13.宴
地面に降りてすぐに相手の口から第3射が来る。
こちらの準備など待たないようだ。当然か。
第3射は脇腹と右腕に当たる。
また、バクテリアが悲鳴を上げる。
相手を見ながらこちらも反撃の準備をする。
こちらは相手と違い遠距離攻撃の手段が無い。
無傷の左腕に胴体の土と体内の金属球を7つ集める。
左腕を太くし先端を大きなハンマーの形にし、
ハンマーの頭の下部に金属球を7つ集めて配置。
更に肘より上を硬質化する。
右手には包丁型の刃物を出しておく。
土をと金属球を左腕にに集めた分、
胴体が細くなり、左に重心が片寄る。
重心の偏りをカバーするため、
右肩を落とし、ハンマーを体の中心に寄せ相手に向かって走り
距離を詰める。
先ほどまでと違い、水の攻撃は来ない。
水の量的にも相手の体積から出てきたにしては多い。
やはり、ただのワニではない。
ただ、水の攻撃も制限数が無い訳では無いようだ。
かなり近づいた辺りで4射目の水が来る。
これは警戒できていた。
相手がもし弾切れなら、このようにその場でとどまって待っていたりは
しなかったはずだ。
ハンマーの下部を跳んでくる水に合わせて、金属球の部位で水を受ける。
距離の近い分かなりの水圧だ。
だがそのまま押し込んで行く。
相手を自分の射程まで捕らえる所まで接近し
水が来るのが止んだ所で一気に左腕を高く上げる。
相手が後進するが、そこまで速くない。
自分もその分前進し一気にハンマーを
相手の首もとに叩き込む。
大きな鈍い音がし、相手が片目つむり口を開けて短く叫び、体をくの字にす曲げる。
本気で叩き潰す勢い降り下ろしたのだが、思ったよりも頑丈だったのか?
かなりダメージは入ったようだが足りない。
二撃目を加えようとして、左腕を更に高く上げた時、
相手が両目を開き口を空け、
そこから水の第5射がくる。
ゼロ距離では不味いと思ったときには腹部中央に直撃していた。
腹部の土が水とともに一気に爆ぜる。
今まででの最大の警報とバクテリアの悲鳴が身体を駆け巡る。
硬質化を使うが抵抗しきれない、、、
水が収まる頃には腹部の厚みの2/3ぐらいの深さのクレーターができていた。
衝撃とダメージで二歩ほど後退してしまう、
かなりマズい、、、
視界が霞み、世界がスローになっていく、、、
その中にあって、視界には迫り来るワニモドキ、、、
足首に今にも噛みつこうとしている。
ここまで追い詰められて、やっと冷静になれた。
ワニモドキの水もこちらの攻撃が思ったよりも通じなかったのも、
明らかに物理法則から抜け出している。
ここはそういう世界なのだ、
でなければこの土の体の仕組みだって物理では説明が付かない。
異能を使う相手に物理だけでは勝てない、、、ならば。
その時、足首に相手が食らい付く。
このまま川の中へ引き込むつもりなのか?
そこで足首を硬質化、一緒に地面と足を一体化して更に硬質化。
引き込まれないようにする。
相手の口許が歪み、思い道理に行かなかったことが伺えた。
そして、その一瞬歪んだ表情の相手に素早く両手を被せる。
叩いたりするのではなく、そっと、、、。
左腕のハンマーの手と右手を変形させて相手の顔を覆っていく。
相手が異変に気が付き体と尻尾を大きくバタつかせてもがくがもう遅い。
尻尾に打ち付けられた地面が大きな音を立てて土が飛び散る。
俺は手の変形をどんどん続ける。
相手の、目に、鼻に、口に、自分の体を流し込む。
そして、目の中に、鼻の奥に、喉の更に先へと、、、
そして自分の体に食事のイメージを一気に送る。
暴れていたワニモドキが更に激しく暴れはじめる。
そして、しばらくして、、、
激しく動いていたワニモドキが大人しくなり、
窒息のせいか、食事のせいか、痙攣しはじめる。
そして、それも完全に止まる。
手を元に戻した時には、首から上を白骨化したワニモドキが残されていた。
味は、、、?
ぶっちゃけ必死だったので覚えていないが、
ミルキー&タンパクだったか?な?
体を見ると、痛々しい。
特に腹部がマズい。
かなりボッコリいっている。
ワニモドキの頭部を食ったせいか、
エネルギーはかなり回復しているし、
体の土も少し戻ったように思うが、
バクテリアの数が減った。
今日はこれ以上無理をしない方が良さそうだ。
ワニモドキの体も食べて、自分の体だけでも元に戻そうかと思ったが。
バクテリアが少ない数のまま体が戻ると、
ただでさえ遅い体の動きが更に遅くなりそうだ。
逆に体が小さくても、バクテリアの数が増えれば
体が俊敏になるかもしれない、、、
この辺りも今後だな。
とりあえず今は、現状のままの体の土で傷を埋める。
前までよりも体が少し小さくなった。
さて、自宅前で新鮮なお肉が手に入った。
腕には塩がたんまり詰まっている。
腹には余裕有るし今後のことも考えて、このワニモドキの肉を
長期保存出来るように加工しようと思う。
首から上を落とし、ついでに手足も落とす。
抵抗力の無くなった手足は楽に落とせた。
この辺りも異能と関係ありそうだ。
尻尾を高く上げて川の上で血抜きをする。
、、、下流の方々すみません。
間で時間があったので手足を食べる。
ちょっとコラーゲン、、、、。
牙と爪は使えるかもしれないので回収。
粗方血抜きが終わったのでニューマイホームへ。
マイホームはかなり深めに掘ったので中はヒンヤリだ。
ここなら肉が急速に痛んだりはしないだろう。
土を変形と硬質化で大皿を作り
その中へ長らく腕に貯めていた塩を出す。
回収した爪と牙、昨日のヤシの実モドキと並べておく。
マイホームの地面を盛り上げて、大きなまな板状にし、
その上にワニモドキの身を横たえる。
そうして、ふと朝の光景を思い出す。
ゴブリン達が木人形から、赤色の石を取り出し、
それを大事そうにしていたのを。
腹を割き、ハラワタを引きずり出す。
ん~、ちょっと部屋を汚したくないな、、、
実食。
、、、この辺り、なんか人間だった頃と感覚ズレてきてるな、、、
生のホルモン、やっぱりホルモンの味だった。
そして、ある1つの臓器を食っていると、
バクテリアがゾワッと反応する!
おお?
その臓器の中から青い石が二個出てくる?
その石の1つに食事のイメージを軽く使うと、
一気にエネルギーが回復するのがわかる。
モンスターの体内に有る、エネルギーを大量に含んだ石。
確かにその事実だけでも、この石が重要な物なのはわかる。
そして、この石は、自分にとっては
かなり良質なエネルギー源になりうるのを理解できた。
少量でかなりのエネルギーが有るので非常食にしたい。
そのまま体にしまっておくと食べてしまいそうなので、
腹部に仕込んだ金属球の中に二つの石を入れておく。
この石と同じような物を沢山集めれば、
遠出をしても飢えることが無くなるので安心だろう。
ワニモドキの他の内臓部分も食べたが、
他の部位は石は無かった。
結局内臓全部食べてしまったので、体の土がまた少し戻ったようだ。
さて、肉の加工の続きをしよう。
皮を剥ぎ骨を取りブロック肉を作っていく。
尾の部分は油が多く、加工には向かなそうなので後回しだ。
ブロック肉に海で取った塩をたっぷり塗り込んで行く。
金属球を二つ使い大きなトレーを作り、処理した肉を並べて行く。
うまく水抜きできると良いのだが、、、
まぁ、初めてだし試しだな試し。
一応、地中からの侵入者が嫌なので、
マイホームの天井、壁、床を可能な限り硬質化、
ついでに水分を極力吸いとっておく。
こんなもんだろう、、、。
さて、外を見ると夕焼けがかって来ている。
朝方あれだけの数の亜人がダンジョン前に集まっていたのだ。
そして、焚き火の後、、、
「火」をわけてもらえるかもしれないな。
期待を胸に、マイホームの入口を硬質化で埋めてダンジョン前へ。
チラッと遠目でダンジョン前を確認すると
ゴブリン達が何やらガサゴソと準備をしていて、
そのなかに一ヶ所火がついている。
これは行けると思う。
マイホームへ戻り、余っていた尾の部分を担ぎ
塩と共に持ち出し、体内で金属を色々な調理器具に変えながら
ダンジョン前へと戻る。
その頃にはかなり辺りも暗くなっていた。
広場ではゴブリン達が輪を作っている。
9匹で輪を作っているが、炎をシェアしているのか?
4匹と5匹の境目が少し他より大きく別れている。
どちらも、朝のダンジョン内でのゴブリン達では無いな、、、
ぐらいしか違いはわからない。
火の近くに串刺しにした蜥蜴や鼠のような生き物が地に刺してあり、
あれが彼らの晩御飯のようだ。
コボルトたちは居ないようで、
オーク達はダンジョン入口の松明の近くにいる。
さて、言葉が出ない状況だ。
日本のジェスチャーも通じるか不明。
最初からうまく行かないのはわかっている。
ならばここは直球。
ゴブリン達の火にゆっくり近づく。
距離がつまるにつれてゴブリン達の警戒が色濃くなっていく。
お互いのグループのリーダー格なのか、
二本のこん棒を持ったゴブリンと弓を持った帽子を被るゴブリンが立ち上がり、
他の者が続けて立ち上がる。
身長差がかなり有るので、ゴブリン達がゆっくり後ずさって行く。
攻撃されなくて良かったと胸を撫で下ろし、火の元に。
そして、火の前に胡座をかいて座り、隣にワニモドキの尾を置く。
ゴブリン達が目を丸くしている。
焚き火の側の彼らの食材を隣に移し、
焚き火の回りに土を変形させて釜戸を造る。
これで焚き火の火力も一気に上がるはずだ。
尾を厚目に1枚スライスし、
皮を剥ぎ取る。
骨を取り外すと肉は4個のブロックになる。
それに塩をまぶして金属棒で叩き肉を柔らかくする。
釜戸に体内で作った金属のフライパンを置き、
暖まったら肉を投入。
何をやり始めたか理解できたらしく、
ゴブリン達は顔を見合わせた後、それぞれの武器を下ろす。
辺りに肉の焼ける良い香りが立ち込めて来る。
ゴブリンのうち三匹程が体を乗り出し、
ヨダレを垂らしてこちらを覗いていた。
フライパンの上で肉を9個に、、、
一番大きな肉を3分割にはしたが、やはり他より小さい、、、
この辺りは多目に見てもらおう。
土を硬質化したプレートに近くの大きな葉を載せ、
その上に9個の肉を乗せて軽く塩をふり、ゴブリンたちに差し出す。
半分以上のゴブリンから同時に唾を飲み込む音が聞こえる。
一応、只じゃないよ。
ってことで、空いた手で火を指差すと、
納得したようで、俺がうなずくとゴブリンたちもうなずく。
どの世界でも、やはり、無償と言うのは怪しいというのは共通だな。
などと考えた次の瞬間。
プレートから一瞬で肉が消えていた。
ゴブリン各々が声を上げる。
「ウマイ~」とか、「最高~」とかだろうか??
それぞれにしわくちゃな、とても良い笑顔を浮かべていた。
その後ゴブリンたちも釜戸を囲むように座る。
火を指差したことでこちらの目的もある程度理解したのか、
ゴブリン達の身なりを見て、あるゴブリンのリストバンドに指を指す。
そのゴブリンが少し考え縦に首を降ったので交渉成立。
肉をスライス1枚分調理した。
調理した肉とリストバンドを交換。
肉を手にしたゴブリンは目を輝かせていた。
これを見て周りのゴブリンも理解したらしい。
体中をバンバン叩いて自分の持ち物を確認する者。
頭を抱えてアタフタする者。
自分のバッグの中身を出し、アピールしはじめる者。
実に賑やかで一気に楽しい雰囲気になった。
最初だし、「これからよろしく」という挨拶の意味あいもある。
なので高価そうな物は避けて交換し、9人全員に改めて肉を振る舞った。
ゴブリン達は満足したのか、
釜戸の周りで仰向けになって寝そべり、腹をポンポン叩いている。
ゴブリン達が一段落し、それを見ていたオーク達が笑顔でこちらへくる。
彼らは二人づつ交代でこちらに来た。
ダンジョン前を無人にしないようにしているのだろう。
彼らともそつなく交換をして肉を振る舞った。
最後の他よりも腹だけ大柄なオークは
大きく頑丈そうな袋を取り出して交換を要求した。
これは願ったりと思ったら、指を二本立てる。
、、、上手いな、と思い首を縦に振る。
他よりも厚目に切ったスライスを二枚じっくり焼いて交換した。
そのデブオークがダンジョン入口前に戻ると、
笑顔で周りから軽く小突かれていた。
とうの本人は超笑顔で肉にかぶり付いていた。
コボルトも3匹ほど戻った来ていたらしく、
こちらにゆっくり近づき、
内容は理解していたのか、交換を要求してきた。
こちらも大した物は無いが、快く交換。
ふと、塩を指で摘まんで肉の上で止めて首をかしげると、
コボルトは首を横に降った。
やはり、犬なのか??薄味好きらしい。
肉をレア目にサッと焼いてあげたらかなり喜んだのか、尻尾を大きく振って食べていた。
今後の付き合いのためにも、この辺りの好みは覚えておこう。
皆が満腹になったのか、ゴブリンはそこら辺で雑魚寝。
オークたちもダンジョン入口前で眠り始めた。
無用心だなと思ったら、コボルト三匹は広場の三方に別れて、
周囲を警戒しているようだ。
ここには、ここのルールが有るのだろう。
コボルト達を見て安心し、
オークから貰った袋に交換した品を入れて、
自分も残りの肉を平らげる。
やはり、生よりも調理した方が断然上手いな。
本当に今日は充実した1日だったと、
俺は良い気分で家路についた。
ある異質な密林のコーレムが、亜人達と初めての交流を楽しんでいる頃、
とある魔導国の冒険者ギルドのクエストボードに1枚の羊皮紙が張り出させる。
ふつう、冒険者ギルドでのクエスト張り出しは早朝だ。
つまりこの羊皮紙には、緊急性が高い、または少しでも多くの者の目に止まるようにと言う
意図が込められていることになり。
それを裏付けるように他のクエストの羊皮紙よりも大きく、
クエストボードの中央に堂々貼られていた。
その内容を読む者達の反応は様々だ。
舌打ちし、ギルドを出ていく者。
浮き足立ち、仲間に知らせに行く者。
早々に興味を無くし、飲み直す者。
その場にて深く考え込む者。
まさに三者三様である。
その内容は。
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調査兼討伐依頼に同行よる人員の募集
調査地域:海上、ただしそれ以降の情報は極秘(依頼受注者にのみ開示、湾出港時に開示)
調査対象:飛翔竜(ランクB~B-)の生存確認また周囲の安全確認
調査期間:明日正午から期間は6日程度
討伐対象:飛翔竜(ランクB~B-)
ただし、かなりの手傷をおっておる模様(情報提供:軍国ダリ魔導国ズゥーハ駐留大使より)
報酬:調査成功時、小銀貨2枚
また、調査中に討伐、回収できたモンスターの部位を平等に人数分け。
追記:上記調査前の調査にて、上記の飛翔竜の番のうち一体を無力化、
海に落下したまでを確認(未回収)。
生き残った番のもう一匹も討伐できた場合は更に報償金追加あり、
追加報償金の金貨400枚を平等に人数割とする。
上記クエストメイン契約者:グラド(グラド海勇団(ランクD)代表)
軍国ダリ魔導国ズゥーハ駐留大使印
魔導国ズゥーハ通商大臣代理印
魔導国ズゥーハ冒険者ギルド代表印
上記クエストの同行者を募集
募集条件:1.冒険者ギルドに所属し登録年数1年以上かつ重罪歴の無い者
2.弓矢や魔法による遠距離攻撃の可能な者の、または探知魔法の使える者
3.結界魔法、障壁魔法の使える者
4.上記募集条件に合致し明日の9:00からの試験に参加しその合格者
募集人数は40~80名、ただし、それ以上の参加者がでた場合は上記試験の上位80名とする。
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