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おかえり

「…その…、」


すー、はー、と高見くんは一呼吸置いた。好きな子言うのってそんなに緊張するのかな。佐山はしれっと言ったぞ。無理して言わなくてもいいよとでも言うべきか。


「高見く」

「俺、神崎が好きだ。」





「…え、」


な、んだって?高見くん、今私が好きって言った?ん?いやおかしいって。こんな完璧男の高見くんが私とか。この前はまあ少し期待しちゃいましたけど?でも、いざとなると、


「高見くん、私、」


口を手で塞がれた。どうした高見くん。鼻まで若干押さえてて苦しいよ高見くん。


「ご、めん。その、わかってる、から。」


私の口から手を離してから、勉強、続ける?と苦笑ぎみに高見くんは言ったけど、それは、さすがに気まずい。結局夕食を食べて帰ることになったわけだが、私の分まで払ってくれて、家まで送ると言ってくれた。どうすればいいんだ。好きって言ってもらえるのは、素直に嬉しいけど。こんなに気まずいのは、うん、どうしよう。さすがに、送ってもらうのは…。


「今日だけ、でいいから。俺の自己満足に付き合ってくれませんか。」


頼むよ、と言った高見くんの声は、切願そのものであった。私は。同情しか、できない私は。こうしてあげるしか、できない。


「今日だけ、ね」


2人で歩く帰り道は、じめじめと、重く、体にまとわりつく空気と、昼間に比べて少し静かになったセミの鳴き声、まだ頂点まで登ろうとしない月に、時折吹く生ぬるい風があった。


「ごめん。」


高見くんが一言言った。高見くんは、今日謝ってばかりに思う。と言って、なんと言葉をかけていいか、分からなかった。


「全部、俺の押し付けって、分かってるんだ。神崎を、困らせて、罪悪感感じさせて。でも、言いたかった。なぜか分かんないけど、早く言わなきゃって。今日だけでも、いい所見せたかった。…好きって言っといて、俺何したいんだろうね。」


はは、と乾いた笑いを高見くんは零した。高見くんが、何を考えているのか、どんな気持ちなのか、わかってあげられたら、いいのになぁ。と、ただ漠然と思った。そのあとも、家に着くまで、私は高見くんの話に相槌を打つだけだった。こんな、難しい気持ちの帰りは、今まであったかなぁ。


明日からのテスト、ちゃんと解けるかなぁ。


なんて、心配無用だった。結局高見くんは、翌日に私にこう言った。「やっぱり神崎が好きだ、けど、付き合いたいとかじゃなくて。その、うん。夏休みとかあるし、友達としてこれからも仲良くしてくれると嬉しい。」と。解決したかは微妙だけど、高見くん的にも私的にもこじれず、早めに落ち着いたわけで。

それからの地獄の一週間は、もう、思い出したくないよね。補習とか、ね。もう。今は考えない!!!だって!!テストはもう終わり、今日は終業式だ!明日から!夏休みいいいいいいいぇい!!!!!


体育館に集められ、校長の長い話が終わり、校歌も歌ってはいさようならだ。いやぁ、平日の日中に堂々と外を歩けるなんてなんて素敵なのかしら。こんなに学校からの帰り道の足取りが軽いなんて!!浮き足立って転びそう!あは!しかも家に帰ってもお母さんはパートだしお父さんは仕事、弟は合宿で誰もいない!今日の家は私の城じゃガハハ!


ドアを開けて声高らかに言う

「たっだいまー!!」


「あ、おかえり」

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