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21.三度目の海…

翌朝、妙な感じがして目が覚めた。


マイホームの入り口を開けると雨が降っていた。

雨のせいかな??


朝の日課の肉の水を廃る。

ほぼ水が出てこなくなっているので。

ほぼほぼ水抜は完成だろう。


しかし、昨日の肉は豚肉を彷彿させる味で旨かった。

可能なら同じモンスターを捕らえて

他の料理も試してみたいな~。

等と考えながらワニモドキの肉の水を肉を濡らさないように

外に捨てた時に、ふと密林の異変に気が付く。


やけに静かなのだ、、、


雨のせいだけではない。


初日を思わせる静かさだ。


お隣さんの鳥達も静かで、巣に居るのか居ないのかわからない。


昨日までの密林を知ったので、

その異常さが良くわかる。

生物がいるのに居ないような静けさが密林を包む。



その静かな森に、微かだが遠方から低音が響く。

密林の木々に反射して音の出所はわかりづらい、、、

海の方からか??

何となくだが音の伝わり方が南方より響くように感じた。


状況がわからない。

とりあえずマイホームをしかりと閉めて

ダンジョン前に急いで向かうことにする。

身動きが取りやすいように手荷物は持たないでマイホームを飛び出す。



ダンジョン前に着く。

やはりここも静かだ。

昨日のメンバーはあの後そのままここに停まったらしい。

昨日と同じ面子と金属鎧に槍を持った黒ブチオークがいた。

皆共通して厳しい顔付きをしている。

自分が挨拶に軽く拳を上げると

ゴブリン達が挨拶を返して少し彼らの表情が緩むが、

また険しい物へとすぐに戻り辺りを警戒している。



また、遠方からの小さな低音が響く。


そしてまた静寂がその場を包み込む。




そうしてしばらくした後、黒ブチのオークが大きな声で他のオークに

指示を出す。

一瞬、指示にビックリした4匹のオークだったが、

すぐに指示に従い動き始める。

その指示はゴブリン、コボルト達にも出される。

それに両者は頷き素早く行動を開始する。


皆がその場を片付け始める。

そして広場中央に皆が各々の武器を展開した状態で集まる。

皆テキパキと動き、遅れる者は居ない。

そして隊列を組む。

オークを2体づつ前後に、

そこにコボルトが各1匹、

中央にゴブリンと残ったゴボルトが一匹。

ゴブリン達もグループごとに隊列を組んでいる。


隊列が組終わり、一瞬だが多くの者が此方に視線を移す。


自分は拳を軽く上げる。

この挨拶の使い方が合っているかわからない。

だが、意思は伝わったはずだ。

ゴブリン達も拳を軽く上げる。


それを見ていた黒ブチのオークだったが、

やり取りが終わった後大きく号令をかける。

それに従い、隊列が広場を後に足早に帰って行く。

その先でT字路を右折し姿が見えなくなるまで見送った。



黒ブチの槍を持つオークと自分だけが広場に残された。


黒ブチのオークと目が合う。

彼は親指でダンジョン入り口を指差す。


俺は首を横に降る。


そして俺は南方を指差す。


黒ブチのオークは此方を睨み付ける。

睨んではいないのだろうが、それぐらい厳しい眼差しだった。


しばらくお互いが違う所を示唆し続ける状況が続き、

その後オークが軽く瞳を閉じた後、目付きを緩めた。


先程のやり取りを見ていたのだろう、

拳を軽く上げて此方を見る。


自分も拳を軽く上げて挨拶を返す。


それを見てオークはダンジョンへと素早く入って行く。

それを見届けて自分も動き出す。



この体内にある金属、

そしてそれが着いていた船と思わしき

真新しい加工された木材、

そして、初日と似た静けさ。


何か引っ掛かる??

何かが繋がる??

そんな感覚を確かめるために俺は走る。


何かが起こっている。

多分だが、ここにいる亜人達ではない、、、

この密林のモンスター達でもない、、、


他の地域からの来訪者がこの密林の近く、、、


ここから南方の海に居る。


この体内の金属、、、

少なくともこれに何らかの関わりのあるもの達が居るはずだ。


不安、期待、あらゆる感情を胸に、

雨の中をひた走る。



広場を抜け、

T字路を左折、

川に出る、

そこを川下に南下、

ワニモドキのテリトリーを横切る、

そこから更に南下、

しばらくし、物音が大きく聞こえてくる、、、



雨と天候のせいかいつもよりも濁ったエメラルド色の川と海の合流地点。

その先に、、、



地獄絵図のような光景が広がっていた。



海の中には、首の長い怪獣とも呼べるようなサイズのモンスターが1匹いる。

その周りをさまざまな形をしたモンスターが泳いでいる。

怪獣サイズモンスターのように首を長く海面に出した者、

長い体をしその体表を立派な背鰭と鱗で覆われた者、

クラゲの傘のような頭部を海面に付きだし、その周りから触手が突き出た者、

シャコガイのような殻からカニのような形の細い足を無数に出した者、

サメのような頭部を持ち、人のような体で手足のヒレで自在に泳ぐ者、、、


さまざまな海のモンスター達が共通の敵を攻撃していた。



人だ。



少し沖に一隻の船がある。

その周りに他の船だった物の残骸と

それの船員だったのか、

人が海に浮いていた。


皆声を上げてモンスターから逃げ惑う。



だが、、、


ある者は触手に捕まりアブクを出して白目を向き、

ある者は大きな口に捕まり海に引きずりこまれ辺りを赤く染める、

ある者は防具を着こんでいるのに、その上から尖った甲殻の腕に貫かれて、

ある者はなんの気のない尾びれの叩きつけと海面とに挟まれて、


多くの者が次々と海の中に消えていく、、、


そして、新たに標的になった者達が先の者達を追うように海に消えていく。



正に地獄絵図だ、、、



そんな中、一隻の船は彼のモンスター達の猛攻を耐えていた。

その船を薄い白い光の壁が包みこむ、

そして船に飛んでくる

水の刃を、

酸液を、

針を

触手を、、、


何とか弾いていた。


その合間を縫って船からは矢や

さまざまな物が飛び出る。

炎に

風、

石ツブテ、

矢以外にも、それっぽい飛び道具、、、


だが、モンスター達には及ばない。


船を包んでいた淡い光は更に淡く薄くなっていく、、、


そして、最後はなんの予兆も無く消える、、、


そこへモンスター達の攻撃が集中する。


すぐに船は壊れながら沈み始める、、、


そして、周りの残骸と見分けがつかなくなる、


そこにいた人々が悲鳴を上げながら、先人達の後を追って

どんどんと海の中へ消えていく。






何も出来なかった、、、

今の自分が無力過ぎた、、、

人よりも遥かに優れた能力を一部だが持つこの体の今の自分、、、

だが、海に住まう彼らに何か太刀打ちできるような手段があっただろうか?


食事のイメージや変形、硬質化、それらを使って

海の中の彼らの何匹かは沈黙させられるかもしれない。

だが、海は彼らのテリトリーだ。

例え何匹か倒せても、自分もすぐに

他の人間達の後を追うように海に沈むだろう、、、

この状況を変えることはかなわない。



何もできない、

何もできない、

何もできない、



そんな現実と現実では無いような光景を見つめる。



やがて海から聞こえ悲鳴がまったく聞こえなくなる、、、

波の音だけがその場を支配し、

モンスター達がゆっくり海の中へと帰ってゆく、、、 


もう、何もできない、、、



ただの空しさだけが心の中に残る。








そして、一つの波しぶき、、、




そして、また波しぶき、、、




更に、また波しぶき、、、



規則正しく、、、

自然の起こすしぶきの音にしては、あまりに規則正しい、、、


ふと顔を上げると、

かなり右の海岸に一人の人が泳ぎ着く。


状況がすぐにわかった。

逃げている。

さっきのモンスター達の仲間からだろう。

相手を確認する前に俺は駆け出す。


その泳ぎ着いた人の方へ。

全力で、、、

せめて、あの人だけは!!

その一心で走る。


自分が駆け寄るよりもはやく、追跡者が姿を表す。

昨日この海岸で見たシャープなセイウチ風のモンスターだ。


彼女はその追跡者から必死で逃げる。

森の方へ、

森の方へと、、、


そう、彼女、逃げている人は女性だ。

赤い短めの髪に華奢な体、少し焼けた色の裸をしている。

そこまで確認していると、

彼女に向かい水の一閃が飛ぶ。

それは彼女の右側のふくらはぎをかすり貫く。

直後に彼女の体制が崩れ鮮血が舞う。

彼女のふくらはぎの下がどんどんと赤く染め上がって行くが 

彼女は倒れない。

彼女は足を引きずりながらも、森へと走る。

振り返りもせずに必死に必死に。



水の一閃を放ったのは一回り大きいセイウチ風のモンスター。

そのセイウチ風のモンスターが第2射を放つそぶりが整う頃、

ようやく俺は現場に到着した。


彼女とセイウチの一直線上に割り込み

体をセイウチ達の方へと向ける。 

両腕を太く硬質化して大きく立ち塞がる。



一番大きいセイウチ風のモンスターの視線が

彼女から俺に移り、視線が交わる。




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