16.平時の密林
腕に集めた土を変形させて行く。
腕から外側に向かい放射状にプレート形の土を何枚も伸ばす。
それを硬質化で固める。
要は、あの鎌に着くスパイクからの麻痺成分が、
身体の稼働に重要な部位に当たらなければ、こちらは行動不能にはならない。
腕をこの形にしておけば、芯に麻痺成分が浸透することは無いだろう。
例え食らってもこちらは生物でないので、血液の循環などで体中が麻痺する心配も無い。
最悪デフォルトの関節部が麻痺しても、他部位を曲げれば
移動は可能だ。
自分もやりづらいとは思ったが、相手からしてもこちらはやりづらいだろう。
相手自身がそれに気がついているかはわからないが、、、
ワニモドキの時とは違い、相手から遠距離での攻撃が来ないので、
こちらとしても、ゆっくりと準備ができる。
尖ったなると状になった腕をもち上げる。
基本はこの腕で相手の鎌を受けたい。
だが、相手の鎌は4本、、、。
こちらが攻めあぐねいていると、此方の様子を見ていたカマキリがジリジリ距離を詰め始める。
こちらが狙うなら関節部か?
固そうな外骨格だが、
関節部に向かい外骨格が段々と細くなり、
関節部は小さな外骨格が組合わさり、それぞれの繋ぎ目を埋めていて、
他所よりもすこし色が薄くなっている。
可能なら脚の関節をねらいたいが、
手前の鎌も邪魔だし、上方の鎌にやられては意味がない。
鎌の関節を狙い無力化、あるいは直接胴と腹の接続部に攻撃だな。
此方もゆっくり歩みより、先に相手の射程に入る。
すると相手から左右同時に下方の鎌が降り下ろされる。
それを左右の腕で受ける。
鎌のスパイクか刺さり、プレート部の外側のバクテリア達が麻痺しはじめるが、
ワニモドキの時のように消失では無いので、焦りは無い。
稼働部までの浸透も無いので、腕はこのまでも暫くは問題なさそうだ。
左右からの攻撃をそれぞれの腕で受けたので、
中央のガードが空く。
待ってましたと言わんばかりに、
相手の上方の鎌が二本展開、一気に俺の頭上に降り下ろされる。
これが、相手の必勝パターンなのか?
顔と目を庇い下を向き、あえて脳天を敵にさらす。
この俺の体は、頭部も他の体の一部と構造は変わらない。
思考などは、むしろ胸の部分で行っているイメージがある。
自分が庇うべきは、頭部でなく、この胸部。
その中にある一部だ。
人で言えば、若干心臓よりも上方にあるこの部分に、
自分と意識できる球体が存在する。
その核さえ守れれば、問題ないはずだ。
脳天に鎌が刺さり、そのトゲから
麻痺の分泌液が脳天に染み込み、脳天のバクテリアが痺れ始める。
勝ったと思ったのか、相手の頭部中央にある左右の触角が縦に大きく降れる。
その隙をつき、頭部の痺れていない他の部分の土を
突き刺さった鎌に絡み付かせて硬質化する。
腕も変形させているので、結構いっぱいいっぱいだ。
相手と自分の腕が見える位置まで顔を起こす。
上方の鎌を捕らえられて、前のめりだったカマキリが
自分の起こした顔に引っ張られ更に前のめりになる。
ここからは、こちらの反撃だ。
両腕の鎌を一瞬で振り払い、
両の拳の金属球を思いっきり捕らえた鎌の関節部に叩き込み続ける。
驚いたカマキリは、腕を抜こうと上体と腕を一気に上げようとする。
此方も釣られてすこし引っ張られるが、拘束は剥がれない。
お構い無しに更に鎌の関節へと攻撃を叩き込む。
カマキリも拘束を解くのは諦めたのか、
下方の鎌を使いこちらへ攻撃をしかけてくる。
だが、攻撃が直線的で、どの部位を攻撃してくるがわかる。
そこに腕を合わせるだけなので、対処は楽だ。
カマキリが攻撃を緩めると、こちらが鎌を再度攻撃するのが解ったのか、
カマキリの下部の鎌の攻撃が止まない。
その攻撃に腕を合わせながら、こちらは次の攻撃へ移る。
鎌を捕らえた部分の土を拘束を緩めないように、両の鎌を徐々に内側へと巻いていく。
無理な方向へと鎌を曲げられて行き、それを緩和しようと
段々とカマキリの態勢が高くなる。
「ギギ、ギギギ」と鳴き始め、
慌てるように下方の鎌の攻撃回数が一気に跳ね上がる。
「ギ、ギギ、ギ、、、、、ギギョーーーーー」
っとカマキリの悲鳴が聴こえ、その瞬間に「バギョ!!」っと
捕らえた鎌の右の関節がネジ切れて、緑色の粘性のある液体が飛び出る。
そして、短くなった腕からその液体を振り撒きながら、
カマキリの体が残された左腕に釣られて、大きく左に傾く。
傷みのせいか、カマキリの攻撃が一瞬止んだので、
捕らえた左の鎌も一気に捻って行く。
カマキリは態勢をこれでもか?と左にひねり、
短いくなった元鎌の腕と下の1対の鎌で攻撃をしかけて来たが、
鎌の無い腕は驚異にならない。
下方の鎌は両腕で難なく捌き、更に相手の捕らえた鎌をどんどん捻る。
「ギャギーーーーーーーー!!」
とさっきと似たような悲鳴を上げて、その直後「バギョ!!」っと同じような音がし、
また先程と同色の体液が飛び散る。
両の腕を失ったカマキリが、腕から体液を滴らせながら後退して行く。
畳み込むように一気に近づく。
頭に付いた捻切った鎌を振りほどき、
走りながら腕の変形を解いてデフォルト形態へ戻る。
バックでの後退をしているカマキリに飛び付く。
下方の鎌が襲いかかって来るが、
体の両側面を硬質化して対処。
麻痺刺をもらいながら相手の胴につかみかかる。
右手で相手の胴を掴んで引き寄せ、左手で相手の首根っこを握る。
そこで俺の勢いに耐えられずカマキリが後方に倒れ込む。
そして、胴を掴んでいた右手で拳を作り、
拳の二つの金属球を勢い良く相手の顔面左側に叩き込む。
「ガ、ジュ!!」
一瞬硬質な音を立てたが、すぐにそのまま目と顔の一部が陥没しその中を潰す音と混ざる。
潰れていない頭部の他部分を、何度も緑色の液体のこびり付いた拳で叩いて潰し、
相手が完全に沈黙したのを確認して、左手を解いた。
ワニモドキの時もそうだったが、この体の防衛本能なのか、
相手から攻撃さらると、反撃が過剰になりすぎてしまうように思う。
意識すれば止められると思うが、、、
対峙する相手には注意した方が良さそうだ。
人間等とは一部と敵対したとしても、
なるべくなら平穏な関係を築きたい。
しばらくして体の麻痺が抜けてきたので、身体をデフォルトへと戻す。
戦闘で変形と硬質化をかなり使ったので、
エネルギー残量が結構ヤバイ。
どちらの能力も便利だが、急速な変化は燃費が悪い。
先ほどまで対峙し、目の前に倒れる相手を見やる。
、、、流石にこれは、、、!
敵として見ているうちは良いが、食材としては精神的に完全NGだ。
使えそう(食べない)な部分だけ回収することにする。
鎌には内部に麻痺薬の入った袋の機関が有るようなので、
切り離して鎌ごと四つ持ち運ぶ事にする。
あとは、ワニモドキと同じなら、このモンスターにも
石のような物が体内に有るかもしれない、、、
非常に思い出したくない光景だった。
自分と同サイズの昆虫のハラワタから、白、黄緑、群青色の、、、
とりあえず、やはり一つの臓器から石が出てきた。
今回も二つ。
色は黄色。
一つはワニモドキから得た物と同じ金属球内に保存。
もうひとつを食べて見ることにする。
、、、これは断じて虫ではない!石だ!
とりあえず、後学のために実食。
これが、非常食にならないようなら、集める価値はぐっと下がって来る。
食べ始めるとバクテリア達が群がり、
あっという間にエネルギーに変換してしまったようだ。
非常に効率が良く、回復量も半分以上。
味などが無いのは残念だが、
サイズからしたら非常に優秀な食糧だ。
やはり、機会があったら可能な限り回収していこう。
さて、落ち着いたので現状を確認。
結局の所、モンスターに出くわしてしまえば
どこでも戦闘になりうる。
つまり、迷ったりするリスクが有り、
移動速度が下がる森の中を進むのは、
メリットが見い出し辛い。
唯一、上空から発見されづらいぐらいだが、
翼を持つ大きなモンスターは今までの所見ていない。
それらを考えるならば、やはり川沿いを進む方が良いだろう。
カマキリをその場に置いておき、川沿いへ向かうように東に進路を取り、川辺へ。
そのまま川沿いを南下する。
ヤシの実モドキは使用用途が多数有るので、
可能なら今日も回収したい。
移動中、ふと対岸を見ると大きな甲羅が目に止まる。
亀かなにかか?
甲羅の長さだけで、ワニモドキの倍は有るだろうか?
こちらに背を向けているので、顔はわからない。
川を挟んで対岸ということで、危険度は低いだろう。
刺激しないよう、そのまま南下を続ける。
その先では、今度は森の中から、激しい羽音。
見ればソフトボールぐらいだろうか?
そのサイズの大きな蜂のようなモンスターが、
確認できるだけて、二匹飛んでいる。
ここも、刺激せずに通過する。
猿、嘴の大きい鳥、蜘蛛、カマキリ、亀、蜂、、、
やはり、初日よりも圧倒的に生き物、、、モンスターの多い密林である。
その後も素早いイグアナ、
モンスターなのかわからないが、大量の同種の紫色の蝶の群れ、
背鰭を出して泳ぐ魚?かなにかに出合うが、
刺激しないように南へと進み、大きな衝突もなく
再び海へと来ることができた。




