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二歩目
僕は、彼女を学校の屋上に呼んだ。屋上について三分。やっと彼女が現れた。
この三分は、僕の今までの人生の中で、一番長い時の流れだった。
(葵、なに?)
桜にそう言われた瞬間から、不安と緊張が大きな波となって僕の心に押し寄せて来た。
「えっと…」(桜、僕と付き合って下さい…)
僕の手話は上達していたはずなのに、恥ずかしいくらいたどたどしかった。けれども彼女は、
(うん!いいよ。ありがとう)そう言って笑った。
その笑顔は、この屋上に降り注ぐ夏の太陽みたいにまぶしくて、輝いていた。




