のモンスターの包囲の中を通り抜ける。

抜ける間に、彼らの熱い視線を受ける。

、、、主に彼女がだが、、、。


彼らに目などは無いが、

頭部なのか、花のガクの部分が

彼女を追うように動き、

その中央からダラダラと溶解液をたらす。


そんな熱い視線を受けている彼女は、

マンドラゴラの触手に手を引かれる俺から離れまいと、

左右を気にしながらも、ビタリと後ろに着いて歩く。



本当は彼女を庇えるように、

俺の前を歩いてもらいたいのだが、

そうするとマンドラゴラの機嫌が悪くなりそうなので、

しばらくはこのままだろう。


そのまま、ヨチヨチ歩きのマンドラゴラと、

花のモンスター達の包囲を抜ける。

だが、やや後ろから、左右に二匹づつ、

花のモンスターがこちらに着いて歩いてくる。

マンドラゴラに向き直るが、

特にそれを気にしていないご様子。

彼女の方は、花のモンスターにストーキングされて、

気が気で無い模様。

必死で左右後方を気にしている。

とりあえずは、このままでの案内のようだ。

先導役のマンドラゴラのペースに合わせて、

ゆっくりと移動する。


しばらく行くと、少し大きめの木がある。

回りの木々と特に違いはないが、

その根元に一匹のモンスターが横たわっていた。

狼似のあのモンスターだ。

だが、その者は既に事切れていて、

毛並みも悪く、所々腐敗が進んでいるように見える。

そして、頭部に大きな穴が空いていて、

中身がくりぬかれている状態だった。

少し異様な死骸だった。


少し辺りを警戒していると、

マンドラゴラが、まっすぐその死骸に進んで行く。

そして、ゆっくりと俺と手をつなぐ触手を振り始める。

周りを警戒し、そのままでいると、

マンドラゴラが振り向いて、自分の触手を手で掴み、

その手を振って、さらに触手を強く振ってくる。


手放してもらいたいのか??


俺はゆっくりと触手を握る力を緩めると、

その手からするりと触手が抜けて、

マンドラゴラが笑顔になる。


あっていたようだ。


そこで立ち止まる俺と彼女と花のモンスター。

それを確認したマンドラゴラが、

先程の狼の死骸へと歩み寄る。


そして、そのままその頭部の穴に体を入れ込む、、、。



うわぁ~、、、。



マンドラゴラが狼の頭部へもぞもぞと入り込み、

狼の頭部から、マンドラゴラの頭部と葉玉だけが出る。

すると、死んでいるはずの狼の死骸がノソリと動き始めて、

ゆっくりと立ち上がる。


そして、顔面の穴という穴から、

ドス黒い血を少量たらす狼の死骸の顔がこちらを向く。

その頭部の上にはマスコットのように可愛らしい、

マンドラゴラのオレンジ色の艶やかな頭部と大きな葉玉が乗る。

そして、また、ニコリと笑う、、、。



うえぇ~、、、。



笑顔のマンドラゴラはそのまま、

白く綺麗な触手を葉玉の根元から出し、

それを手招きするように動かす。


気分は乗らないが、

そのまま狼の死骸を操るマンドラゴラの後ろを歩くことにする。


マンドラゴラ、、、容姿とやることに、ギャップ有りすぎだろう、、、。

前回の悲鳴はまだ良いが、これは良くない、、、。



狼の体を使っているので、

歩くのが早くなったマンドラゴラの後ろを歩く。

その俺にビタッと付いて歩く彼女。

相変わらず4匹の花のモンスターが付いてくる。

未だそれに警戒をしている彼女。


流石に少し可哀想なので、

さっと彼女の後ろに回り込んで歩く。

そして、視線で花のモンスター達を牽制する。


それに気が付いた花のモンスターたちが、

それぞれ明後日の方向を見ながらも、

俺たちに付いてくる。


一応は、彼らも同行者のようだ。



そのまましばらく移動を続ける。

方角的には、川に近づきつつ上流の方へ向かっているようだ。

ペースも結構早い。

狼の歩幅的には歩いているのかも知れないが、

俺は大股で、彼女は時たま小走りするようにして、

マンドラゴラに付いていく。



そのままマンドラゴラにしばらく先導されて、

密林をさらに進む。

やがて、水の激しく落ちる音が聞こえ始める。

そして、日が暮れ始める頃、ようやく密林を抜ける。



そう、抜ける。

抜けた、、、。


長い密林を抜けたのだ。



ここが密林と山脈との境界なのか、

俺の立っている位置を境に、

前方ばグレーの砂利山の世界、後方は色とりどりの植物の世界になっていた。


前方には左右をグレーの山肌の山脈が広く、段々と高く登るように続いていた。

そして、少し右手にその山肌を下ってきた川が勢い良く落ち、

滝を形勢していた。

その滝の周辺だけは、境界を侵食するように

色とりどりの植物がびっしりと上部から川沿いまで生えている。

滝はかなりの落差で、

辺りに轟音と水しぶきを飛ばしつけていた。


その滝の方へと、マンドラゴラに案内される。

その途中で花のモンスター達が

ゆっくりと密林の中へ戻っていく。


案内に従い進むと、色とりどりの植物と

水しぶきに囲まれた滝壺へとたどり着く。

とても大きくかなり深そうな滝壺だ。


そこでこちらに振り向くマンドラゴラ。

彼女にきっついガンをくれたあと、

俺にニッコリと微笑んでから、

操る狼と共に滝壺を離れる。



さて、、、



花のモンスターはともかく、

あのマンドラゴラは多少知性が有るように見えた。

そのマンドラゴラが、ここに俺たちを連れてきたってことは、

この滝に何か有るのか、何者かが居るのだろう。



そこで一歩前へ出る彼女。


周囲を見回した後、

索敵の魔法を使う。


そして、滝壺の方へと視線を受けている向け、半歩下がる。

顔には動揺が色濃く出ている。



直後、その滝壺の中央から、

何者かが出てくる。

それがぐんぐんと上へと伸びて、

あっという間に俺たちの視線の高さを越える。

その後方からは、さらに大きな甲羅のようなものが、

ゆっくりと水を分けるように出てくる。


先に水から出たのは、

その者の頭部のようだ。

口は少し開いていて、

カミソリのような歯が鋭く覗く。

その中央と左右はその歯が少し突起状に盛り上っている。

凶暴そうな口に反して、

目は少し小さくつぶらな感じ。

口より少し飛び出た鼻は、

小さな穴が二つ開いているだけだ。

その目や鼻、口の周り以外は、

頭頂からびっしりと藻のような緑の植物が生え、

今も水をポタポタと滴り落としている。


首の太さも、ミミズの胴周りよりも、

一回り太い。

そして、俺たちがその顔を見上げるような高さで上昇をやめ、

ゆっくりとこちらを向き直る。



相手が大きすぎる。

マンドラゴラの対応から、

俺たちと敵対はしていないようには見えたが、

流石にこのサイズ相手には緊張する。

荷物とゲコ袋をどさりと下ろし、

彼女の前に出て、

体の後ろに彼女を庇う。

彼女の方もスラリと刀を抜き身構える。

俺の方は、あまり相手に敵意を見せぬように、

槍を立てたままではいるが、

その手にも、かなり力が入っているのがわかった。



その様子に、大きな亀のようなモンスターが、

小さな目をさらに細めてこちらを見下す。 



しばらくその状態のまま、

目線を混じり合わせる。 



向こうは微動だにしない。

こちらも動けない。

後ろの彼女の方も息を殺すようにしているが、

漏れ出る呼吸から緊張が伝わってくる。



そこで上方からの視線が、

俺に注がれていることに気が付く。

そして、、、



『使者、、、デハ無イノカ?』



そう聞こえた。


いや、感じ取れた。


言葉では無いが

充分にそう感じられる思念のような物を亀から感じた。


この世界で始めて言葉に近い形で、

意思の疎通をしてきた亀に驚く。


彼女ともハンドサインなどで近いことをしているが、

相手の気持ちを"察する"といった部分が強い。


それに対して、身動きや表情無しで、

ここまで的確な相手からの質問を受けたのは、

ここへ来て始めてだったので、驚きと戸惑いを受ける。


そして、その思念は感情なども伝えてくるようで、

亀の意思は、本当に"疑問がある"といった物で、

敵意等が無い事を感じ取れた。



こちらも敵対の意思は無い。

このサイズのモンスターに勝つのは、

正直辛い。

見掛けや感じるエネルギー量も

何となくだが、あの苦労したミミズ以上のようだ。

思念の意図は俺にはわからないが、

敵意が無い事を示すのが先だろう。



俺は、槍の刃物の部分を大きく地に刺し手を離す。


そして、彼女に振り向き"能刀"のハンドサインを出す。 

それに少し戸惑った後、彼女は小さく頷いて刀を鞘にしまう。



そして、亀からも彼女が見えるように少しズレ、

もう一度亀に向き直る。

彼女の方も刀をしまい、構えを解いて亀の方を見上げる。



それに細めてい目を元に戻し、

また、俺に思念が飛んでくる。



『アノダンジョンカラノ、使者デハ無イノカ??』





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