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葵side
-葵side-
「桜、何なんなんだよ」僕は、避けられているはずの桜のことばかり考えていた。
しかし、僕らには時間がない。僕はあと半年、高校を卒業したら、花梨を連れて、両親の住んでいるイギリスに行って、向こうの大学に通うことになっている。
その事は、もちろん桜は伝えられてない。
伝える気も、『ある』とはいえない。
「葵~。もう少しでお母さんたちに会えるんだよね?」っと花梨が僕に聞いて来た。
「うん。あと半年な。」
「そうだよね♪」そう言っている花梨の顔は、とても嬉しそうだ。
桜のことはあるけど、もちろん僕も両親と会えることは嬉しい。僕が高校に入ってからは、まだ一度も会っていない。
「そういや、お兄ちゃんは、大学卒業したら日本に帰るけど、花梨ちゃんはどうする?」
「うーん。お母さんたちともいたいけど、やっぱり葵と離れたくない!」
こんなことを言ってくれる妹は、やっぱり愛おしい。
桜に伝えられないまま、高校卒業まで残り1ヶ月となった。




