ラッキーデー
翌朝。部屋が太陽で明るくなった。
お母さんに布団はぐられた。
冬じゃないからそんなに効かない。
目覚ましのスヌーズがまた鳴った。
消す。
時間は8時。遅刻しそう。
急ぐ。制服着る。朝ごはん食べる。
よく見たら7時。驚かせやがって。…ほっとした。
いつも通りの朝。お父さんはもう家でてて、お母さんはお弁当つくってて、弟は朝練に行かなきゃだから白飯をかきこむ。私はゆっくり朝のニュース番組を見つつお味噌汁をすする。
それから私はお母さんからお弁当を受け取り、いってきますを言って玄関をでる。登校途中でクラスの子に会っておはようって言う。
教室について、いつもの席につく。そこまでは、全然いつも通りだったのに。朝の占いは一位で、むしろツイてる日なのに。ラッキーデー、だったはずなのに。
見慣れない、白がひとつ。
「おいお前ら席つけ。大事な話がある。」
まだ、朝のHR始まる時間じゃないよ先生。
ほら、いつもだったらみんなおはよう、やっぱ校長カツラだったわ、とかふざけて言って入ってくるじゃん。なんで
「その…佐山が…昨日亡くなった。交通事故で、飲酒運転の車に…。」
「…はっ、先生、いくらなんでも冗談きついって…」
「冗談じゃ、ない。」
冗談なら良かったよ、なんて弱々しく先生は笑った。先生、笑えてないよ。
佐山が、昨日の夜亡くなった。
その事実をクラスのみんなは、徐々に理解してきたようで、みんな俯いたり、泣いたりしていた。
私の隣の席には、泣いている姿はなく、花瓶がぽつんと置いてあるだけだった。白いガーベラが一輪。
昨日、ラインしてたじゃん。
あんぱんは明日返します。って言ったじゃん。佐山は嘘つかないよね。嫌味や冗談は言うけど。つか普通に生意気だけど。いいことも嫌なことも素直に言うし、約束もなんだかんだで守るもんね。
私は受け入れられなかった。
そうだ、佐山の悪い冗談だ。これは。先生も一緒に騙されてるんだ、佐山に。私は騙されないよ。うん。佐山が来たら言ってやろう、もっと面白い冗談考えらんないの?って。
それにしても、青い空と白い一輪のガーベラは絵になるなぁ。ねえ佐山、もう出てきていいよ。早く、私の隣の席に座って。
空が赤になっても、隣は空いたままだった。
「神崎、」
もう教室には私しか残っていなかったから、突然響いた声にびっくりしてしまった。私のことを呼んだ彼が、ドアを開けたことすら気づかなかった。




