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39.ハンドサイン

翌朝、小さな物音で目が覚める。


モンスターかと思ったが、

どうやらトーチカの中からだ。


トーチカを覗くと、まだ夜が明けきれていない、

薄明かりの中、更にくらいトーチカ内部で、

彼女が昨日作った甲冑を身に付けている最中だった。


数日間一緒に要るが、彼女の方が先に起きたのは始めてだ。

彼女が寝坊助と言うわけでは無く、

夜明付近には、自分の方が大体目が覚めてしまうからだ。


その自分よりも早く起きて、

身支度を始めている。

甲冑が今までの服よりも、

着るのに時間がかかるのも有るだろうが、

率直に、自分用の武具が出来て、嬉しくて目が覚めたのだろう。


それを証拠に、

こちらが動き出したのを、

申し訳なさうにはしていたが、

その顔からは、笑顔が漏れ出ていた。



少し早いが、彼女がヤル気満々なので、

こちらもゆっくりと

朝食の準備を始める。



釜戸の準備をしながら

ふと、彼女を見る。


どうやら、今までの鞘に

刀が入らないようだ。

前のサーベルと反り方も違うし

仕方ないだろう。


昨日、刀を作った後、

すぐに甲冑作成に入ってしまったので、

鞘のことは、完全に見落としていた。



折角なので、昨日の延長戦と行く。


作っていた釜戸の口を小さくし、

昨日作ったナイフと包丁を熱する。

その刃物で、巨大カブトムシの角の先端を切り取り、

中身を、、、して、空洞にする。



その角の筒の入り口に、刀の根元の止め金が

しっくり行くように、胸当てだった金属を嵌め込む。

中の空間が刀と合った形ではないので、

鞘走りによる抜刀術には向かないだろう。


だが、元々が角の素材なので、

緊急時の刺突武器にはなるはずだ、、、。

それに、何よりも、武具との統一感が出る!!

これは大事だ!!



全ての部位の甲冑を着込んだ彼女に、

漆黒の角の鞘に入った刀を渡す。

その刀を受け取り、それを腰に掻ける彼女。


非常に凛々しい、漆黒の剣士が

そこに立っていた。


ちょっとした感動ものだったが、

当の本人は、感動よりも嬉しさの方が強いようで、

目をランランとさせていた。



自分が朝食を作っている間に、

彼女は、今のフル装備を纏って、

昨日のように演舞するようだ。



夜の明けたばかりの、まだ静な密林の中、

自らの武具と技術を確かめるように演舞を開始する。


一振り一振り、自分の体と感覚を

研ぎ澄まして行くように舞う彼女。


その演舞の中、甲冑はそれぞれ面積が少ないので、

擦れ合うこともなく、音を立てず静かに彼女を守る。


刀の方は、まだ低い朝日をその輝く刃で鋭く反射し、

演舞に更に切れ味を加味していく。



そんな演舞を止めたくは無かったが、

早速朝食ができてしまった。


彼女の方も、この後の移動に備えて、

激しい動きは避けて、切りの良いところで

演舞を終了させた。



昨晩と同じメニューだが、

二日間移動がほぼ無く、食材のストックが乏しい。

今朝は我慢してもらう。



朝食が済んだのでトーチカの中を片付ける。

作ったナイフや鍋も、体内で一旦金属球に戻しておく。

そして、自分達が使ったトーチカを崩して、もう一つ、、、。


巨大カブトムシの入ったトーチカだ。


彼女の甲冑はできた。

自分も装備したら格好いいかもと思うが、

自分としては、形などの応用の効く金属の方が使い勝手が良い。

一応、かさ張らない程度の一部の甲殻は持っていく。



彼女と顔を合わせる。

勿体ないが残りは荷物になるだけだ。


トーチカの硬質化を解き、巨大カブトムシを土葬する。

襲われた相手にするのも少し微妙たが、

軽く感謝を告げるように頭を下げて、その場を後にした。




さて、二日間、距離的には進展が無いに等しい。

彼女もそれを理解しているようだ。

二人で川沿いの密林を上流へと移動する。



だんだんと日が登るにつれて、

密林が騒がしくなってくる。



一旦そこで、彼女の方を確認する。


浮き足だっていないかと心配したが、

そこはプロ?なのか?

昨日までと変わらない表情で、

しっかりと辺りを警戒したいる。


これなら大丈夫だろう。



しばらく進むと、やはり密林のモンスターの

彼女への対応は変わらない。


彼女を見つけた、足の長い蜘蛛が

木の上から降りてきて、迫ってくる。

数は正面に4、左側面に2。


少し数が多く、取り囲まれる形だが、

遭遇率の高いモンスターで慣れた相手だ。



前に出て、数の多い4匹を引き付ける。

側面の敵は、こちらからは

距離がある。


その段階で彼女が切り込む。

今までなら、もう少し敵の数が減ったり、

状況が安定するまでは切り込まなかった。

明らかに展開が早い。


少し彼女が気がかりなので、

4匹を引き付けつつ、

彼女の方にも注意を向けておく。



少し見ていると、駆けながら彼女が詠唱。

すぐに左手から火球が飛ぶ、そして彼女が抜刀。

二匹の蜘蛛の奥の一匹に火球が飛ぶ。

やや中央より、、、二匹を裂く位置に火球が迫る。


火球を向けられた蜘蛛は、余裕の有る方へ回避。

そこへ彼女が切り込む。

火球に気を取られていた蜘蛛は、

彼女の刀の初めての獲物になり、

下から軽く切り上げられた刃に両断さられる。


戦闘も冷静だし、問題も無さそうだ。

気のせいだったか??


そこで彼女と目が合う。

すぐに左手でハンドサインが飛んでくる、、、


あれは、、、確か″交代″のハンドサイン!!



面白い!!!



大きく頷き了承する。


こちらが、そのまま交代では芸が無い。


体の土を1塊づつ両手に集める。

その土の塊の水分を極限まで抜き乾燥させ、

微細に細分化する。

それを勢い良く地に投げつけ、盛大な土煙を作って

4匹の蜘蛛の注意を引く。


その土煙を背に走りだし、彼女と交代ですれ違う。



彼女を追って来た蜘蛛に、正面から突っ込む。

蜘蛛の思考が一瞬迷う。

その隙に更に接近し、

右手で蜘蛛の足を二本掴む。


そのまま蜘蛛を大きく振り上げて、

地面に叩き着けようとするが、

途中で勢い余って、蜘蛛の足が抜けてしまった。


足の抜けた部分から、体液の糸を引きながら、

遠方へと飛んでいく蜘蛛。

とりあえずは時間は稼げた。

彼女の方へ戻る。


彼女も1匹仕留めたようで、

3匹と対峙していたが、

自分が駆け寄るのを確認すると、

こちらへ後退してくる。


その際にまた別のハンドサインが来る。



これは、、、?ちょっと、覚えてい無い、、、。



彼女にわかるように首をかしげると、

彼女が蜘蛛の方を示唆する。


その指示に従い、後退する彼女の脇を

すれ違うように3匹の蜘蛛に突っ込む。

その俺の横を火球が通過。


その火球を跳ねるように避ける1匹の蜘蛛目掛けて、腕を振るう。

その勢いに、蜘蛛が腕に当たると毛肉塊へと変わる。


状況の更なる変化に困惑する蜘蛛たち。

その内、近くにいた蜘蛛を叩き潰すと、

残る一匹は直ぐ様逃走した。



とりあえず、今回の戦闘は

これで終了みたいだ。



彼女が近づいてくる。

戦闘が終わり、少し表情の緩くなった彼女が、

軽く笑う。

それに同意するように、口角を少し上げるように変形させる。



戦いという、命のやり取りの場で、

こう言うのもなんだが、、、

非常に面白かった。


いや、連携が上手くいったというのが、 

気持ちが良かったというか、、、。


そういう気分にさせる、良いコンビネーションだった。



ただ、闇雲な力勝負や、

知恵比べではない。

この連携と言うのも、

その二つに劣らない、立派な戦い方なのだと実感した。



彼女の正面に立ち、

一応、今回の反省として、

2個目のハンドサインを教え直してもらう。


彼女が地に書く絵を見るからに、

たぶん″突撃″とか″強襲″というニュアンスの

ハンドサインだ。



逆に自分がこの展開を望む場合には、

彼女に″援護射撃″や″共撃″などのサインを出せばよいのだろう、、、



覚えることは多そうだが、

ハンドサインは非常に有効的な物だと理解できた。



その後も順調に密林を進んでいく。

対処の慣れたモンスターでは、

彼女は武器の試しを、

俺はハンドサインの実戦演習を行った。


武器の枷が無くなったことで、

彼女の自由度も増え、

まだ軽くだが、戦闘ではハンドサインによる、

意思の疎通ができるようになった。

思っていた以上にモンスターの攻略速度が早くなっていた。


そして、このような今後のプラスを考えると、

昨日は距離は進まなかったが、

かなり有意義な一日だったのだと、改めて実感できた。



そんなことを考えながら、

更に密林を進んでいく、、





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