表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ビターチョコレート

作者: 大島なるみ


 それは、いつからだっただろう?

 思えば私は、このほろ苦甘い感覚に、いつの間にか魅せられていたんだ。




━ビターチョコレート━




 それを口にしたその瞬間に、

「チョコレートは甘い食物だ!」

などという、偏見まがいな私の見解は見事に崩れ去った。

 それ、とはまさにビターチョコレートだ。

 チョコレート特有の甘さ、それは他のものとさほど何ら変わりはない。

 けれど、1つだけ異なる点がある。

 それが、この甘さに包まれたほろ苦さ。

 甘い食べ物でありながら、まるで正反対のほろ苦さを感じるのだ。

(美味しい…)

 私はその瞬間から、このビターチョコレートの虜になった。


 そして……。



「もうそろそろ帰らないと……」

 隣で煙草の火をくゆらせていた彼が、スッと立ち上がった。

 私の部屋に来る彼は、決まってこの時間に、この行動を繰り返している。

「そう……なら、仕方ないわね」

 私がそう言うと、彼は去りぎわに軽く1つキスをくれた。

 そして、

「また来るよ」と言葉を残しながら去っていく。


 必要とされているのは確かなのに。

 大事に思う気持ちは同じなのに。

 何かが違う。



 それはまるで、それまでの見解を一気に覆されたデジャヴ。



 私はそっと触れた唇を指でなぞる。

 何故かそこには、それに似た甘いほろ苦さが残っている。

 ……そんな感じがした。




End.



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 上手い。ビターチョコが出てくるとは思わなかった。完璧ショートショート。発想は詩的だと思う。 [一言] このショートショート。20代ぐらいじゃないと書けないとみましたが・・・
[一言] 恋をしていた時を思い出しました★
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ