ほんのおねえさん~♥ 18
「ありがとう、谷子ちゃん。」
図書館のおばちゃんにお礼を言われた。
谷子は少し照れ臭かった。
「私こそ、いい経験ができました。
おばちゃん、ありがとう。」
いつも来ていた図書館で、
今日が1番の思い出になった。
「前髪はあげた方がいいよ、
かわいいから、谷子ちゃん。」
図書館のおばちゃんは、
谷子が子供たちに絵本を、
読み聞かせしている姿を、
こっそり見に来ていたのだった。
おばちゃんは知っている。
子供の頃から、
可愛かった谷子の素顔を。
いつも笑顔で明るく元気に前向きに
笑っていた子供の頃の谷子を。
それが小学校の高学年くらいから、
少しづつ今の谷子に近づいてきた。
読み聞かせも終わり、
今の谷子は
「前髪長すぎ」「メガネ」「ソバカス」
の子供が泣き出す、
「毛むくじゃらの新人類」
であった。
「いつでもおいで、
ここは谷子ちゃんの、
大好きな図書館なんだから。」
本当は何があったのか、
どうして毛むくじゃらになったのか、
聞きたいところだったけど、
図書館のおばちゃんは何も聞かなかった。
「おばちゃん、ありがとう。」
図書館のおばちゃんには、
長すぎる前髪の中で、
かわいい谷子が笑っているのが、
見えているようだった。
おばちゃんは、
ずっと谷子が大好きだった
谷子もこんな自分に、
いつも優しくしてくれる
おばちゃんが大好きだった。
「おばちゃん、私、
アルバイトを始めたの、
自分の部屋もできたの、
もうすぐ高校生にもなるし、
もう少し、
もう少し、
自分に自信が持てたら、
素顔で渋谷を歩くんだ。」
谷子は泣きながら、
自分の心境を語る。
「よしよし。」
おばちゃんは谷子を抱きしめる。
頭をなでてあげる。
谷子は図書館からでてきた。
「ニヤ。」
谷子はなんだか嬉しくて笑う。
それでも人はすぐには変われない。
人の目を気にする谷子は、
電信柱から電信柱へと、
忍者走りで隠れながら帰って行くのであった。
「私のおかげね~♪」
怪獣ちゃんこと、
谷子は無事に子供たちに絵本を読み終えた。
谷子は帰る前に、
図書館のおばちゃんに挨拶している。
「前髪はあげた方がいいよ、
かわいいから、谷子ちゃん。」
おばちゃんは知っている。
子供の頃から付き合いだから、
毛むくじゃらの怪獣ちゃんになる前の、
かわいい谷子の素顔を。
「なに!?
私以外に怪獣ちゃんの、
かわいい素顔を知っている者がいるなんて、
許せない!」
読み聞かせも終わり、
今の谷子は
「前髪長すぎ」「メガネ」「ソバカス」
の子供が泣き出す、
「毛むくじゃらの新人類」
であった。
「いつでもおいで、
ここは谷子ちゃんの、
大好きな図書館なんだから。」
「おばちゃん、ありがとう。」
エロメスは、
かわいい怪獣ちゃんとおばちゃんが、
楽しく会話しているのが面白くなかった。
嫉妬の炎が燃えている。
エロメスは呪文を唱え始めた。
「私のかわいい怪獣ちゃんに近づく、
図書館のおばちゃんを、
次元の彼方へ飛ばしてやる。
エロ・エロ・・・!?。」
呪文を唱えるのをやめた。
「あれ!?
水が流れてくる!」
谷子の目から、
涙が零れてくる。
「キャアアア!」
エロメスは、
谷子の目玉の中で、
洗濯機がグルグル回るように、
洗浄されていく。
谷子が泣きながら、
自分の心境を、
勇気を出して語り始めた。
「おばちゃん、私、
アルバイトを始めたの、
自分の部屋もできたの、
もうすぐ高校生にもなるし、
もう少し、
もう少し、
自分に自信が持てたら、
素顔で渋谷を歩くんだ。」
エロメスは話の途中から、
涙が止まらなかった。
「うえ~ん!うえ~ん!
怪獣ちゃん、なんていい子なの!」
エロメスの涙は、
谷子の涙として流れた。
「よしよし。」
おばちゃんは谷子を抱きしめる。
頭をなでてあげる。
「図書館のおばちゃん、
かわいい怪獣ちゃんに免じて、
許してあげるわ。」
谷子が図書館のおばちゃんを信頼しているのが、
エロメスにも伝わってきた。
谷子の純粋な涙は、
エロメス様の邪悪な心も洗い流した。
谷子は図書館から出てきた。
「ここからは、
かわいい怪獣ちゃんは私のモノ~♪」
エロメスは幸せだった。
つづく。




